インドの日系サプライヤー:排ガス規制の強化やEV政策などに対応

インド部品メーカーとの合弁・提携による事業強化も

2019/11/05

要約

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インドの自動車工場マップ(クリックすると拠点マップが開きます)

  インドの自動車市場は2018年下期から低迷し、2019年1~9月の生産台数は351万台(前年同期比12.9%減)、新車販売台数は284万台(同15.9%減)の大幅減となっている。減退要因として、流動性逼迫、モンスーン降雨の不順、保険コストの上昇、燃料費のアップ、新たな排出ガス規制、政策の不確実性などが挙げられている。政府は2019年8月に自動車部門活性化のための施策を講じたが、回復には至ってない。

  一方で、インド政府は乗用車への排ガス規制を2020年4月からBS-VIに引き上げるほか、安全規制の強化も進めている。また、FAMEスキーム(Faster Adoption and Manufacturing of (Hybrid &) Electric Vehicles:(ハイブリッドと)電気自動車の導入と生産の加速)のフェーズIIをスタートさせた。二輪車については2025年、三輪車については2023年に内燃エンジンの使用禁止を実施する。


  こうした中、スズキはBS-VI準拠の車種導入を開始。主要民族メーカーもエンジンのBS-VI認可取得を開始。EV普及促進政策との関連では、トヨタとスズキがハイブリッド車を始めとする車両の相互供給で基本合意。Maruti Suzukiは2020年までに電気自動車を導入する計画の一環として、公道テスト用の電気自動車の試作車を公表した。

  生産体制強化では、Suzuki Motor Gujaratが第2工場の建設を完了し、2019年1月からSwiftの生産を開始。現代自動車は、タミル・ナドゥ州の工場の生産能力を拡大すると共に、同工場で電気自動車の生産を開始する計画。この他、MG Motorと起亜自動車が工場建設に着手し、PSA Groupも新工場を立ち上げるなど、OEM各社が生産能力強化を進めている。


  OEM各社からの受注増や増産計画に対応して、日系部品・素材メーカーも生産能力の拡充、インドへの新規進出などを進めている。豊田合成はエアバッグの新工場、西川ゴムはシールの第3工場、日本精工は電動パワーステアリング(EPS)の新工場を稼働させ、ASTIは車載電装品の新工場建設、ハイレックスはインドの3工場で設備増設を進めている。素材では、三菱ケミカルが買収先工場に熱可塑性エラストマーの製造設備を新設、日本製鉄がインド鉄鋼4位のEssar Steelの買収を進めている。

  電動化関連では、パナソニックがEV向けステーションを設置し、充電網への参入を検討。古河電工が電動化市場への商圏拡大を計画。インド部品メーカーとの合弁、提携により生産・販売・開発体制を強化する動きも多い。


  以下は、インドにおける日系部品メーカーの最近動向である(収録対象は、2019年9月までの約1年3カ月間)。

 

新規進出(生産品目)

新会社・工場設立 大紀アルミニウム(アルミ二次合金地金)、会宝産業(自動車の部品・素材リサイクル事業の合弁会社)、THK(直動部品「LMガイド」)、トピー工業(合弁会社でスチールホイール生産開始)、日本製麻(フロアマット)、日本製鉄(Essar Steel買収)、パナソニック(EV充電網)、村上開明堂(バックミラー)

 

生産能力増強(生産品目、*は新品目を追加)

設備・建屋の増設 日本特殊陶業(点火プラグ、*二輪車用の酸素センサー:建屋増設)、ハイレックスコントロールケーブルウインドレギュレーター:3工場で設備増設、うち1工場は新棟建設)
第2工場以上建設 関西ペイント(自動車用塗料:新工場建設)、TPR(パワートレイン部品:新工場ないし設備増強)、豊田合成(エアバッグ、ハンドルなど:5つ目の工場建設)、西川ゴム工業(自動車用シール:第3工場建設)、日本精工(電動パワーステアリング:4つ目の工場建設)、武蔵精密工業(四輪車部品用の工場建設)
新会社設立 ASTI(車載電装品:2つ目の生産拠点設立)

 

事業強化(品目、新たな事業など)

子会社化・合弁・買収 ニチリン(現地子会社を合弁会社に:ホース)、神戸製鋼所(合弁会社の完全子会社化:タイヤ・ゴム機械)、山陽特殊鋼(合弁会社を子会社化:特殊鋼製品)、DIC (インド塗料用樹脂メーカー買収:自動車用塗料向け樹脂)、古河電気工業(合弁会社の経営権を取得:ワイヤーハーネス、電動化部品)、三菱ケミカル(インド企業を買収し、熱可塑性エラストマーを自社生産)
営業・開発拠点 東洋紡(インド南部に営業拠点分室設置:エンジニアリングプラスチック)、トヨタ紡織(インド北部に営業事務所を開設:シート)
解散 田中精密工業(現地子会社解散、タイの子会社で事業推進)

 

関連レポート:
インド:新車販売が低迷、排出ガス規制BS-VIの導入 (2019年9月)
Future Mobility Show 2019:インドにおけるクリーンで持続可能な将来のモビリティ (2019年4月)
国家自動車政策(NAP):インド自動車産業の全体展望 (2019年1月)


<日系サプライヤーの海外事業動向>
  米国・カナダ (2019年9月)
  ASEAN (2019年8月)
  中国全般 (2019年6月)
  中国・華東地区 (2019年5月)
  中東欧 (2019年6月)
  西欧 (2019年5月)
  インド (2018年11月)
  メキシコ (2018年10月)

 

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