ASEANの日系部品メーカー:グローバル市場の需要増に対応

輸出拡大を見込み、生産体制を強化、電動化関連の投資も増加

2018/08/09

要約

  以下は、ASEAN諸国における日系自動車部品メーカーの新生産拠点構築、生産能力増強、生産品目拡大・変更、事業体制・開発強化等の動きである (収録対象は、2017年7月から2018年3月までの約9カ月間)。

  タイの2017年の自動車生産台数は198.9万台で前年比2.3%増、2018年1~6月は105.7万台で前年同期比11.1%増と伸長。国内販売台数は2017年が87.2万台で同13.4%増と5年ぶりに増加に転じ、2018年1~6月は48.9万台で同19.3%増と好調を継続。新型車の導入、消費意欲の拡大、民間投資と公共支出の拡大、経済回復などが貢献した。完成車輸出は2017年が114.0万台で同4.1%減だったが、2018年1~6月は56.2万台で同4.8%増と回復している。
  こうした中、日系完成車メーカーではタイをグローバル輸出拠点とする戦略を進めつつ、タイ政府の政策に沿った省燃費エコカー生産に加え、電動車投入の動きも見られる。日系自動車部品メーカーも、タイや輸出先の中期的な需要増を見込んだ生産能力の増強や、電動化や軽量化などの需要に対応する部品・部材の投入を進めている。


  インドネシアの自動車販売台数は、2017年が107.9万台と前年比1.6%増、2018年1~6月は前年同期比3.8%増の55.4万台と回復。生産台数は、2017年が121.7万台で同3.3%増、2018年1~6月は62.4万台と同4.4%増と好調。MPV(多目的車)への需要が多いが、近年はSUVの販売も伸びている。日系自動車メーカー各社は、中期的なインドネシア市場の拡大を見込み、生産拠点の拡充や部品の現地化を進めている。日系部品メーカーでも生産能力増強を進めるとともに、新たな需要に対応した新品目投入がみられる。


  ベトナムでは、樹脂成形、精密ばね、ワイヤーハーネス、モーター、金型部品などでグローバル輸出を拡大させるための生産能力増強が行われている。エアバッグ関連では、豊田合成が分工場建設、帝人が基布の新工場建設を検討。

  マレーシアでは、小糸製作所が同国にランプ生産拠点を初めて設立。東洋ゴムはタイヤのフル生産が続いているため新棟建設を決定。第一精工は、車載用センサーなどの生産拠点を新設する。

  フィリピンでは、伊藤製作所が順送り金型で、バンダイがワイヤーハーネスで生産拠点を新設。日本航空電子が車載用コネクター、村田製作所が積層セラミックコンデンサで生産能力を増強。部品表ソフトを開発するエスツーアイは、英語関連の業務をフィリピンで行うための子会社を新設。

  シンガポールでは、旭化成が省燃費タイヤ用ゴムの生産能力を増強。日本ゼオンがASEAN・インド地域の顧客を対象とする特殊ゴムの技術サポート拠点を新設する。

タイの自動車工場マップ(クリックすると拠点マップが開きます)
インドネシアの自動車工場マップ(クリックすると拠点マップが開きます)
上記以外の国・地域は完成車メーカー工場立地マップよりご参照ください



タイにおける日系自動車部品メーカーの動き(生産品目など)

新規進出、買収 宇部興産(PP樹脂添加剤)、カネカ(ビーズ法発泡ポリオレフィン)、三洋化成(発泡ウレタン原料)、大同メタル(電動車向けアルミダイカスト製品)、帝人(樹脂コンパウンド、開発技術センター)、戸田工業(磁性コンパウンド)、日立化成(タイの鉛蓄電池企業を買収)
生産能力増強、生産ライン更新、新品目(*印)生産
<新たな工場建設>
セキコーポレーション(プレス加工部品の第2工場)、日本特殊陶業(自動車用センサー)
<工場拡張、設備増強>
新電元工業(車載用パワー半導体)、住友ゴム(SUV用タイヤ)、住友電工(*ハイブリッド車のモーター用平角巻線)、ダイヤモンド電機(点火コイル)、帝人フロンティア(ポリエステル繊維関連製品と研究開発拠点)、日本CMK(ADAS向け車載基板製品)、日立金属(電動車の電源系回路に使用するナノ結晶軟磁性材料)、船井電機(*小型EV向け樹脂成形部品)、三菱ケミカル(*スチレン系熱可塑性エラストマー)、三菱重工サーマルシステムズ(EV向けカーエアコンコンプレッサー)、山元(電装品向け精密プレス加工)、UACJ(熱交換器用のアルミ材)、ヨロズ(部品用金型)
経営・事業体制強化 神戸製鋼(東南アジア・南アジア地域の統括会社)、三洋貿易(合弁販売会社を完全子会社化:自動車部品)、ダイキン工業(販売・マーケティング子会社:フッ素化学製品)、豊田通商(車線単位の高精度ルートガイダンスシステムの実証実験)、バンドー化学(アジアヘッドクォーター機能の新会社)

資料:各社の計画から作成

インドネシアにおける日系自動車部品メーカーの動き(生産品目など)

新規進出 新日鉄住金(新工場稼働:冷延鋼板、防錆鋼板、高張力鋼板など)
生産能力増強・生産品目切り替え <新たな工場建設>
エムケーカシヤマ(新工場取得:補修用のディスクブレーキパッド増産)、日東精工(第2工場:特殊冷間圧造部品、太物ボルト・ねじ)
<設備増強、生産品目切り替え>
小糸製作所(工場建屋増築:ランプ増産)、メタルアート(既存工場の生産品目をプロペラシャフト構成部品からMT用ギアに切り替えへ )
事業体制強化 イワサ(賃貸工場稼働:鋼材の販売に加え新たに金属加工を開始)、共和産業(賃貸工場稼働:サンバイザーの輸入販売を現地生産に切り替え)、日本板硝子(現地会社に出資:鉛蓄電池用バッテリーセパレーター)、三菱製鋼(合弁会社を連結子会社化:特殊鋼鋼材)

資料:各社の計画から作成

ベトナムにおける日系自動車部品メーカーの動き(生産品目など)

新規進出 イコール(賃貸工場:アルミ、樹脂などの部品加工)、帝人(新工場設置を検討:エアバッグ基布の新工場設置検討)、日本モリマー(賃貸工場:射出成形部品)
生産能力増強・新品目の追加 <新たな工場建設>
アドバネクス(拡張した新工場に移転:精密ばね)、豊田合成(分工場:エアバッグ部品・ハンドル)、プロニクス(第2工場:樹脂成形部品)、マブチモーター(分工場:小型モーター)
<設備増設、生産品目(*印)追加>
東新製作所(鋳物や射出成形などの部品加工の仲介事業を本格化)、パンチ工業(設備増設:金型部品)、三谷産業(増築:樹脂成形部品)、ヨコオ(工場拡張:ワイヤーハーネス・AM/FM用マイクロアンテナ、*シャークアンテナなど)

資料:各社の計画から作成

 

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インドネシア:市場規模110万台水準に回復、現地生産化が進展 (2017年8月)

<日系部品メーカーの海外動向>
  中国・華南・華中・華北・東北地区 (2018年3月)
  中国・華東地区 (2018年3月)
  中東欧 (2018年2月)
  西欧 (2017年12月)
  インド (2017年9月)
  北米 (2017年8月)
  ASEAN (2017年8月)
  メキシコ・ブラジル (2017年6月)

 

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