北米の日系部品メーカー:受注増・燃費関連需要に対応し、生産能力拡充、新会社設立

神戸製鋼、ジェイテクト、ゼンリン、東レ、日清紡ブレーキ、帝人、ルネサスエレクトロニクスなど

2016/11/28

要約

米国の自動車工場マップ(クリックすると拠点マップが開きます)


 本レポートは、米国・カナダにおける日系部品メーカーの動向レポート。米国・カナダにおける生産能力拡充、新会社設立、事業体制強化などの動向についてまとめた(収録対象は、2016年11月上旬までの約8カ月間)。

 米国の自動車販売(乗用車、小型トラック)は、2016年1~10月には1448万台で前年同期比0.2%減と、減少に転じているが需要は高水準を保っている。車種別販売では、乗用車が前年同期比8.9%減だったが、小型トラックが同0.8%増と乗用車からピックアップとSUVへの需要シフトが続いている。

 米国での自動車生産(乗用車、小型トラック)は増加を続け、2016年1-9月は前年比2.1%増の912万台となった。

 一方、日本メーカーの米国生産は、2016年1-9月累計は前年同期比3.7%増の304万台。2016年通年も日本メーカー各社は、高水準の生産を維持するとみられている。各メーカーは、ピックアップトラックとSUVの投入を増加させている。

 このような動きに対応して、日系部品メーカーも既存工場の生産ライン・設備の増設により、生産能力増強を進めている。新会社・新工場設立や事業体制強化などでは、環境・燃費規制強化に伴い新たな需要増が見込まれる分野への投資も見られる。

 なお、2017年1月20日に就任予定のトランプ次期アメリカ大統領は、アメリカ/カナダ/メキシコ間の自由貿易協定NAFTAの見直しを唱え、地球温暖化に懐疑的で燃費規制の見直しの可能性も噂されている。これらの政策動向によっては、メキシコで生産しアメリカで販売するという自動車メーカー/部品メーカーの調達戦略、燃費対策/軽量化対策などの商品/技術戦略に大きな影響を与え、戦略の見直しを迫られることになる。

投資形態 メーカー 生産品目(*新品目。実施状況など)

生産能力増強
(設備・生産ライン増設など)

曙ブレーキ ディスクブレーキ、摩擦材、アルミ製品(ドラムブレーキをメキシコ工場に移管、米国の4工場の生産品目見直し)
ジェイテクト 新型EPS*(生産ライン新設)
住友ゴム SUV用などのタイヤ(設備増強)
椿本チエイン エンジン用タイミングチェーン(設備増強)
TPR シリンダライナ(設備増強)
東レ 内装材のポリオレフィン発泡体(設備増強)
豊田鉄工 ボディ部品(設備増強)
日清紡ブレーキ 銅フリーのブレーキパッド(生産ライン増設)
フタバ産業 マフラー*(既存工場で新たに生産)
三井金属 四輪車用触媒(生産能力増強)
三菱重工 ターボチャージャー(増産体制整備)
リョービ ダイカスト製品(加工内製率を高める設備導入)
新会社設立、新工場の追加 アイシン化工 AT用湿式摩擦材*(新工場)
神戸製鋼 バンパー材などのアルミ製品*(新会社)
戸田工業 リチウムイオン電池用正極材*(独BASと合弁会社設立)
パナソニック 車載用リチウムイオン電池*(生産開始)
UACJ パネル用アルミニウム材*(合弁工場稼働)
ヨロズ サスペンション部品(第2拠点工場が前倒し生産開始へ)

事業体制強化
(M&A、資本提携、営業拠点開設など)

芦森工業 シートベルト、エアバッグなど(米国に営業拠点開設)
住友電工 焼結部品(米大手部品メーカーを完全子会社化)
ゼンリン 米国で車載ソフトウェア開発*(米開発会社を子会社化)
タカタ エアバッグのリコール対策費用確保(米子会社売却)
帝人 ガラス繊維強化複合材料(米CSP社買収予定)
長瀬産業 ウレタン製品(米国の日系メーカーと資本提携)
パイオラックス 物流効率化(自社工場内に自動倉庫新設)
日立金属 鋳鉄鋳物(現地子会社2社を合併)
三菱ケミカルホールディングス 炭素繊維関連事業(三菱レイヨンと米CSP社の合弁計画を白紙に)
ルネサスエレクトロニクス 車載用半導体事業(米Intersil社買収)

 R&D体制強化では、アイシン化工がAT向け部品の開発拠点を新設。横浜ゴムが米国4生産拠点の開発部門を統合するタイヤ研究開発センターを設立。トヨタ紡織がシリコンバレーに自動運転などの先進技術の情報調査・分析オフィスを新設。河西工業がエンジニアを倍増させる計画。

 カナダでは、三井ハイテックがHV、EV用の駆動モーターコアの工場を稼働させる。

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