北米の日系部品メーカー:生産能力拡充や新会社設立

電動化・燃費規制強化への対応、自動運転関連など西海岸での事業強化も

2017/08/24

要約

米国の自動車工場マップ(クリックすると拠点マップが開きます)

 本レポートは、米国・カナダにおける日系部品メーカーの動向レポート。生産能力拡充、新会社設立、事業体制強化などの動向についてまとめた(収録対象は、2017年7月までの約9カ月間)。

 米国の自動車販売(乗用車、小型トラック)は、2016年が1755万台で前年比0.4%増。車種別販売では、乗用車が前年比8.1%減だったが、小型トラックは同7.2%増。2017年1~7月は987万台で前年同期比2.9%減。このうち、乗用車が375万台で同11.7%減、小型トラックは612万台で同3.5%増と、乗用車からピックアップトラックやSUVなどへの需要シフトが続いている。

 米国での自動車生産(乗用車、小型トラック)は、2016年が1191万台で前年比0.1%減。車種別では、乗用車が同15.0%減、小型トラックは同4.7%増。2017年1~7月は644万台で前年同期比6.7%減。乗用車が同18.1%減、小型トラックが同0.1%減と共に減少している。

 しかし、トランプ大統領の要請により、中期的には米国への生産回帰の動きもみられる。GMとFCAが国内工場にそれぞれ10億ドル、Fordは4年間で16億ドル規模の投資を発表。トヨタとマツダは折半出資の合弁会社を設立し、2021年をめどに年産能力30万台の工場を稼働させる計画。VWは数10億ドル、Daimlerは13億ドルの米国工場への投資を表明。この他、日米欧メーカー各社は、米国での電動車生産や自動運転、AIなど次世代技術開発への取り組みを進めている。

 このような動きに対応して、日系部品メーカーも既存工場の生産ライン・設備の増設や新会社・新工場設立により、既存・新規顧客の様々なニーズに対応している。その中には、環境・燃費規制強化に伴う新たな需要への取り組みも数多くみられる。事業体制の強化では、先進技術を取り込むための買収、資本・技術提携、協業などが目立った。

投資形態 メーカー 生産品目(*新品目。実施状況など)
生産能力増強
(設備・生産ライン増設など)
アドヴィックス 電動パーキングブレーキ*(新棟建設)
神戸製鋼、三井物産、豊田通商 アルミの溶解鋳造、鍛造プレス*(建屋増設、設備増強)
ジェイテクト 新開発のEPS*(生産ライン増強)
住友ゴム 乗用車用高付加価値タイヤ(設備増強)
大同工業 四輪車用チェーン(部品加工、熱処理ライン設置)
大豊工業 バキュームポンプ*、すべり軸受(設備増強)
タチエス EV用シートフレーム*(TESLA社に供給)
椿本チエイン エンジン用タイミングチェーン(設備増強)
テイ・エステック シート(建屋増設)
東洋ゴム 乗用車用タイヤ(設備増強)
豊田合成 樹脂フューエルフィラーパイプ(設備増強)
豊田鉄工 プレス部品(北米の4工場で設備増強)
日清紡ブレーキ 銅フリーのブレーキ材(生産ライン増設)
日本板硝子 ヘッドアップディスプレイ向けフロントガラス*(新ライン設置)
日本バイリーン 樹脂製フロアマット(設備増強)
日本ピストンリング バルブシート(2工場で設備増強/省力化新ライン設置)
パイオラックス ホースクランプや金属ファスナー(新建屋設置、熱処理炉増設)
ハイレックス ドアモジュール(2工場で新ライン設置)
ファルテック ミリ波レーダーのカバー*(生産ライン新設)
深井製作所、豊田鉄工 車体プレス部品(工場拡張)
ブリヂストン 乗用車用タイヤのゴム練り工程(新棟建設)
三井化学、プライムポリマー PPコンパウンド(最新設備に入れ替え)
山本製作所 厚物クラッチ板(設備増強)
新会社設立、新工場の追加 NTN シャフトの旋削および熱処理加工*(第2工場建設)
シャープ 液晶パネル*(新会社設立計画)
東プレ プレス部品(新工場建設、別拠点で建屋増設)
東レ 炭素繊維(新工場稼働を1年延期)
パナソニック 車載用リチウムイオン電池セル*(生産開始)
日立オートモティブ電動機 電動車両用モーター(新拠点設立計画)
ファインシンター ATM/エンジン部品など(第2工場稼働)
ヨロズ サスペンション部品(第2拠点工場を1年以上前倒し稼働)
事業体制強化
(M&A、資本・技術提携、拠点開設など)
インクリメントP 日本、アセアン地域の地図データ(戦略拠点設立)
岡谷鋼機 トラックの隊列自動走行ソリューション(米開発会社に出資)
小糸製作所 センサー内蔵ヘッドライト*(米開発会社と協業)
中央発條 精密ばね、コントロールケーブル(米の2子会社を合併)
ツバキ・ナカシマ 精密ベアリング用部品(米社から同事業を買収)
帝人 ガラス繊維強化複合材料(米CSP社を買収)
TDK 慣性センサー(米InvenSense 社を買収)
ニチコン EV/PHV向けワイヤレス充電システム(米Qualcomm社とライセンス契約)
日本電子硝子 ガラス繊維事業(米PPG Industries社の事業買収)
三菱レイヨン 炭素繊維事業(米2社を買収)
リケン スチール製ピストンリング(米合弁会社解散を決定、自社独自で事業)



 R&D体制強化では、エイチワンが既存のR&Dセンターで軽量化と安全性に資する技術などの基礎技術開発に新たに取り組む計画。住友ゴムは、既存工場の敷地内に研究開発拠点「米国テクニカルセンター」を開設した。

 カナダでは、阪和興業が高純度炭酸リチウムの開発・製造プロジェクトを実施中のカナダ企業に一部出資し、リチウムイオン電池向けの販売を担う計画。

 

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<日系部品メーカーの海外動向>