インド:新車販売が低迷、排出ガス規制BS-VIの導入

政府主導で電動化を推進、新規参入メーカーの動向

2019/09/26

要約

  インドの自動車産業は同国GDPの7.1%を占め、直接および間接に約3,700万人の雇用を支えている。その売上高は製造業のGDPのほぼ半分に相当し、インドのGST(物品サービス税)収入の11%を占めている。

  2018年にインドの自動車市場は世界第4位の規模になった。生産台数で見ると、インドは大型トラックで世界第3位、乗用車では第4位、トラクター、二輪車、三輪車では世界最大、バスでは第2位の生産国である。インド政府は2020年には日本を抜いて中国と米国に次ぐ世界第3位の自動車市場になると予想している。

 

新車販売が低迷、悪化傾向は加速

  2018年度の自動車販売は順調なスタートを切ったが、第1四半期(2018年4~6月)が終わると減速し始め、その後は殆どの月で数パーセントの減少となった。その要因としては、流動性逼迫、モンスーン降雨の不順、保険コストの上昇、燃料費のアップ、新たな排出ガス規制、政策の不確実性、そして国内で拡大するシェアード・モビリティの影響が挙げられる。2019年度に入ると、選挙、信用の逼迫、非銀行系金融機関(NBFC)の流動性不安、およびモンスーンシーズンの遅れと降水不足により、悪化傾向は加速している。

  2018年度は自動車業界にとって排出ガス規制BS-VI導入へ向けた移行の時期でもあった。インドはBS-Vの段階をスキップし、2020年4月1日にBS-VI規制を施行する。OEMおよび部品メーカーは、製品をこの新しいBS-VI規格に合わせるため、設計変更投資が必要になる。新規制への移行はOEMの生産コストを増加させ、それは消費者にとって車両価格の上昇につながる。

  2019年8月23日、インド財務相は自動車セクター活性化のための諸施策を実施した。BS-IVへの適合性をめぐる混乱に対処すべく、2020年3月31日までに購入されたBS-IV車両はその登録期間中は適合扱いにするとした。また需要を後押しする方策として、政府部門の旧型車を新車に代替することを禁止していた法令も解除される。加えて買い換え促進策とGSTの見直しも検討されている。

Vehicle production, domestic sales, and exports for India Indian passenger vehicle sales by segment
インドの生産・国内販売・輸出台数 インド乗用車セグメント別販売台数

(出典:各種発表および情報ソースよりマークラインズ作成)

 

電動化とモビリティ

  2018年度に、インド政府はFAMEスキーム(Faster Adoption and Manufacturing of (Hybrid &) Electric Vehicles:(ハイブリッドと)電気自動車の導入と生産の加速)のフェーズIIをスタートさせた。同スキーム実施のための支出として、3年間で1,000億ルピー(約1,510億円)が計上されている。同施策は手頃な価格で環境にも良い公共交通機関を広く提供することを主眼としたもので、主に公共交通に供される車両、あるいは商用登録の車両を対象としている。

  FAME-IIスキームを始めとするインド政府が検討する各種施策の表明を受けて、OEMおよび部品サプライヤー各社は電気自動車やEV向け部品製造への準備を進めており、政府機関、および民間企業からはEVに対応するインフラストラクチャーの開発計画が発表されている。

  MG Hectorや現代Venueが発売され、インド市場はコネクテッド・モビリティの時代に入った。Mahindra、Volkswagen、現代などの主要OEMは国内のシェアード・モビリティ・プロバイダーや自動運転車に係わる企業との提携計画を発表している。

 

新たなOEMの参入

  2018年度は、MG Motor、起亜などのOEMが新たにインド市場へ参入する年でもあった。 PSAグループもインド参入計画を発表した。

  上海汽車(SAIC Motor)は、MGブランドでインド自動車市場へ参入する計画を発表し、2019年5月にはコネクテッドSUVであるHectorの最初の量産バージョンを市場投入した。MG Motorはまた、グローバル市場向けの完全電動SUV、MG eZSを2019年12月までにインド市場で発売する計画。

  起亜自動車は2019年6月、インドでコンパクトSUVのSeltosを発表した。起亜の2カ所の製造拠点(アーンドラ・プラデシュ州Anantapur地区、並びに韓国の光州)で生産され、2019年後半からグローバルに販売開始される予定。

  PSAグループとAVTEC Ltd(CK Birlaグループ傘下)は2018年11月、タミル・ナドゥ州Hosurで新規に立ち上げた工場の開所式を開催した。2019年2月、PSAグループはインド市場へ参入するブランドはCitroenとなると発表した。 Citroenにはグローバル市場を視野に置く新型車のラインナップがインド市場向けに設定される予定である。

 

関連レポート:
Future Mobility Show 2019:インドにおけるクリーンで持続可能な将来のモビリティ (2019年4月)
国家自動車政策(NAP):インド自動車産業の全体展望 (2019年1月)
インドにおける電気自動車とEVエコシステムの展望 (2018年8月)
インド:国内販売376万台、2030年までに電動車普及を目指す (2018年3月)

 

このレポートは有料会員限定です。 残り 9 章
無料会員登録により、期間限定で続きをお読みいただけます。