欧州市場:ディーゼル車の販売減少、EVシフトに期待

環境規制の強化、WLTP導入、Brexitへの対応など

2018/12/05

要約

WLTP導入

  欧州の新車販売は2018年9月に導入された新燃費測定基準WLTP(注)の影響を受け、8月までは駆け込み需要で販売台数が押し上げられたが、導入後は車両購入時の値上げ懸念などで反動減が生じている。WLTPでは新車の型式認証にあたり、従来の試験法NEDCに比べて実際の走行に近い条件での検査が求められ、自動車メーカーでは検査にかかる工数やコストが増加する。消費者にとっては実際の走行データに近い燃費表示が期待される一方、車両購入時の値上げや納車遅れが懸念される。
(注)WLTP (Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure) 乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法
  NEDC (New European Driving Cycle) 新欧州ドライビングサイクル

CO2排出量規制の強化

 EU(欧州連合)では域内で販売される新車を対象に2030年までのCO2排出削減目標をめぐる攻防が続いている。現行のCO2排出量規制は1km走行あたり130gで、2021年以降は95g/kmとなる。欧州委員会は2017年11月、CO2排出量を2021年比で2025年までに15%、2030年までに30%削減する目標を提案した。2018年10月には欧州議会が2030年までに40%削減する案を採択し、EUの環境相理事会では2025年までに15%、2030年までに35%削減する目標で合意した。3者交渉で最終案を詰め、2018年内の合意を目指す。大幅な削減目標は、環境負荷の低減や、EVの普及・競争力強化につながる一方、自動車業界は過度に困難な目標が政治的な判断で設定されることに警戒感を示している。

西欧の新車販売台数
出所:欧州自動車工業会(ACEA)資料より作成

ディーゼル車の販売減少

  欧州メーカーはCO2排出量の低いクリーンディーゼル車を販売することで、EUの厳しい排ガス規制に対応してきた。EU域内で販売された新車のCO2排出量は2017年に増加に転じ、クリーンディーゼル車の販売減少が一因との報告もある。欧州でディーゼル車の販売比率は年々低下傾向にあり、日系メーカーは欧州市場におけるディーゼル車の販売から撤退・縮小していく方針を表明した。ドイツ大手3社はCO2排出規制をクリアするためにはクリーンディーゼル車が不可欠と見ており、ディーゼルへの投資を継続する意向。また、各社がディーゼル車から撤退すれば、欧州の雇用に悪影響を及ぼすとしている。一方で、ドイツの主要都市でもディーゼル車乗り入れ規制の導入が進み、2018年10月にはドイツ政府が古いディーゼル車の買い替え・改修促進策を発表した。ドイツ系を含むメーカー各社は旧型ディーゼル車からの買い替え奨励策を打ち出している。

EVシフト

  欧州市場で期待される電動車の販売台数は着実に伸びているものの、ドイツ、フランス、英国など主要国をはじめ、市場全体に占める割合は未だ5%以下(2017年)にとどまっている。そうした中、ノルウェーでは電動車の販売比率が約4割と突出して高く、C、Dセグメントを中心に様々なブランドのBEV、PHEVが市場投入されている。ノルウェー政府は2025年にすべての新車をゼロエミッション車とする目標を掲げ、電動車の導入・普及策を積極的に推進している。

Brexit(ブレグジット)

  2019年3月に英国がEU(欧州連合)を離脱するBrexit(ブレグジット)を巡っては、英・EU間で2018年11月末に合意案が決定したが、英国内での反対も多く、未だ「合意なし離脱」に向けた懸念が残る厳しい情勢が続いている。英国の新車販売は年間250万台の高水準にあるものの、Brexitを控えて消費マインドが後退しており、マイナス傾向が続いている。また、英国に生産拠点を置くメーカーは、EU離脱後に関税や通関手続きが発生する「合意なし離脱」に備えて対策を急いでいる。

 

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<LMC Automotive レポート>
LMC Automotive 2018年9月自動車市場月報(欧州)(2018年10月)
LMC Automotive: 欧州市場の近況 (2018年7月)