米国・カナダの日系サプライヤー:CASE関連事業を強化、米国企業と連携

SUV・ピックアップトラックの需要増に対応、米中貿易摩擦のリスク回避も

2019/09/19

要約

米国・カナダの自動車工場マップ(クリックすると拠点マップが開きます)

 米国の自動車販売(乗用車、小型トラック)は2018年に1,727万台となり、前年比0.3%増とやや回復。車種別では、乗用車が前年比13.1%減だったが、小型トラックは同8.0%増。2019年1~8月は前年同期比0.1%増の1,148万台で、乗用車が345万台(同8.0%減)、小型トラックは804万台(同4.0%増)となった。

 SUV・クロスオーバー・ピックアップトラックの需要増加に対応するため、OEM・部品各社は米国市場戦略の見直しを迫られている。FordとGMは国内向けラインナップからセダンの大半を外すと発表し、小型トラックのモデル強化を進めている。
 日系部品メーカーでは、アイシンAW(SUV向けATやハイブリッドトランスミッションの新工場建設)、エクセディ(ピックアップトラック用トルクコンバーター専用ライン新設)、ブリヂストン(トラック・バス用ラジアルタイヤの生産能力増強)などの計画がある。

 

 また、CASE(コネクテッド・自動運転・電動化・ライドシェアなど)関連技術に対応するため、米国企業との協業や、事業買収などの動きも見られる。
 自動運転やコネクテッド関連では、トヨタがUberに出資し、同社とモビリティサービスの自動運転技術開発で提携することで合意。また、トヨタとNVIDIAは自動運転車のシミュレーションプラットフォームの採用で連携を進めている。
 日系部品メーカーでは、デンソー(半導体開発会社およびソフト開発会社に出資)、AGC(次世代高速通信向けCCL事業の買収)、富士通(Ford向けモビリティサービスで協業)、ルネサスエレクトロニクス(同業のIDTを買収)、ニコン(Velodyne LiDARと受託生産契約)などの動きがある。

 電動化関連では、GMとホンダが先進バッテリー技術の開発で合意。FordとVWはEVのプラットフォームと自動運転技術を共有することで合意した。GMは新型シボレーEVを生産するミシガン州オリオン工場に3億ドルを投資すると発表。Mercedes-Benzはアラバマ州で新バッテリー工場の建設に着手。BMWはサウスカロライナ州の工場で高電圧バッテリーの生産能力を倍増させた。
 日系部品メーカーの動きとしては、パナソニック(Tesla向け車載電池の研究開発機能を日本から移管)、東芝インフラシステムズ(リチウムイオン電池でJohnson Controlsと協業)、戸田工業(リチウムイオン電池正極材でBASFと合弁)のほか、旭化成(リチウムイオン二次電池用セパレーター)やアーレスティ(モーターハウジング、インバーターケースなど)の生産能力増強計画などが見られる。

 

 米中貿易摩擦や関税引き上げ、USMCA(新NAFTA)に対応する動きでは、パイオラックス(中国からの対米輸出品を米国に生産移管)、日東電工(自動車用テープの米国、メキシコ、ブラジルでの代替生産体制構築)、東レ(日本、米国でのポリオレフィン発泡体製品の生産能力増強)などがある。
 トヨタ・マツダ合弁工場(2021年稼働開始予定)に向けては、トヨタ紡織・デルタ工業・東洋シート(シート生産)、豊田鉄工・ワイテック・キーレックス(プレス部品)の合弁会社設立が発表されている。

 

 本レポートは、米国・カナダにおける日系自動車部品メーカーの生産能力拡充、新会社設立、事業体制強化などの動向についてまとめた。(収録対象は2019年6月までの約13カ月間)

 

米国における日系サプライヤーの動き

投資形態 メーカー 生産品目 *印は新品目投入
生産能力増強
(設備・生産ライン増設、
新工場・建屋建設など)
IHI ターボチャージャー(第2工場建設)
アイシンAW SUV向けAT、ハイブリッドトランスミッション(新工場建設)
旭化成 リチウムイオン二次電池用セパレーター(設備導入)
アーレスティ 電動車向けダイカスト部品*(新棟建設)
エクセディ ピックアップトラック用のトルクコンバーター(専用ライン新設)
神戸製鋼所 アルミニウム押出・加工品(建屋新設・設備増強)
信越化学工業 塩化ビニル樹脂(電解工程からの一貫工場新設)
ダイキョーニシカワ 大型樹脂部品*(隣接地に新工場建設)
中央発條 シャシーばね*(既存工場にライン新設)
帝人 熱可塑性炭素繊維複合材料(CFRTP)製品*(既存工場)
トーヨータイヤ タイヤ(新工場建屋建設)
東プレ ハイテン材、ホットスタンプ(米国3工場で建屋・設備増設)
東レ 内装材用の樹脂材料ポリオレフィン発泡体(生産設備増強)
日清紡ブレーキ 銅フリー摩擦材(工場新棟建設)
日東電工 ワイヤハーネス結束テープなど(設備追加:米・墨・伯の3カ国で代替生産)
日本ピストンリング ピストンリング(生産効率向上、新ライン導入)
ハイレックス 軽量化した新型ドアモジュール*(工場増築・新設備導入)
パイオラックス ホースクランプ、金属ファスナー*(新建屋購入、設備増設)
ファルテック ミリ波レーダーカバー(専用ラインを既存工場に新設)
フォスター電機 車載用スピーカー(既存物流センターに生産体制構築)
ブリヂストン トラック・バス用ラジアルタイヤ(工場拡張)
三井化学 ガラス長繊維強化ポリプロピレン*(生産ライン新設)
UACJ 車体向けアルミ材加工(生産体制構築し、再参入)
新生産会社設立
(含む合弁会社)
トヨタ紡織、デルタ工業、東洋シート トヨタ・マツダ合弁工場向けシート*(新合弁会社設立)
豊田鉄工、ワイテック、キーレックス トヨタ・マツダ合弁工場向けプレス部品、溶接部品*(新合弁会社設立)
長瀬産業 3Dプリンター向け素材*(米スタートアップと合弁会社設立)
日本製鉄 冷間圧造用鋼線(新生産拠点稼働)
事業体制強化
 (M&A、資本・技術提携、
合弁会社設立など)
旭化成 自動車関連事業(大手内装材メーカーの米Sage社買収)
AGC 5Gや自動運転関連(米2社の事業を買収)
nmsホールディングス 車載関連事業(ソニーの米国法人から事業を譲受)
河西工業 天井部品(北米工場の再編、事業収益改善)
積水化学工業 航空機、自動車向け炭素繊維(AIM Aerospace社を買収)
ダイナミックマップ基盤 高精度3次元地図ソリューション(自動運転用地図の米社買収)
テイ・エス テック 北米での物流効率化(共同集荷・配送の中継拠点新設)
デンソー 自動運転や先進運転支援システム(米半導体開発会社に追加出資)
デンソー、豊田通商、トヨタ コネクテッドカー・OTAシステムの開発加速(米ソフト開発会社に出資)
東海カーボン カーボンブラック(Sid Richardson Carbon社を買収完了)
東芝インフラシステムズ Johnson Controlsとリチウムイオン電池事業で協業
東陽テクニカ シャシーダイナモメーターシステムの米販売権をスウェーデン社から取得
戸田工業 リチウムイオン電池正極材拠点の運営を独BASFとの合弁会社に変更
名古屋精密金型 金型のメンテナンス拠点*(支店設置)
ニコン 自動運転向けLiDARセンサー(Velodyne Lidar社から受託生産)
日東精工 自動ネジ締め機などの機械(米子会社を移転拡充)
パナソニック 米国本社新設、車載電池の研究開発と生産技能の機能を日本から移設
富士通 Fordにモビリティサービス(コネクテッドカー関連の米社と協業)
ブリヂストン タイヤの卸売事業を統合(グッドイヤーと合弁会社設立)
武蔵精密工業 モビリティ向けソリューション開発(米ベンチャーに出資し協業)
ルネサスエレクトロニクス 自動運転技術を強化(同業の米社買収)
開発体制・営業強化 エフテック 北米・中国では両開発拠点の情報共有を強化
河西工業 米国の3ヵ所の設計開発拠点を統合
シーシーエス 画像処理検査ソリューションを提案するデトロイト実験室を開設
住友ゴム工業 米国でのタイヤ開発体制拡充、テストコースも高機能化
積水化学工業 シリコンバレーにリサーチ拠点を新設
デンソー コネクテッドカー、MaaS(シアトルに新サテライトR&D拠点開設)
トーヨータイヤ 米国工場内にR&Dセンターを新設
豊田合成 営業事務所をOhio州に設立
古河電気工業 シリコンバレーに研究拠点開設

 

関連レポート:
米国OEMの電動化戦略:電動車投入タイムライン(2019年9月)
メキシコ:米国の需要変化に対応し、小型車からSUV・ピックアップへ生産シフト(2019年4月)
OEM各社の米国事業動向(2018年12月)


<日系サプライヤーの海外事業動向>
  ASEAN (2019年8月)
  中国全般 (2019年6月)
  中国・華東地区 (2019年5月)
  中東欧 (2019年6月)
  西欧 (2019年5月)
  インド (2018年11月)
  メキシコ (2018年10月) 
  米国・カナダ (2018年9月)