中東欧の日系サプライヤー:欧州メーカーからの受注増に対応
環境・燃費規制、電動化などの需要に備える素材・部品の生産体制を強化
2019/06/03
- 要約
- 中東欧:新工場の建設・稼働(キャタラー、GSユアサ、日本精機、三井ハイテック、ミネベアミツミなど)
- 中東欧:生産能力増強(カルソニックカンセイ、東レ、ニッパツ、日本電産、パナソニック、三菱電機など)
- トルコ:新工場建設(住友化学)、生産能力増強(GSユアサ、住友ゴム)、部品内製化(アイシングループ)
- ロシア:現調率拡大(カルソニックカンセイ)、生産委託(パイオラックス)
要約
中東欧の自動車工場マップ(クリックすると拠点マップが開きます) ロシアの自動車工場マップ / トルコの自動車工場マップ |
LMC Automotiveによると、2018年の西欧17カ国のライトビークル販売台数は前年比7.5%減の1,615万台、中東欧15カ国(トルコ、ロシアを含む)は0.5%増の424万台。2019年1-4月累計では、西欧が同2.0%減の568万台、中東欧は同8.2%減の126万台と減少している。このうち、ロシアについては2018年通年では12.8%増の180万台、2019年は1-4月累計が前年同期比1%減だったが通年では大きく増加すると予測している。
こうした中にあっても、日系自動車部品メーカーは、欧州自動車メーカーからの受注増に対応して中東欧で新工場の建設(河西工業、カルソニックカンセイ、ニッパツ、日本ペイント・オートモーティブコーティングスなど)や設備増設(ジーテクト、日本精機)を進めている。ロシアでは、パイオラックスが提携先の仏Raymond社にロシア工場での自動車用ファスナーの生産委託を計画。
また、欧州メーカーによる環境・燃費規制への対応に伴う需要増を見越して、キャタラーがチェコに自動車用排ガス触媒の工場を2020年に稼働させる計画。東レは米子会社がハンガリー工場でラージトウ炭素繊維の生産能力増強を進めている。トルコでは、GSユアサが新工場でアイドリングストップ車向け鉛蓄電池の生産を開始し、住友化学がPPコンパウンドの新工場建設を検討している。
EVなど電動車や自動運転関連の新たな需要に対応するため、モーターでは、ポーランドで三井ハイテックが電動車のモーター用コアの生産拠点を設立し、日本電産が車載用モーターの増産やEV向け駆動用モーターの新規生産などを計画。チェコでは、三菱電機が新工場を建設しモーター・インバーターの生産体制を強化する。スロバキアでは、ミネベアミツミの車載用モーター新工場が2018年に稼働。パナソニックは、チェコとスロバキアで車載充電器の生産を拡大させるなど、欧州でEV用部品の生産能力拡大を計画している。
電池関連では、ハンガリーでGSユアサがリチウムイオンバッテリー工場を2019年8月に稼働させ、NOKがリチウムイオン電池向けフレキシブルプリント基板の複数の小工場を集約する。
以下は、中東欧における日系サプライヤーの最近の動向である。(収録対象は、2019年4月までの1年余り)
*西欧の日系サプライヤーの動向は既報レポートをご参照ください。
中東欧
新工場建設 | ・河西工業:スロバキアにドア部品などの新工場建設、2019年9月に量産開始 |
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・キャタラー:チェコに自動車用排ガス触媒の工場建設、2020年前半に稼働 | |
・GSユアサ:ハンガリーのリチウムイオンバッテリー工場が2019年8月に稼働 | |
・ジーテクト:スロバキアで2019年に稼働するアルミ車体部品工場の大型プレス機増設 | |
・日本精機:ポーランドにヘッドアップディスプレイの子会社を2019年に設立、2020年から生産開始 | |
・日本ペイント・オートモーティブコーティングス:チェコの自動車用塗料工場が2019年1月に稼働 ・三井ハイテック:ポーランドに欧州初の生産拠点設立、電動車のモーター用コアを2000年に生産開始 ・ミネベアミツミ:スロバキアの車載用モーター新工場が2018年に稼働、研究開発拠点も設置 |
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生産能力・体制強化 | ・NOK:ハンガリーで自動車向けフレキシブルプリント基板の複数の小工場を集約化 |
・カルソニックカンセイ:ルーマニアに第2工場新設、ルノーからのメーター類の電子関連部品受注に対応 | |
・東レ:米子会社がハンガリー工場でラージトウ炭素繊維の生産能力増強へ ・ニッパツ:ハンガリーで懸架ばねの新工場を建設、2019年11月に稼働へ |
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・日本電産:ポーランドで車載用モーター増産へ、EVの駆動用モーターも新規生産 ・日本電産:ハンガリーの車載向けポンプ工場の拡張を検討 ・パナソニック:欧州でEV用部品の生産能力拡大計画、チェコとスロバキアでは車載充電器の生産拡大 |
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・ブリヂストン:ハンガリーの乗用車用タイヤ工場で倉庫増設、2020年までに工場拡張も実施 | |
・三菱電機:チェコの子会社で新工場を建設し、電動車両用モーター・インバーターの生産体制強化 | |
販売体制強化 | ・丸文:ハンガリーに欧州地域を担当する合弁会社(商社)を2017年に設立 |
トルコ
新工場建設・生産体制構築 | ・住友化学:トルコにPPコンパウンドの新工場建設を検討 |
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生産能力増強 | ・GSユアサ:トルコの新工場が稼働、アイドリングストップ車向け鉛蓄電池生産 |
・住友ゴム:トルコのタイヤ工場の設備を拡大し、生産能力倍増を計画 | |
内製化 | ・アイシングループ:トルコ工場で座席シートベルトセンサーの内製化へ |
ロシア
生産委託 | ・パイオラックス:仏Raymond社ロシア工場に工業用ファスナー生産を委託へ |
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現地調達 | ・カルソニックカンセイ:ロシアで現調率拡大を加速、背景に輸入関税減免、為替変動リスク削減 |
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