トヨタ C-HR 分解調査:ADAS (先進運転支援システム)

ミリ波レーダーと単眼カメラを採用したToyota Safety Sense P

2018/03/30

概要

トヨタ C-HR 車両分解調査

  トヨタ C-HRは2016年12月14日に発売されたSUVの世界戦略車である。2015年発売の4代目プリウスから採用を始めた新プラットフォーム「TNGA」(TNGA-Cプラットフォーム)のホイールベースを短縮したプラットフォームを採用している。安全装備としては、SRSエアバッグ、SRSサイドエアバッグ、SRSカーテンシールドエアバッグを全車に標準装備したほか、衝突被害軽減ブレーキなど複数の安全機能をパッケージングしたToyota Safety Sense P を全車に標準装備している。

  本レポートでは、C-HRに搭載された電子部品について安全機能部品を中心に解説を行い、トヨタの最新ADASシステムを紹介する。

 今回のトヨタ C-HR車両分解調査は、2018年1月にひろしま産業振興機構のベンチマーク活動として実施された。マークラインズは、ひろしま産業振興機構と出版権設定に関する契約を締結し、ベンチマーキングレポートの販売を行っている。

 



過去の分解レポート
トヨタ 4代目プリウス
(上)燃費40km/Lのために高効率化と軽量化されたパワートレーンユニットの進化(2016年2月)
(中)TNGA/シャシー・空力性能技術の進化(2016年3月)
(下)新プラットフォームTNGAの車体構造と遮音吸音材・制振材の技術(2016年3月)
132部品の写真集:TNGAのコンポーネント/部品の詳細写真と主要部品サプライヤー一覧(2016年4月)
BMW i3
 バッテリーシステム (2017年4月)
 CFRP 製ライフモジュール車体構造 (2017年4月)
 アルミニウム製シャシーフレーム (2017年10月)
トヨタクラウン
(Ⅰ)直噴V6 2.5Lエンジン「4GR-FSEエンジン」(2016年5月)
(Ⅱ)レクサス車と共通のFR高級車用シャシー技術(2016年5月)
(Ⅲ)車体構造と遮音吸音材 (2016年8月)
(Ⅳ)トヨタクラウン車両分解調査:写真集 (2016年9月)
ダイハツムーブ (2015年2/3月掲載)
(上) サプライヤーリストとシャシー/シート/電装関係部品
(中) 軽量化・小型化を追求したターボエンジンと3軸ギヤトレーンのCVT
(下) 直線的骨格で合理性を追求した車体構造
日産セレナ
自動運転技術プロパイロット(2017年2月)
VWパサート
1.4Lガソリンターボエンジン(2016年10月)


Toyota Safety Sense P (Lexus Safety System+)

  「Toyota Safety Sense P」はデンソーが開発を担当し、2015年8月のランドクルーザーのマイナーチェンジで初搭載された。「Toyota Safety Sense C」のレーザーレーダーからミリ波レーダーに変更され、以下の4つの機能で構成される。C-HRではContinental製ユニットが採用されている。

 

Toyota Safety Sense Pの機能
プリクラッシュセーフティシステム   進路上の先行車や歩行者をミリ波レーダーと単眼カメラで検出し、衝突が予測される場合は警報を発して回避操作を促す。約30km/hから80km/hで走行中にブレーキを踏むとアシスト機能が働き、ブレーキを踏めなかった場合は自動ブレーキが約10km/hから80km/hの車速域で作動し、約30km/hまで減速させる。また、「Toyota Safety Sense C」には搭載されていない歩行者検知機能を備えている。
レーダークルーズコントロール   ミリ波レーダーと単眼カメラを使用するシステムにより先行車の速度と同調させる全車速追従機能を備える。
レーンディパーチャーアラート   道路上の白線を単眼カメラが認識し、ドライバーがウィンカー操作を行わずに車線を逸脱する可能性がある場合、ブザーとディスプレイ表示による警報を発する。さらに電動パワーステアリングを制御することで、車線逸脱を回避しやすいようにドライバーのステアリング操作をサポートする。
オートマチックハイビーム   先行車や対向車などを認識し、ハイビームとロービームを自動で切り替えるシステム。


前方 ミリ波レーダー

(資料:トヨタ)

  C-HRではADAS機能実現のために、ミリ波レーダーと単眼カメラの組み合わせを採用している。ミリ波レーダーは車両フロント中央のエンブレム背面に装着されており、単眼カメラはフロントガラスに装着されている。77GHzのミリ波レーダーを搭載、遠方の先行車検知に有効であり、雨、霧、降雪などの周辺環境からの影響を受けにくい。

 

 

  本ミリ波レーダーはContinental製の76-77GHzレーダーで、アンテナ基板と制御基板の2つで構成されている。

 

  アンテナ基板上のRFフロントエンドは、NXP製のトランスミッター (TX)、レシーバー (RX)、VCO (電圧制御発振器) の3つのチップデバイスから構成されている。

 

  制御基板は、NXP製の車載用MCU [SC5773] (32bit Power Architecture) を中心に各制御を行っており、内部電源ブロックは、Texas Instruments製の電源IC [TPS65310A-Q1] を中心に内部電源を生成、通信ブロックは、2個のInfineon製High Speed CANトランシーバーIC [TLE8250] を中心に2系統のCAN通信を備えている。

  ミリ波レーダーにおいては、歩行者を検知するSRR (Short Range Radar、短距離レーダー) 用途として、24/26GHz帯 (UWB、帯域4GHz) の準ミリ波レーダーが広く採用されているが、衛星通信との干渉を避けるため、送信パワーが低く抑えられており、長距離を検知できない。そのため、より感度の高い77GHzのレーダーが高級車から導入され始めている。24GHz帯のミリ波レーダーに比べ検知距離200m以上の長距離・狭角のLRR (Long Range Radar、長距離レーダー) を実現できることが特徴。C-HRにおいても、ADAS機能高度化のために77GHz帯のミリ波レーダーが採用されている。

 



フロント単眼カメラ

  Toyota Safety Sense Pシステムで 重要となるもう1つのデバイスは単眼カメラである。本単眼カメラは、ルームミラー前方のフロントガラス (車室内) に設置されている。

 

  このユニットは、Continental製であり、画素数1.25メガピクセル (推定) のカメラが搭載されている。

  カメラシステム全体のコントロールは、ST Micro社の32bitマイクロコントローラーが制御しており、画像処理については、Texas Instruments製のDSP (digital signal processor) にContinental独自の画像処理技術が搭載されている。

  多くの大手自動車メーカーがMobileyeの画像処理技術を採用する中、トヨタとMercedes、スバルはそれぞれ独自の技術をサプライヤーと共に構築している。



後方 ミリ波レーダー

  後方ミリ波レーダーは、ボディ後方左右のリアバンパー内にそれぞれ1つずつ装着されている。24GHz帯のレーダーにより、車線変更時の後方確認をアシストする ブラインドスポットモニター (BSM) 機能と後退時の死角を検知し、注意を喚起する リヤクロストラフィックアラート (RCTA) 機能を提供する。

ブラインドスポットモニター (BSM) リヤクロストラフィックアラート (RCTA)

(資料:トヨタ)

 

  隣の車線を走る車両をレーダーで検知。ドアミラーでは確認しにくい後側方エリアに存在する車両に加えて、隣接する車線の最大約60m後方までモニターし、急接近してくる車両も検知。車両を検知するとドアミラーに搭載されたLEDインジケーターを点灯。その際、ウインカーを操作するとLEDインジケーターが点滅し、より注意を喚起する

リアバンパーサイドの搭載部分 ブラインドスポットモニター (BSM)

 

  このユニットはContinental製の24GHzレーダーで、アンテナ基板と制御基板の2枚で構成されている。BSMユニットは裏面が電波吸収素材でシールドされており、表面が樹脂モールドとなっている。アンテナ基板は、この樹脂モールド側に装着されている。

ブラインドスポットモニター (BSM) ユニット構成 ミリ波受発信基板 (表) ミリ波受発信基板 (裏)

 

  アンテナ表側には、ミリ波レシーバーICとして Infineon製BGT24AR4、トランスミッターICとして同じくInfineon製BGT24AT2が搭載されている。

 

 このレーダー製品は大きく4つの機能ブロックから構成されている。

  • RFフロントエンド
    トランスミッター (TX) 及びレシーバー (RX) に使われている半導体デバイスはいずれもInfineon製。TX側に使用されている BGT24AT2はVCO (電圧制御発信機) を統合することで、部品点数を削減している。
  • 制御ブロック
    このレーダー製品全体のシステムコントロールは NXPの32bit マイクロコントローラーが採用されている。
  • 内部電源ブロック
    Texas Instruments製の電源ICを中心に電源回路が構成されている。
  • 通信ブロック
    Infineon製のHigh Speed CANトランシーバーIC2個により、2系統のCAN通信を備えている。

 

 後方レーダーを用いたブラインドスポット表示は、1つのLEDを使用して導光体を経由して表示部を照らす方式である。

ブラインドスポットモニター (BSM) の構成部品


ソナー

  C-HRでは、車両前方に4つ、後方に4つの合計8個のソナーセンサーが装備されている。車庫入れなどの低速(約10km/h以下)での運転時、超音波センサーが車両前方コーナー部や車両後方の障害物との接近を感知。障害物との距離と位置をマルチインフォメーションディスプレイに表示し、同時にブザーでドライバーに知らせるシステムである。

C-HRのフロントバンパー内 ソナーセンサー (赤丸内 4箇所) 8個のソナーセンサーを装備 (資料:トヨタ)
ソナー ソナー

 

Parking Assist Module

  C-HRに使用されている超音波センサーはValeo製のセンサーである。8個のセンサーは「Park Assist Module」と記載されているユニットに接続され、駐車支援機能のないクリアランスソナー&バックソナー警報機能として使用されている。

 



コンビネーションメーター

  C-HRのコンビネーションメーターは、機械式メーターを主とし、センターに高精細な4.2インチTFTカラー液晶画面をメーター内に搭載している。液晶モジュールは中国TRULY製である。

 

 基板は両面実装基板を採用しており、機械式メーター部もこの基板上に搭載され、モジュール化されている。

 

  メーター基板裏側には、機械式メーターを動かすためのステッピングモーターや液晶モジュールへの表示制御を行うマイコン、その他必要となる電源回路やスピーカーなどが搭載されている。液晶制御用のマイコンは、ルネサス製V850ファミリの32ビットマイコンが搭載されている。

 



ナビゲーション

  C-HRのナビゲーションオプションは、現在3つのモデルを選ぶことができる。いずれも、デンソーテン製 (旧富士通テン製)。


T-Connectナビ 9インチモデル

T-Connectナビ 7インチモデル

エントリーナビ 7インチモデル

(資料:トヨタ)

  今回の分解調査対象車には、「エントリーナビ 7インチ」が搭載されていた。

ナビゲーションユニット 外観 ナビゲーションユニット 内部
ナビゲーション制御基板 (表) ナビゲーション制御基板 (裏)

 

  エントリーモデルのこのナビゲーション製品は、電源基板、制御基板、CDドライブという3つの機能部位で構成されている。上級機との主な違いは、地上波デジタルTVが1Segである点と、T-Connect未対応の点である。

  ナビゲーション機能のメインコントローラーとしては、NXP製のiMX6プロセッサーが使用されている。iMX6は高速設計を必要とするDDRやFlashメモリと共に、モジュール化された基板が搭載されている。

 

全体として

  トヨタ C-HRに搭載されている安全機能部品は、上級車種に比べても見劣りのしない機能を搭載していると言える。制御系との連携は少ないが、追従機能やレーンディパーチャーアラート、ブラインドスポットモニターやリヤクロストラフィックアラートなどの基本的な機能が備わっている。また、その機能は各車種への横展開によりコストダウンを図っているため、C-HRクラスの車への標準搭載も可能になっていると思われる。

 

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キーワード:
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