メキシコの日系部品メーカー:事業計画変更は少なく、新規進出や生産能力増強が続く

ブラジル:国内市場縮小から新規事業は減少、南米事業拡大に向けた大型投資も

2017/06/15

要約

 メキシコの2016年の自動車生産台数(除く大型バス・トラック)は346.6万台(前年比2.0%増)、輸出は276.8万台(同0.3%増)、新車販売台数は160.4万台(同18.6%増)と過去最高を更新。2017年1~5月は生産台数が155.0万台(前年同期比14.4%増)、輸出台数が123.7万台(同14.5%増)、新車販売台数が61.6万台(同4.8%増)と、輸出主導が続いている。

 メキシコでの生産拡大が続く中、トランプ米大統領がNAFTAからの離脱ないし変更を表明。同大統領からの要請によりFordがメキシコでの乗用車新工場の建設中止を発表するなど、先行きに不透明感が出ている。しかし、その他の日米欧自動車メーカー各社については、メキシコでの事業計画に変更がないことなどが報じられている。

  • トヨタは乗用車工場の2019年稼働計画を変更せず。
  • ホンダ、VW、ルノー・日産アライアンスなどは現地工場への投資継続を表明。
  • Audiは2017年に新工場(Puebla州)が生産開始、投資継続も表明。
  • BMWは2019年に稼働する工場(San Luis Potosi州)の現地での準備を開始。
  • GMは工場(Guanajuato州)の拡張投資を計画。
  • FCAは輸出用Jeepを増産中。
  • Fordは2017年にトランスミッション工場、エンジン工場を稼働。

 こうした中、日系部品メーカーにも不安が広がり、先行きを慎重に見定める姿勢を強めている。ただし、現状ではメキシコでの事業計画変更の動きは少なく、多くの日系部品メーカーでは、受注増あるいは事業拡大のための生産能力増強、新規進出、生産品目追加の投資などが行われている。



 ブラジルは、2016年のトラック・バスを含む自動車生産台数(CKDを除く)が215.7万台(前年比11.2%減)、新車登録台数が205.0万台(同20.2%減)と大幅減少が続いている。一方、輸出だけは52.0万台(同24.7%増)と増加。2017年1~5月は、自動車生産台数(CKDを除く)が103.7万台(前年同期比23.4%増)、新車登録台数が82.4万台(同1.6%増)と増加に転じ、輸出台数は30.8万台(同61.8%増)と増加が続いている。

 国内市場が縮小傾向にあり、日系部品メーカーによる新たな事業展開は、なお少ない。しかしながら、小糸製作所の新工場設立(投資額:約80億円)、住友ゴムの生産設備新設(同約56億円)など、南米事業拡大に向けた大規模投資が行われている。



 本稿では、メキシコ、ブラジルにおける日系部品メーカーの最近の動向を報告する(収録対象は、2017年5月までの約1年間)。

Thailand Map
(地図をクリックすると拠点マップが開きます)
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メキシコでの新規工場設立 ( )は生産品目

新規工場進出 イリソ電子(コネクター)、AGC旭硝子(ガラス)、FTS(樹脂製燃料タンク)、NTN(ドライブシャフト)、神戸製鋼(冷間圧造用鋼線)、JFE(亜鉛鍍金鋼板)、清水工業(エンジン部品など)、住友理工(防振ゴム)、大同DMS(金型部材)、中央精機(アルミホイール)、トピー工業(ファスナー製品)、日本精工(自動変速機向け製品)、パイオニア(音響製品)、マブチモーター(電装用モーター)、美濃工業(アルミダイカスト部品)、三菱製鋼(サスペンション用ばね)、森六テクノロジー(内装部品)
新工場建設中止 日清紡ホールディングス(新工場建設を白紙に:ブレーキ用摩擦材)



メキシコでの生産能力拡充 ( )は生産品目など、*は新品目

米国からメキシコに生産集約 曙ブレーキ(ドラムブレーキ)
メキシコから米国への生産移転も検討 日本電産(電動パワーステアリング(EPS)用モーター)
生産能力増強を保留 小糸製作所(工場拡張を保留:ランプ)
設備増強 サンコール(*エンジンバルブ用弁バネ線材)、清水工業(エンジン部品/電装部品など)、セーレン(シート用合成皮革)、大同メタル(エンジン用軸受)、椿本チエイン(*四輪駆動車のトランスファーケース用チェーン)、阪和興業(コイルセンター)、ヨロズ(プレス部品)日本電産(電動パワーステアリング(EPS)用モーター)、武蔵精密(*AT用プラネタリーギア)、モリテックスチール(*AT用クラッチドラム)、リケン(*エンジン用ピストンリンング)
工場拡張 北川鉄工所(新棟:トランスミッション部品)、豊田合成(設備増強+建屋拡張:ウェザーストリップ)、西川ゴム(3棟目:シーリング材)、日本プラスト(建屋増設:樹脂部品)
新拠点・新工場設立 芦森工業(第2工場:安全部品)、河西工業(第3工場:成形天井など)、住友理工(第2工場:防振ゴム)、天昇電気(第2工場:プラスチック成形部品)、東京濾器(自前の新工場:触媒)、東レ(新拠点:*エアバッグ基布)、日本バイリーン(新拠点:*天井表皮材)、古河電工(第2工場:ワイヤーハーネス)
研究開発・販売強化 タチエス(衝突実験装置導入:シート)、バンドー化学(販売網構築:ベルト関連製品)



ブラジルでの事業展開 ( )は生産品目、*は新品目

工場新設・稼働 小糸製作所(新工場設立:ヘッドランプ、リアランプ)、豊田合成(摩擦材工場稼働)、日清紡ホールディングス(新工場を建設し既存工場から移転:摩擦材)
生産能力増強 住友ゴム(*トラック・バス用タイヤの生産設備を新設)、ハイレックス(ウインドレギュレータ―)

 

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<日系部品メーカーの海外動向>

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