中国・華東地区の日系部品メーカー:NEVや既存車種の生産増強に対応

新エネルギー車・燃費改善・安全システム向けの部品・材料供給を拡充

2018/03/07

要約

華東周辺

中国の自動車工場マップ(クリックすると拠点マップが開きます。)
華東地区の自動車工場マップ

 本レポートは、中国・華東地区における日系部品メーカーの動向である。(2017年5月から2018年1月までの約9ヵ月間を収録)

 2017年の中国の自動車生産台数は2,902万台(前年比3.2%増)、販売台数(工場出荷台数)は2,888万台(同3.0%増)と共に過去最高を更新。しかし、小型車減税政策の税率引き上げの影響もあり、低い伸びに留まった。車種別の販売台数では、SUVが1,025万台(前年比13.3%増)と引き続き高い伸び率だったが、セダン・ハッチバックは1,185万台(同2.5%減)と減少し、両車種の台数の差が縮まっている。EV、PHVなどの新エネルギー車(NEV)は、2017年から政府補助金の引き下げが行われたものの、販売は引き続き好調で、前年比約1.5倍の77.7万台となった。

 中国政府は2017年に一連の自動車政策を発表した。1月にNEV事業への参入管理規定を公布し、参入条件を厳格化。4月に「自動車産業中長期発展計画」でNEVやコネクテッドカーなどの中長期戦略を提示。9月には乗用車企業への平均燃費規制と2019年からの一定割合のNEV生産義務付けを発表。12月にはNEV購入時の車両購置税免除、NEVの要件、検査基準、中国国家標準などを公布した。

 こうした中、中国企業を中心にEV生産ライセンスの取得が続いている。外国メーカーではVWが江淮汽車とNEVの合弁生産会社を2017年に設立。その他の欧米日韓メーカーも、2018年から2020年にかけてのNEV事業参入計画を明らかにしている。また、既存車種についても、欧米日韓、中国の主要メーカーは2017年から2019年にかけて生産能力の増強を計画している。

 日系自動車部品メーカーはこれらの動きに対応するため、既存車種のみならず、EV、PHV向けの部品や部材の生産能力増強を進めている。燃費改善関連では、IHI、三菱重工のターボチャージャー、エクセディのAT向け部品の生産能力増強など。NEV関連では、日清紡ホールディングスのEV向けブレーキ摩擦材、アーレスティのNEV用エンジンブロックの設備増強や淀川ヒューテック、三井化学、三菱ケミカル/宇部興産のリチウムイオン電池関連部材の生産体制強化、日本電産のEV/PHV用トランスアクスルユニットの工場建設計画(報道)、ケーヒンのEV向け制御システムの開発促進などの動きがみられる。

中国での日系部品メーカーの動向 (*新品目投入)

生産能力増強  生産ライン・設備等の増設など 江蘇省 IHI(ターボチャージャー:設備増強)
神戸製鋼(*鍛造用金型:設備増設)
昭和電工(NEV対応の高純度アルミ箔:設備増設)
セーレン(シート用合成皮革:生産ライン増設)
太平洋工業(タイヤ空気圧モニタリングシステム:ライン増設)
帝人フロンティア(エアバッグ基布:設備増設)
日清紡ホールディングス(EV向けなどのブレーキ摩擦材:設備増強)
日本ピストンリング(ピストンリング:2直化、バルブシート:新ライン設置)    
日立金属(ピストンリング材:生産ライン増設) 
淀川ヒューテック(*車載リチウムイオン電池用シール材:生産体制構築) 
上海市 愛知製鋼(クランクシャフト用鍛造:プレスライン新設)
エクセディ(AT向けトルクコンバーター:設備増強)   
三菱重工(ターボチャージャー:最終組立ライン増設)  
浙江省 神戸製鋼(特殊鋼線材:設備増設)     
日本化薬(インフレータ:設備増設、新型商品も生産へ)    
三井化学(リチウムイオン電池向け電解液:設備増強)
工場増設、建屋拡張 安徽省 アーレスティ(NEV用エンジンブロック:建屋増設)
江蘇省 日本ガイシ(ガソリン・パティキュレート・フィルター:第2工場)   
ユーシン(ドア部品など:新工場建設)  
浙江省 横浜ゴム(*自動車用ゴムホース:工場改修)
福建省 小糸製作所(ランプ:第3棟建設)
新会社(工場)設立・稼働・出資  江蘇省 虹技、岡谷鋼機(プレス金型鋳物:新会社+工場増強) 
旭化成(①PPEポリマー、モノマー:新会社、②樹脂コンパウンド:新会社)    
ニチリン(各種ホース:新会社。既存工場から事業移転)
浙江省 阪和興業(鉄鋼総合加工センター:出資)
日本電産(*EV/PHV用トランスアクスルユニット:新工場)   
山東省 日清紡ホールディングス(ブレーキ用摩擦材:新会社) 
日鍛バルブ(小型エンジンバルブ:第2生産拠点設立へ)
事業体制強化(工場取得、合弁会社化、開発・試験拠点) 江蘇省 ツバキ・ナカシマ(*軸受用ころ:工場取得)   
村田製作所(*リチウムイオン電池:工場取得)  
三菱ケミカル/宇部興産(リチウムイオン電池向け電解液:合弁会社化)                                       
上海市 アルパイン(EVの車載機器開発会社:人員増強)    
ケーヒン(*EV向け制御システム:研究開発拠点で受注提案)
ジーテクト(*電動化に関する情報取集・販促:リーサーチオフィス設立)   
東海エレクトロニクス(車載システム:技術営業担当を配置)
日本電計(部品の環境試験:第2試験場開設)   
企業売却 上海市 小糸製作所(上海小糸を合弁相手に売却)
国外に生産移管 江蘇省 NOK(大型防振ゴム:日本に移転)

 

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<日系部品メーカーの海外動向>
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西欧編 (2017年12月)
インド編 (2017年9月)
北米編 (2017年8月)
ASEAN編 (2017年8月)
メキシコ・ブラジル編 (2017年6月)
中国編 (2017年5月)

 

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