中国の日系サプライヤー:新エネルギー車向けの部品・部材供給を拡充
中国全般、東北・華北・華中・華南・西南地区、台湾における動向
2019/06/04
- 要約
- 東北地区:新工場設立(日本電産)、新製品導入(アルプスアルパイン、パナソニック)、技術提携(NTN)
- 華北地区:新会社設立(UACJ)、設備増強(ジェイテクト、トヨタ紡織、共和レザー、ジーマックス)
- 華中地区:新会社設立(デンソー、東プレなど)、設備増強(ジーテクト、丸順など)、事業強化(豊田合成)
- 華南地区:新会社・新工場設立(アイシンAW、UACJなど)、設備増強(アルファ、出光興産、JSP、三井化学など)
- 西南地区:新工場設立(三菱ケミカル)、子会社売却(フタバ産業)
- 台湾:設備増強(JSP)、業務提携拡大(豊田通商、三井化学)、生産委託(ルネサスエレクトロニクス)、市場開拓(西村製作所)
- 中国全般:生産増強(エイチワン、小糸製作所、東プレ、日立AMSなど)、開発・販売体制強化(サンデンAS、大同メタル工業など)
要約
中国の自動車工場マップ(クリックすると拠点マップが開きます。) |
本レポートは、中国全般、東北・華北・華中・華南・西南地区、台湾における日系部品メーカーの動向である。(2018年2月から2019年4月までの約15ヵ月間を収録)
*中国・華東地区における日系部品メーカーの動向は既報レポートをご参照ください。
2018年の中国の自動車生産台数は2,781万台(前年比4.2%減)、販売台数(工場出荷台数)は2,808万台(同2.8%減)となり、市場成長の鈍化が見られた。主な要因としては米中貿易戦争の影響と2017年末の小型乗用車減税政策終了前の駆け込み需要の反動が挙げられる。車種別の販売台数では、SUVが999.5万台(前年比2.5%減)、セダン・ハッチバックは1,152.8万台(同2.7%減)とともに減少した。特に下半期の落ち込みが激しく、7月以降の全ての月で前年同月比を下回った。
一方で、EV、PHVなどの新エネルギー車(NEV)の販売台数は前年比61.7%増の125.6万台と大幅に増加している。中国政府は2018年1月からNEV対象車両の車両購置税が免除される「新エネルギー車の車両購置税免除公告」を施行。その一方で排気量1.6L以下の乗用車を対象にした車両購置税率を10%に戻した。また2019年よりICE車(ガソリン車、ディーゼル車、ガス燃料車、ハイブリッド車)の生産・販売台数が年間3万台以上の企業を対象にNEVクレジット制が導入され、新たなNEVモデルの導入や体制づくりが加速している。
広東省は香港に隣接し、改革開放路線のスタート地点であるIT先端都市の深圳を擁する。深圳にはEV最大手でDaimlerとEVの合弁事業を展開するBYDが本部を構える。また、湖南省武漢は長江の流域にあるため、古くから交通の要所で軍需産業及び重工業が盛んであり、東風汽車グループが本部を置く自動車産業の集積地でもある。華北地区にはEV販売が好調な北京汽車グループの本部や、今後MINIの生産を担う中国SUV販売台数トップの長城汽車の本部がある。日系自動車メーカーの合弁工場がある天津(一汽トヨタ)、武漢(東風ホンダ)、広州(広汽トヨタ、広汽ホンダ、東風日産)にはすでに多数の日系サプライヤーが進出しているが、NEVモデルの投入増加や、中国自動車メーカーからの受注拡大に対応し、部品メーカー各社による体制強化が進められている。
トヨタは上海モーターショーで発表したEVのIZOA(一汽トヨタ)とC-HR(広汽トヨタ)を2020年に発売する。またNEV対応のため、2022年の稼働開始を目指し広州工場を拡充する。ホンダは2019年下期に発売予定の第2弾EVを武漢で製造する。
日系サプライヤーによるNEV関連の動向としては、パナソニックの角形リチウムイオン電池量産開始、日本電産のE-Axle新工場、UACJのリチウムイオン電池用アルミ材料の新工場などがあり、納入先拡大に伴う動きとしては、アイシンAWのAT生産拠点新設、ジェイテクトの電動パワーステアリング(EPS)増産、KYBのEPS新工場、エイチワン、東プレ、ジーテクトなどプレス部品の生産増強などが見られる。さらに、ケーヒン、日立オートモティブシステムズ、三菱電機などが電動車向け製品の新たな生産体制を検討している。
中国での日系サプライヤーの動向 (*新品目投入)
新会社(工場) 設立・稼働・出資 |
河北省 | UACJ(バンパーなどアルミニウム部品:合弁設立) | |
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湖北省 | アルプスアルパイン(バッテリーパック:生産拠点設置) KYB(*電動パワーステアリング:合弁契約締結、生産拠点設置) 東プレ(プレス部品:新会社+新工場) 西川ゴム工業(ウェザストリップ:新会社+新工場) |
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広東省 | アイシンAW (6速AT:新会社+新工場) | ||
四川省 | 三菱ケミカル(機能性樹脂製品:新工場) | ||
台湾 | シャープ(車載カメラ、電子ミラー:新会社設立) | ||
生産能力増強 | 生産ライン・設備等の増資など | 全国 | IHI(ターボチャージャー:生産効率改善) 伊原電子工業(プリント基板:生産増強) エイチワン(プレス部品用金型:生産増強) 東プレ(プレス部品:設備増強) 本多通信工業(車載カメラ用コネクター:設備自動化) リョービ(AT用ダイカスト部品:生産増強) |
天津市 | ジェイテクト(電動パワーステアリング:ライン増設) 日宝(樹脂成形部品:設備増強) |
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河北省 | 共和レザー(合成皮革、塩化ビニール表皮:生産増強) | ||
湖北省 | ジーテクト(プレス部品:設備増強) 丸順(バッテリーケース:ライン改修) リケン(ピストンリング:生産増強) |
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広東省 | アルファ(ドアハンドル部品:設備増強) 出光興産(コンパウンド製品:生産増強) エイチワン(溶接治具:内製化) オンキョー(スピーカーユニット:生産体制強化) JSP(発泡ポリプロピレン:生産増強) 大日光・エンジニアリング(車載電子機器:ライン増設) 塚田理研工業(金属めっき処理:ライン増設) 長津製作所(プラスチック部品:設備増強) |
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台湾 | JSP(リアシートコア材:設備増強) | ||
工場増設、建屋拡張 | 遼寧省 | 日本電産(E-Axle、ブラシ付きDCモーター:新工場) パナソニック(*車載用角形リチウムイオン電池:新工場) |
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天津市 | トヨタ紡織(フィルター:移転・新工場) | ||
河北省 | ジーマックス(ベルチェ素子モジュール:移転・新工場) | ||
広東省 | 三井化学(長繊維GFPP:新工場) UACJ(リチウムイオン電池用アルミニウム電池箔:新工場) |
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開発・営業強化 (工場取得、合弁会社化、 開発・営業・試験拠点) |
全国 | サンデンAS(EV向けヒートポンプ:受注拡大) JVCケンウッド(車載カメラや電子ミラーなど:受注拡大) 神明電気(車載スイッチなど:販路拡大) 大同メタル工業(EV向け部品など:テクニカルセンター開設) タチエス(シート:開発強化) ニッキ(CNG車用機器:営業強化) ブルーイーネクサス(電動車用駆動モジュール:開発拠点設立) |
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遼寧省 | アルプスアルパイン(*2出力ブレーキペダルポジションセンサー:新製品開発) アルプスアルパイン(カーシェアリングサービス:製品開発強化) |
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天津市 | サンデンAS(カーエアコン:環境試験棟設立) | ||
湖北省 | デンソー(デジタルメーター:開発合弁) | ||
広東省 | エフテック(足回り部品:開発強化) 京セラ(自動車部品、電子部品:オープンイノベーション開設) ショーワ(ショックアブソーバーなど:開発要員増員) 八千代工業(燃料タンク、サンルーフ:開発強化) |
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台湾 | 西村製作所(プレス加工:市場開拓) | ||
事業体制強化・再編 (工場取得、合弁会社化、 開発・営業・試験拠点) |
全国 | NOK(フレキシブルプリント基板:提携、生産拠点検討) クラリオン(カーオーディオ:生産拠点の機能見直し) ケーヒン(電動車向けPCU:生産拠点検討) 小糸製作所(ランプ:子会社売却、生産増強、生産拠点検討) 住友化学(PPコンパウンド:生産拠点検討) 日本特殊陶業(ノックセンサー:日本から生産移管、イノベーションセンター開設) 日立オートモティブシステムズ(電動アスクル向けモジュール部品:生産拠点検討) 堀場製作所(評価試験設備:計測事業強化) 三井化学(LIB部材や軽量素材:生産増強検討) 三菱電機(ISGなど電動向け部品:生産拠点検討) |
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吉林省 | NTN(インホイールモーター駆動システム:技術提携) | ||
内モンゴル自治区 | JFEケミカル(EV電池の負極材:合弁検討) | ||
湖北省 | 豊田合成(ウェザストリップ製品:資本参加・拠点増設) | ||
重慶市 | フタバ産業(エキゾーストマニホールドなど:子会社売却) | ||
台湾 | 豊田通商(車載モーター:資本参画) 三井化学(炭素繊維調達:業務提携) ルネサスエレクトロニクス(車載用マイコン:生産委託) |
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<日系サプライヤーの海外事業動向>
中東欧 (2019年6月)
西欧 (2019年5月)
インド (2018年11月)
メキシコ (2018年10月)
米国・カナダ (2018年9月)
ASEAN (2018年8月)
中国・華南・華中・華北・東北地区 (2018年3月)
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