欧州市場:政府の需要喚起策を通してEV・PHVの普及促進
コロナ禍で2020年の新車販売は大幅減、CO2排出規制の強化、Brexitへの対応
2020/07/21
- 要約
- 乗用車販売台数:2020年1-5月は前年同期比42.8%減
- コロナ禍で欧州での生産が240万台減少
- 各国政府は自動車産業への支援策で電動化を後押し
- CO2排出規制:2021年目標は95g/km、2030年は2021年目標比37.5%減
- ディーゼル車の販売比率は2019年に約3割に低下
- 2019年のEVの販売比率は2.3%、PHVは1.3%、HVは5.9%
- Brexit:英国は2020年1月末にEUから離脱、EUとのFTA交渉は難航
- LMC Automotive 販売予測:西欧の販売台数は2020年に26%減少、2023年まで1,600万台への回復は見込めず
要約
欧州30カ国の2019年の乗用車販売は前年比1.2%増の1,581万台。2018年9月に導入された新燃費測定基準WLTPの影響で年頭から販売低迷が続いていたが、2019年末にかけて持ち直し、前年を上回った。しかし、2020年1-5月は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、販売台数は前年同期比42.8%減と大幅に減少。欧州各国でロックダウンが実施され、自動車工場の休止により欧州連合(EU)内で5月末までに約240万台の減産となった。工場の再開後も稼働率はまだ従来のレベルに達していない。
各国政府は2020年5-6月に経済支援策を発表。自動車産業に対しては、需要喚起策を通してEVやPHVに購入補助金を支給するなど、電動化を推進する意図が見える。欧州自動車工業会(ACEA)は、2020年6月時点で2020年の販売台数は前年比25%減となると予測している。
EU域内で販売する乗用車の新車のCO2排出規制は、従来の130g/kmから2021年には95g/kmに厳格化される(2020年から段階的に導入)。CO2排出量の少ないディーゼル車の販売比率は2019年に約3割に低下。電動車の販売(EV、PHV、HV)は10%未満にとどまっている。各自動車メーカーは2021年のCO2排出規制目標を達成するため、EVやPHVなど電動車のラインアップ拡大を急いでいる。
2020年1月末に英国はEUを離脱した。ただし、同年12月末までは移行期間として、英国は域内での通関手続きなし・関税ゼロの貿易を継続する。この間にEUとFTA協定を結ばなければ、2021年から双方の貿易に関税が発生し、経済が混乱する可能性がある。EUは税制・雇用・政府補助金等についてEUルールに準拠すべきとし、それを拒否する英国との交渉は難航している。
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<LMC Automotive レポート>
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