ホンダ シビック分解調査:ADAS(先進運転支援システム)

Bosch製の単眼カメラとミリ波レーダーを採用したHonda SENSING

2018/08/07

概要

ホンダ シビック 車両分解調査

 新型シビックは2017年9月に7年ぶりの復活をとげたホンダの名車である。プラットフォームは新型シビック向けに新開発されており、Cセグメントでのトップクラスをめざしている。

 ホンダ資料によると、安全装備はミリ波レーダーと単眼カメラによる車両前方状況認識と、ブレーキ、ステアリングの制御技術が協調した最先端の安全運転支援システム「Honda SENSING」を全車標準装備している。本レポートでは、シビックに搭載されている電子部品について安全機能部品を中心に解説を行い、ホンダの最新ADASシステムを知ることが目的である。

 



過去の分解レポート
トヨタ 4代目プリウス
(上)燃費40km/Lのために高効率化と軽量化されたパワートレーンユニットの進化(2016年2月)
(中)TNGA/シャシー・空力性能技術の進化(2016年3月)
(下)新プラットフォームTNGAの車体構造と遮音吸音材・制振材の技術(2016年3月)
132部品の写真集:TNGAのコンポーネント/部品の詳細写真と主要部品サプライヤー一覧(2016年5月)
トヨタ C-HR
ADAS(先進運転支援システム) (2018年3月)
BMW i3
 バッテリーシステム (2017年4月)
 CFRP 製ライフモジュール車体構造 (2017年4月)
 アルミニウム製シャシーフレーム (2017年10月)
トヨタクラウン
(Ⅰ)直噴V6 2.5Lエンジン「4GR-FSEエンジン」(2016年5月)
(Ⅱ)レクサス車と共通のFR高級車用シャシー技術(2016年5月)
(Ⅲ)車体構造と遮音吸音材 (2016年8月)
(Ⅳ)トヨタクラウン車両分解調査:写真集 (2016年9月)
ダイハツムーブ (2015年2/3月掲載)
(上) サプライヤーリストとシャシー/シート/電装関係部品
(中) 軽量化・小型化を追求したターボエンジンと3軸ギヤトレーンのCVT
(下) 直線的骨格で合理性を追求した車体構造
日産セレナ
自動運転技術プロパイロット(2017年2月)
VWパサート
1.4Lガソリンターボエンジン(2016年10月)


Honda SENSING

 現在単眼カメラによる画像認識技術においては、イスラエルのMobileye社の存在が大きい。一方で、部品サプライヤーと独自開発を行っているのは「Toyota Safety Sense P」と「Honda SENSING」である。2017年以前「Honda SENSING」のカメラは、日本電産エレシスの製品であったが、2017年の「シビック」及び「N-BOX」の全面改良から独Bosch製に採用されている。また、ミリ波レーダーについても富士通テン(現、デンソーテン)より調達していたが、同時期に独Bosch製に変更された。

  1. 衝突軽減ブレーキシステム(CMBS: Collision Mitigation Brake System)

    ミリ波レーダーと単眼カメラで前走車、対向車、歩行者との衝突回避を支援するシステム。 前走車両や歩行者、対向車両(二輪車と自転車を除く)と自車の間に5km/h以上の速度差があれば動作する。また、歩行者や対向車に対しては、自車の速度が80km/hまで作動。

  2. 歩行者事故低減ステアリング

    単眼カメラによる車線認識中に、車体が車線を逸脱して歩行者と衝突する恐れがあると判断された場合に、ステアリング操作を自動で行うことで、衝突事故を回避するシステム。

  3. ACC (Adaptive Cruise Control)

    設定された走行速度を守りつつ、前走車両を追従する機能。

  4. 車線維持支援システム(LKAS: Lane Keep Assistant System)

    単眼カメラが検知する車線にもとづき、自車が車線中央に留まるようにステアリングを制御する機能である。65-100km/h走行中に動作し、主に高速道路などでの運転負荷軽減を目的としている。

  5. 路外逸脱制御機能

    通常走行において車体が車線から逸脱しないようにステアリング制御により支援を行うシステムである。60-100km/h 走行中に動作し逸脱の恐れがある場合には、ステアリングの振動や、最終的には自動制御により逸脱を防ぐ。逸脱量が大きい場合にはブレーキ制御も介入する場合がある。

  6. 誤発進抑制機能

    停止中や10km/h以下での走行中に運転者による急なアクセル操作があった場合に、誤発進と判断して発進を抑制する機能である。このシステムでは、前車の動きとの関係を検知するためにミリ波レーダーが用いられている。

  7. 後方誤発進抑制機能

    停止時や10km/h以下の低速後退時に、ほぼ真後ろの近距離にある障害物を検知して、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んだ場合の急な発進を抑制。

  8. 先行車発進お知らせ機能

    ミリ波レーダーにより先行車の発進を検知しても、自車が動いていない場合に警告を通知するシステム。

  9. 標識認識機能

    運転者の道路標識見逃しを防ぐために、単眼カメラの映像から標識を認識し、モニターへ表示するシステム。

  10. オートハイビーム

    夜間などの暗い道をハイビームで走行中に、単眼カメラで前方の状況を検知し、前走車や対向車を検知するとロービームに自動的に切り替わる機能。



前方ミリ波レーダー

(資料:本田技研工業)

 Honda SENSINGは、フロントグリル内に設置したミリ波レーダーと、フロントウインドウ内上部に設置した単眼カメラの特性が異なる2種類のセンサーで構成されたシステムである。ミリ波レーダーは、さらに性能を向上させ、対象物体の位置や速度だけでなく、検知が難しいとされてきた電波の反射率が低い歩行者まで検知対象を拡大。また、単眼カメラは車両前方約60mまでの歩行者や対象物体の属性や大きさなどを識別し、より精度の高い認識を可能とした。

 

  本ミリ波レーダーは、Bosch製の76-77GHzレーダーで、アンテナ及び制御基板と、電源基板の2つの基板から構成されている。Bosch製レーダーは、4つの独立した受信チャネルとデジタルビームフォーミング(DBF)を備えたバイスタティックマルチモーダルレーダーである。これらの技術により、異なる方向に対して独立したアンテナでミリ波レーダーを構成することができ、角度測定の精度が向上し状況に応じてレーダーの視野を調整することが可能となる。

 

(資料:Bosch Technical Data)

 主アンテナを±6度の狭角メインローブに集中させることで、前方車両との車間距離最大160mまでの長距離に対応し、より高速で優れた性能を発揮するとともに、隣接するレーンの車両との干渉を最小限に抑える。エレベーションアンテナにより、近距離では±42度の開き角が得られ、歩行者を早期に検出することが可能。

 また、仰角アンテナ(画像内の赤い領域)を使用することで、追加の上向き仰角ビームを生成する。この追加のビームにより、上方の物体を確実に分類し、車両がその下を走行することができるか否かを判定するために、検出された全ての物体の高さを計測することができる。

 

 アンテナ部のRFフロントエンドは、Infineon製のVCO内蔵トランスミッター(TX)とレシーバー(RX)の2つのチップセットによって構成される。TX側のIC[RTN7735PL]は、TXとVCO(電圧制御発振器)を統合することで、部品数を削減しているのが特徴である。なお、トヨタC-HRで採用されているユニットのContinental製では、TX、RX、VCOの3チップ構成となっている。
 制御部は、STMicroelectronics[A267BB]とNXP製MCU[SC667226MMMA]の2チップ構成である。

 

 シビックで採用されているBosch製では、アンテナ部を制御部+電源部に分けた構成となっている。電源部は、Bosch製PMIC[40203]を中心に内部電源を生成している。なお、トヨタC-HRで採用されているContinental製のレーダーは、アンテナ部+制御部及び電源基板の組み合わせである。
 通信ブロックは、Infineon製High Speed CANトランシーバーIC[TLE6251-2G]とCAN+FlexRay内蔵のBosch製PMIC[40203]を中心に2系統のCAN通信を備えている。



フロント単眼カメラ

 ホンダは当初、日本電産エレシス製のカメラを採用していたが、2017年の「シビック」と軽自動車「N-BOX」に実施した全面改良の際に、ドイツ自動車部品大手のBosch製に変更した。Bosch製の単眼カメラは、日本の自動車メーカーとしては、ホンダが初採用となる。

 

カメラ内部
カメラ
寸法サイズ 85mm
130mm
高さ 31mm
重量 204.5g
組付方法 カメラBRKTと勘合

 

シビックのADAS機能とC-HRのADAS機能を比較した表を以下に示す。

機能 C-HR Civic
センサー メーカー名 Denso/Continental Bosch
単眼カメラ 前方 前方
ミリ波レーダー(77GHz) 前方(モーター式) 前方(DBF式)
ミリ波レーダー(24GHz) 後方 -
ソナー 前後 前後
自動ブレーキ 対歩行者
対自転車
対車両
前方急発進制御
後方急発進制御
車線キープ ステアリング制御あり
ステアリング制御なし - -
車線逸脱 ステアリング制御あり -
ステアリング制御なし -
ブラインドスポットモニタ -
後方走行車検知 -
ACC
ハイビーム コントロール
標識読み取り
先行車発信警報
*DBF: Digital Beam Forming

 

アンテナの角度調整を行うボルト部分(Bosch製)

 

 シビックには後方ミリ波レーダーがないため、BSW(後方からのクルマの接近)に対する検知機能はない。また、車線逸脱時には、トヨタC-HR ADASではステアリング制御によるアシスト機能はないが、シビックではステアリング制御が機能的に介入する。但し、2017年12月に発売されたトヨタ アルファード及びヴェルファイアからは、「車線逸脱」に対するステアリング制御機能が追加されている。ミリ波レーダーのハード面の違いは、アンテナの角度調整にデンソー及びContinental製はモーターを採用しているが、Bosch製は取り付けの際に2個のボルトで角度調整を行い、それを基準にしてDBF方式によりデジタル制御でアンテナ角度の調整を行なっている。

 

DBF (Digital Beam Forming)方式

 複数のアンテナを規則に沿って配列し位相を制御する。同一方向から到達する信号を強め合うように調整することで指向性を高める方式。



ナビゲーション

  シビックは現在、ナビゲーションとして、3つのモデルを選ぶことができる。


スタンダード インターナビ7インチ
Panasonic製

ベーシック インターナビ7インチ
JVC Kenwood製

エントリー インターナビ7インチ
JVC Kenwood製

(資料:本田技研工業)

 今回の分解調査対象車には、「エントリー インターナビ7インチ」(VXM-184Ci)が装着されていた。
この商品は、JVC Kenwood製となる。このナビゲーション製品の主な機能及び仕様は以下の通りである。

 

エントリーモデル VXM-184Ci機能

ナビ機能 フラッシュメモリー8GB、7.0型 W-VGA、抵抗膜式タッチパネル、インターナビリンクアップフリー、トップメニューカスタマイズ、多言語対応
AV機能 CD(CD-R/RW)、SDカード(SDXC対応:音楽/動画)、Bluetooth(オーディオ)、USB(オプション、音楽/動画)、iPod/iPhone対応(オプション)
車両連携機能 Turn by Turn表示*1、パーキングセンサー表示、天気予報表示
オプション リアワイドカメラシステム、ETC2.0車載器、ETC車載器、ドライブレコーダー(ナビ連動タイプ)、ハイグレードスピーカーシステム、USB接続ジャック/USB接続コード
*1:ナビゲーションシステムと連動して、曲がるべき交差点の手前などに差し掛かると、マルチインフォメーションディスプレイやサブディスプレイに、進行方向を自動的に割り込み表示する機能。

 

エントリーモデル VXM-184Ciの主な仕様

モニター部 駆動方式:TFTアクティブマトリクス方式/画面サイズ:7.0型 W-VGA/画素数:1,152,000画素(800×480×3)
NAVI部 GPSアンテナ:マイクロストリップ平面アンテナ/GPSアンテナ外形寸法:約33(W)×12.8(H)×36(D)mm
受信周波数:1575.42MHz(C/Aコード)/受信方式:パラレル16チャンネル
オーディオ部 最大出力:50W×4/負荷インピーダンス:4~8Ω
CD部 対応ディスク:CD,CD-R,CD-RW
AM部 受信周波数:522~1629kHz/音声:モノラル
FM部 受信周波数:76.0~99.0MHz/音声:ステレオ
その他 外形寸法(突起部を除く):約191(W)×111.5(H)×181(D)mm

 

特徴としては以下の通りである。

  • CDドライブ(DVDなし、CDリッピングなし)
  • 地デジチューナーなし
  • 徹底したコストダウンで価格を抑えたエントリーナビ
  • 地図表示の4か国語対応
  • 地図拡大/縮小のピンチ操作にも対応
  • スクリーンの逆チルトに対応
  • ケンウッド彩速ナビ同等のスムーズな操作


コネクティビティー

 シビックにラインナップされているナビゲーションは、最廉価機種のエントリーモデルまでもインターナビ・プレミアム対応である。トヨタC-HRの最廉価モデルには、コネクティビティー機能(T-Connect)の対応はなかったが、2018年6月より全グレードでの車載通信機器(DCM)の標準搭載が発表された。
  ホンダのインターナビ・プレミアムでは、以下の情報が専用の通信機器を介して提供される。

  • インターナビ・交通情報表示
  • インターナビ・防災情報
  • 目的地付近の気象情報表示
  • 駐車場セレクト表示
  • インターナビ・ルート選択
  • リンクフリー 通信機器

 

 JVC Kenwood製 エントリー モデルのナビゲーション製品は、以下の機能ブロックで構成されている。

 

電源/アナログ回路基板 GPS/Bluetooth/USB 基板
電源/アナログ回路基板 GPS/Bluetooth/USB 基板

 

プロセッサ基板
プロセッサ基板

 

全体として

  シビックに搭載されている安全機能部品は、Honda SENSINGの基本的な機能を備えている。単眼カメラとミリ波レーダーによるセンシングを積極的に制御系と連携させることで、ステアリング制御まで対応した上級グレードの機能を実現している。

------------------
キーワード
分解、ホンダ、Civic、シビック、Honda SENSING、ADAS、ミリ波レーダー、カメラ

<自動車産業ポータル マークラインズ>