中東欧の日系サプライヤー:欧州メーカーからの受注増に対応
環境・燃費規制に対応する電動車向け部品・素材の生産能力を増強、グローバル拠点化の動きも
2020/12/16
- 要約
- 中東欧:新工場の建設・稼働(河西工業、キャタラー、GSユアサ、ジーテクト、日本精機、トーヨータイヤ、日本電産)、買収(アルファ、帝人)など
- 中東欧:生産能力増強(アルファ、クラレ、ブリヂストン、東レ)など
- トルコ:買収で生産体制強化(住友化学)
- ロシア:生産拠点建設(三井化学)、撤退(ユニプレス)
要約
中東欧の自動車工場マップ (クリックすると拠点マップが開きます) ロシアの自動車工場マップ / トルコの自動車工場マップ |
LMC Automotiveによると、2019年の西欧17カ国のライトビークル販売台数は前年比0.8%増の1,628万台となったが、中東欧15カ国(トルコ、ロシアを含む)は同2.7%減の412万台。2020年1-11月累計では、新型コロナウイルス感染の影響から西欧が前年同期比25.7%減の1,113万台、中東欧は同6.4%減の345万台と低迷している。
日系サプライヤーはこうした状況下にあっても、欧州自動車メーカーからの受注増に対応して中東欧で新工場の稼働開始や建設計画、設備増強、買収による生産体制の確保を進めている。EVなど電動車関連の需要増に対応して、ハンガリーではGSユアサのリチウムイオンバッテリーの新工場稼働、東レのリチウムイオン電池用セパレータフィルムの生産設備新設などが見られる。スロバキアではパナソニックが車載用フィルムコンデンサーの生産を開始、セルビアでは日本電産がEV用駆動モーター新工場の建設計画を明らかにした。
自動車メーカー各社の環境・燃費規制対応に伴う部材の需要増ならびに軽量化に関連する動きとして、キャタラーはチェコで排ガス触媒の新工場を稼働、ジーテクトはスロバキアでアルミ車体部品の新工場を稼働した。化学メーカーの動向も活発で、帝人がチェコの自動車向け複合材料部品メーカーを買収、住友化学はトルコで現地樹脂コンパウンドメーカーを買収、三井化学はロシアで自動車の断熱材などに使われるポリウレタンフォーム用原料の生産拠点を建設する。
この他、日本精機はポーランドのヘッドアップディスプレイ子会社で量産を開始。アルファはチェコの鍵部品工場の生産能力を増強するとともに、スロバキアの塗装部品メーカーを買収して欧州でのドアハンドル事業への早期参入を計画している。
以下は、中東欧における日系サプライヤーの最近の動向である。(収録対象は2019年5月からの約1年半)
中東欧での日系サプライヤーの動向
東欧
新工場建設、買収 | ・アルファ:スロバキアの塗装部品メーカーSPPP社グループを買収し、ドアハンドル事業に参入 |
---|---|
・河西工業:スロバキアのドアトリム、ボディサイドトリムなどの新工場が2019年9月に量産開始 | |
・キャタラー:チェコの自動車用排ガス触媒の新工場が2020年に稼働 | |
・GSユアサ:ハンガリーのエンジン始動用Li-ionバッテリー工場が稼働、今後は自動運転システム向けも | |
・ジーテクト:スロバキアのアルミ車体部品工場が2019年9月に稼働 | |
・帝人:チェコの自動車向け複合材料部品メーカーを買収 | |
・トーヨータイヤ:セルビアに欧州初のタイヤ工場を建設、2022年に稼働計画 | |
・ニチリン:自動車用ホースの生産をスペイン子会社からブルガリアの現地企業に委託へ | |
・日本精機:ポーランドのヘッドアップディスプレイの子会社が2020年末に量産開始 | |
・日本電産:セルビアにEV用駆動モーター工場の建設計画、2023年をメドに生産開始 | |
・パナソニック:スロバキアの工場で2019年4月に車載用フィルムコンデンサーの生産を開始 | |
生産能力・体制強化 | ・アルファ:チェコの鍵部品工場の生産能力増強へ、防犯に必要な鍵の多様化に対応 |
・クラレ:チェコで合わせガラス用中間膜の生産体制拡充 | |
・GMB::ルーマニアのウォーターポンプ新工場が完成し移転、2020年に稼働、切削・鋳造を内製化 | |
・シークス:ハンガリー工場の生産ラインを増設し、車載電子基板への部品実装のEMS事業を拡大 | |
・東レ:ハンガリーにリチウムイオン電池用バッテリーセパレータフィルムの生産設備新設 | |
・ブリヂストン:ハンガリーの乗用車用タイヤ工場を2019年に増強、倉庫も増設 |
トルコ
新工場建設 | ・住友化学:トルコの樹脂コンパウンドメーカーを買収し事業体制強化 |
---|
ロシア
生産拠点建設 | ・三井化学:自動車の断熱材などに使われるポリウレタンフォーム用原料の生産拠点建設 |
---|---|
撤退 | ・ユニプレス:車体用プレス部品などを扱う現地子会社を解散へ |
関連レポート:
新型コロナウイルスが自動車産業に与えた影響 (2020年10月)
主要国の電動パワートレイン市場予測 (2020年10月)
欧州市場:政府の需要喚起策を通してEV・PHVの普及促進 (2020年7月)
<日系サプライヤーの海外事業動向>
中国全般 (2020年10月)
中国・華東地区 (2020年9月)
ASEAN (2020年8月)
西欧 (2020年4月)
インド (2019年11月)
米国・カナダ (2019年9月)
中東欧 (2019年6月)
メキシコ (2018年10月)
無料会員登録により、期間限定で続きをお読みいただけます。