西欧の日系サプライヤー:環境規制、電動化、自動運転などで増加する需要に対応
欧州市場での事業拡大に向けた買収・提携・協業やR&D強化
2019/05/17
- 要約
- 欧州全般:生産拠点新設・生産能力増強(旭化成、東レ)、買収・提携(デンソー、堀場製作所)、事業強化(住友ゴム、日本特殊陶業)など
- ドイツ:M&A・合弁(積水化成品、日本電産、三菱製鋼)、R&D・製品開発(ダイキン、大同メタル、東レ)、生産体制強化(東洋炭素、三菱電機)など
- 西欧(ドイツを除く):買収・合弁・提携(アイシンAW、アルファ、日本電産)、生産能力増強(カネカ、積水化学、村田製作所)、営業強化(ダイヤモンド電機)など
要約
ドイツの自動車工場マップ(クリックすると拠点マップが開きます) ドイツ以外の国・地域は完成車メーカー工場立地マップよりご参照ください |
西欧17カ国のライトビークルの販売台数は、LMC Automotiveによれば、2018年1-12月累計が1,419万台で前年比0.7%の微減。2019年1-4月累計も500万台で前年同期比2.9%減と低迷している。
日系自動車部品メーカーはこうした状況の中にあって、中期的な受注増に対応した生産・販売・研究開発体制を強化している。また、欧州での環境・燃費規制強化や電動化・自動運転などの潮流の中で新たな需要を取り込むために、買収・合弁・提携・協業など多様な取り組みを進めている。
電動化の動きでは、日本電産がPSAグループとEVなどの駆動用モーターの合弁会社を設立、ケーヒンは堀場製作所の英国拠点と提携し、EVシステムの研究開発体制を強化、また堀場製作所は電動車用バッテリーや燃料電池のテストベンチ開発を行うドイツ企業を買収し、電動車の総合計測事業を強化している。
素材メーカーも電動化、軽量化に伴う欧州事業を拡大している。帝人はポルトガルの自動車向け複合材料成形メーカーを買収、欧州での複合材料成形事業の拡大を図る。東レはミュンヘン近郊に自動車用材料に特化した技術開発センターを開設。また、オランダの炭素繊維複合材料メーカーを買収した。積水化学工業はリチウムイオン電池向け放熱材料の生産工場をオランダに新設。合わせガラス用中間膜を製造・販売するオランダの製膜工場と原料樹脂工場には新ラインを増設する。
自動運転やコネクテッドに関連する動向として、デンソーはパワー半導体大手のInfineon Technologiesに出資、デジタルマップのTomTomと提携し、自動運転向け機能や次世代車の技術開発を加速する。日立オートモティブシステムズはKnorr-Bremseに商用車用パワステ事業を譲渡し、乗用車・自動運転分野に注力する。
ブレグジット(Brexit)を巡る動きでは、パナソニックが欧州本社を英国からオランダに移転する方針を表明。日本精工は英国に代わる欧州第2の製造拠点を検討すると報じられた。
以下は、欧州(中東欧を除く)における日系サプライヤーの最近の動向である。(収録対象は2019年3月までの1年余り)
欧州全般
生産拠点新設 | ・旭化成:欧州初の低燃費タイヤ向け合成ゴム工場建設へ、2021年をめどに生産開始 ・日本精工:ブレグジット次第で英国に代わる欧州第2の新製造拠点を検討 |
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生産能力増強 | ・東レ:リチウムイオン二次電池用セパレーターの生産能力増強へ |
買収・提携 | ・NTTドコモ:Valeoグループとコネクテッドカービジネスで協業開始 |
・住友電装:インド子会社がドアパネルなどの仏社買収、独のワイヤーハーネス社も買収へ | |
・デンソー: パワー半導体世界大手の独Infineon Technologiesに出資、次世代車の技術開発を加速 オランダのデジタル地図のTom Tomと提携し、自動運転向け機能の開発で協業 |
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・パイオラックス:仏RAYMONDと工業用ファスナーでグローバルな生産・販売の協力契約 | |
・堀場製作所:独社を買収し電動車の総合計測事業を強化、独・英で生産能力増強へ | |
新品目投入・生産体制強化 | ・旭化成:独OEMに電池周辺部品向け発泡剤供給へ。コンパウンドメーカー買収も検討 |
・伊原電子:欧州でEVのリチウムイオン電池用プリント基板を大型受注見込み | |
・NTN:独で精密軸受を、イタリアで自動調心ころ軸受を生産開始 | |
事業強化・再編 | ・住友ゴム工業:市販用タイヤのシェア拡大のため、流通倉庫の設置、英で販売店増を計画 ・日本特殊陶業:新事業の提携先発掘・投資拠点「イノベーションセンター」を2019年夏に設立 |
・パナソニック:欧州本社を英国からオランダに移転、英のEU離脱に備える |
ドイツ
新品目投入、生産体制強化 | ・三協立山:VWのEV向けバッテリーフレームを生産、中・高強度合金の押出製品の供給力強化 ・東洋炭素:ドイツ子会社で自動車向け黒鉛部材の工場を新設 ・三菱電機:パワー半導体モジュールを手がける独子会社に半導体チップ供給量を引き上げ |
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M&A・出資・合弁・提携 | ・GSユアサ:Bosch、三菱商事との車載用次世代リチウムイオン電池技術開発の合弁会社を解消 |
・JX金属:独金属粉メーカーを買収し、レアメタル素材群を新事業の柱に | |
・積水化成品:独の自動車部材メーカーのProseatグループを買収し、欧州での事業拡大を図る | |
・帝人フロンティア:独の内装材大手メーカー買収、EV向け吸音材開発や欧州での拡販を図る | |
・日本電産:独の車載向けECU会社を2017年に買収、高性能・高信頼の次世代製品提供を目指す ・日本バイリーン:独自動車用フロアマットメーカーを買収し、欧州での生産拠点を確保 |
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・日本ピストンリング:独連結子会社の出資持分の一部を大同メタルに譲渡し、協力関係を強化 | |
・日立産業制御ソリューションズ:独社と自動運転分野エンジニアリングサービスで協力合意書 | |
・三菱製鋼:独の巻ばね製造会社を2018年に買収し、欧州に進出 ・ルネサスエレクトロニクス:独HELLA Aglaiaと車載フロントカメラの開発で協業 |
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R&D・製品開発 | ・イーグル工業:欧州R&Dセンターを2019年に開設、EVモーター向けメカニカルシールなど開発 |
・ダイキン:フッ素樹脂部品の開発拠点設立へ、軽量化や自動運転などの潮流に対応 | |
・大同メタル工業:ドイツに欧州技術ユニット、R&Dセンターを2023年に設置予定 | |
・東レ:ミュンヘン近郊に自動車用材料に特化した技術開発センターを2018年に開設 | |
・トーヨータイヤ:デュッセルドルフ近郊にR&Dセンターを新設、新工場の建設計画に先行 | |
事業・営業体制強化 | ・JX金属:IoT、AI関連事業強化でフランクフルト事務所開設 ・ニフコ:独の連結子会社2社を合併し営業体制を一本化、事業拡大を図る ・日立オートモティブシステムズ:独社に商用車用パワステ事業を譲渡、乗用車・自動運転分野に注力 |
・丸文:独に営業拠点開設、欧州の日系メーカー向けの半導体・電子部品販売に本格参入 |
西欧(除くドイツ)
生産拠点、生産ライン新設 | ・積水化学工業:EV等環境対応車のLiB向け放熱材料の生産工場をオランダに新設 ・帝人:フランスのCSP Europe社で複合素材のGF-SMCの製造ラインを新設 |
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生産能力増強 | ・カネカ:ベルギー子会社でビーズ法発泡ポリオレフィンの生産能力増強、軽量化需要に対応 |
・サンデンAC:仏子会社に第1世代の電動コンプレッサー生産を日本から移管 | |
・三菱ケミカル:英国のリチウムイオン用電解液工場を再稼働、欧州大陸側での工場建設も検討 | |
・積水化学工業:オランダで合わせガラス用中間膜の新ライン設置、原料樹脂は生産能力増強 | |
・村田製作所:フィンランド子会社で安全運転などを支援するMEMSセンサーの生産能力拡大 | |
買収・合弁・提携・協業 | ・アイシンAW:PSA子会社とATの生産ライセンス契約を締結 ・旭化成エレクトロニクス:スウェーデンのメーカーを買収、CO2センサーの車載用途を開拓 ・アルファ:仏のドア関連部品メーカーを買収、欧州メーカーへの塗装ドアハンドルの販路拡大へ |
・ケーヒン:英HORIBA MIRA社と提携し、EVシステム全体の研究開発体制強化 | |
・山陽特殊鋼:スウェーデンの特殊鋼メーカーOvako社を日本製鉄から譲受 ・JVCケンウッド:車載カメラやヘッドアップディスプレイを手掛けるスイスのWayRay社に出資 |
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・帝人:ポルトガルのInapal社を買収、欧州での複合材料成形事業の拡大を図る | |
・東レ:オランダの炭素繊維複合材料TCACの買収を2018年7月に完了 | |
・ニチリン:スペインのブレーキホース子会社を完全子会社化 | |
・日本電産:PSAグループとEVなどの駆動用モーターの合弁会社を2018年5月設立 | |
・ブリヂストン: オランダのデジタルフリートソリューション事業のTomTom Telematics社を買収 グアユール由来の天然ゴムの商用化に向けて伊Versalis社と提携 |
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営業体制強化 | ・JDI:Faureciaと車載コックピット向けディスプレイの営業活動で覚書締結 ・ダイヤモンド電機:ルクセンブルクに販売拠点を2018年に開設 |
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<日系サプライヤーの海外事業動向>
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メキシコ (2018年10月)
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中国・華南・華中・華北・東北地区 (2018年3月)
中国・華東地区 (2018年3月)
中東欧 (2018年2月)
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