インドの日系サプライヤー: 排ガス・燃費規制の強化に対応
OEMの生産増強や電動車の導入促進策などで供給拡大が続く
2018/11/06
要約
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インドの自動車工場マップ(クリックすると拠点マップが開きます) |
インド市場概況:生産・販売とも増加が続く
インドの2017年の自動車生産台数は478万台(前年比6.5%増)。新車販売台数は402万台(同9.5%増)と、ドイツを抜いて世界第4位の市場規模となった。2018年1~9月累計も、生産台数が403万台(前年同期比12.7%増)、新車販売台数が338万台(同12.4%増)と好調。
2017年は新物品・サービス税(GST)導入の影響などで一時期販売が荒い動きとなったが、2018年は安定を取り戻しており、インフレ率も足元で1~4%台と低水準のため、消費者の購買力が高まっていると見られている。
自動車メーカー各社が生産体制を強化、電動車開発計画
インド乗用車市場でシェア5割を占めるスズキは、2017年2月に稼働したGujarat州の新工場が同年10月から2直のフル稼働(年産能力25万台)となり、2019年1月に第2ライン(同25万台)が、将来的には第3ライン(同25万台)が稼働する計画。同社は2030年にインドで年販500万台の目標を掲げている。
この他、Volvo Carsが2017年10月にBangalore近郊の既存工場でSUVの生産を開始。起亜はインド初の工場(年産能力30万台)が2019年後半に稼働予定。PSAはCK Birlaグループと2020年までの合弁会社設立を発表し、インド市場に再参入する。
インド政府のEV導入促進政策との関連では、Mahindra & MahindraがEVの独自開発で先行し、2020年までに年産能力7万台を計画。Tata Motorsは、政府系企業から1万台のEVを受注。スズキとトヨタは2017年11月にインドでのEV・HV事業での提携を発表。現代、日産などもEVモデル投入を計画している。
日系サプライヤーの生産・販売・開発体制強化
自動車メーカー各社の増産計画や取引先拡大などに対応して、日系サプライヤーも生産能力拡充、新規進出、販売・技術開発拠点の設立などを進めている。また、インド政府の排ガス規制や燃費規制の強化に対応した関連製品の供給体制強化や、現地OEMとのEV開発での提携などもみられる。
以下は、インドにおける日系サプライヤーの最近の動向である。(収録対象は、2018年9月までの約1年3カ月間)
新規進出(生産品目)
新会社・工場設立 | 旭化成(鉛蓄電池用セパレーター)、アドバネクス(精密ばね)、オンキヨー(車載用スピーカー)、加賀電子(電子機器)、東京鋳造所(燃料噴射ポンプ)、東プレ(プレス部品)、東レ(高機能樹脂コンパウンド) |
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生産能力増強(生産品目、*は新品目を追加)
設備・建屋の増設 | 芦森工業(専用ライン設置:*シェード)、エムエス製作所(設備増設:ウェザーストリップ用ゴム)、大日精化工業(1ライン増設:プラスチック用着色剤)、デンソー(新建屋建設:インジェクタ、電子制御部品)、日本特殊陶業(建屋増設:スパークプラグ、*二輪車用の酸素センサー)、日本ピストンリング(生産ライン更新:バルブシート)、日本ポリプロ(生産ライン増設:ポリプロピレン)、横浜ゴム(新棟建設:乗用車用タイヤ) |
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第2工場以上を建設 | NOK(第2工場:オイルシール)、協和合金(第2工場:MT部品)、キリウ(第2工場:ブレーキ部品)、豊田合成(5つ目の工場:エアバッグ、ハンドルなど)、長瀬産業(新工場:ブロー成型品) |
新会社設立・新興国向け商品投入 | ASTI(2つ目の生産拠点:電装品)、フタバ産業(2つ目の生産拠点:排気管/エキゾーストマニホールドなど)、小糸製作所(生産体制構築計画:*低価格LEDヘッドランプ) |
事業強化(品目、*新事業など)
子会社化・合併 | 山陽特殊鋼(合弁会社を子会社化:特殊鋼製品)、ジェイテクト(2つの子会社を合併:ステアリング)、新日鉄住金(合弁会社を子会社化:鍛造クランクシャフト) |
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現地メーカーとの提携 | NTTデータ(インドの大手地図情報会社と提携:*デジタル3D地図整備)、ルネサスエレクトロニクス(マヒンドラ&マヒンドラと提携:*EVなどの開発) |
営業・技術開発拠点 | JSR(販売会社設立:エラストマー製品)、ダイセル(販売会社設立:エアバッグ用インフレーター)、豊田合成(技術・営業拠点設立:エアバッグなどセーフティシステム)、ニッキ(営業体制強化:CNG車関連機器)、パイオラックス(設計開発センター新設:ファスナー、クリップなど) |
プロジェクト受注 | NEC(Pune市の高度交通運用管理システム) |
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