中国の日系部品メーカー:生産能力増強、新エネ車・環境規制・安全などの新需要への供給体制強化も

GSユアサ、JFEスチール、ジェイテクト、積水化学、日本ガイシ、日本精工、パナソニック、三井化学などの動向

2017/05/10

要約

華南周辺
華南周辺
華中・西南周辺
華中周辺

 本レポートは、中国における日系部品メーカーの動向である。(2016年7月下旬から2017年4月までの約9ヵ月間を収録)

 2016年の中国の自動車生産台数は2,812万台(前年比14.8%増)、自動車販売台数は2,803万台(同13.9%増)と共に過去最高を更新。2017年1-3月は、生産台数が713万台(前年同期比8.3%増)、販売台数が700万台(同7.4%増)と小型乗用車への減税縮小を背景に増加率はやや低下したものの、安定した伸びを示している。

 車種別では、SUV、高級車の伸びが引き続き高い。また、新エネルギー車(EV、PHVなど)は、政府補助金の効果もあり、2016年の生産・販売台数がともに51.6万台と、生産が前年比2倍以上、販売が同1.5倍の増加を見た。中国政府は2017年1月に新エネルギー車参入管理規定を公布し、参入条件を厳格化。補助金の支給額も全体的に引き下げられたため、2017年に入り生産・販売が一時低調となったが、2018年から自動車メーカーに新エネルギー車の生産が義務づけられるため、中長期的には高い成長が見込まれている。

 こうした中、欧米日の主要メーカーは2017年から2019年にかけて生産能力の増強を計画。新エネルギー車についても積極姿勢を示している。VWは2025年までにEVの世界生産台数100万台のうち60%を中国で販売すると発表。GMは2018年内にPHVの生産を開始。日産はEVの品揃えの拡充を進める。ホンダはPHVの投入時期を2020年から2018年に前倒しするほか、燃料電池車(FCV)も導入を検討。トヨタは中国でEVを数年内に投入するとの方針を明らかにした。中国メーカーによる新モデル投入も活発となっている。

 こうした動きの中、日系自動車部品メーカーは、日米欧系メーカー、中国メーカーなどからの需要増に対応し、生産能力拡充を進めている。とりわけ、新エネルギー車、省燃費、環境規制、安全などにかかわる新たな需要に対応する新品目の投入や生産設備の増強、新会社設立などが数多く見られる。



華東周辺
華東周辺
華北/東北周辺
華北/東北周辺

中国での日系部品メーカーの動向

既存工場で新品目生産 【広東省】サンコール(エンジン用弁バネ線材)、大同特殊鋼(モーター用磁石)
【江蘇省】パナソニック(車載用リチウムイオン電池)
【福建省】ジェイテクト(新EPS)
【地域不明】小糸製作所(新型LEDヘッドランプ)、住友理工(樹脂製ホースモジュール)
生産能力増強 生産ライン・設備等の増設など 【広東省】オムロンオートモーティブエレクトロニクス(ECU、EPSなど)、三井化学(ポリプロピレンコンパウンド:生産工程改造)
【湖北省】エイチワン(高ハイテン材:溶接ライン)
【安徽省、江蘇省、上海市】日本精工(AT用部品:新ライン)
【江蘇省】日清紡ホールディングス(電子制御ブレーキシステム部品:設備増強)、日本ガイシ(排ガス浄化用セラミックス:設備増強)、日本ピストンリング(バルブシート:新ライン)
【浙江省】三井化学(リチウムイオン電池向け電解液:設備増強)
【山東省】大豊工業(樹脂コーティング軸受:設備増強)
【地域不明】セーレン(シート用合成皮革:設備増強)、日清紡ホールディングス(環境対応のブレーキ用摩擦材:設備増強、研究開発)
工場増設、建屋拡張 【湖北省】寿屋フロンテ(フロアカーペット:第2工場棟)
【江蘇省】アルプス電気(電子部品:新工場棟)、大同メタル(エンジンすべり軸受:第3工場)
【浙江省】小倉クラッチ(カーエアコン用クラッチ:専用工場新設)
【天津市】GSユアサ(鉛蓄電池:大型新工場)、椿本チエイン(タイミングチェーンドライブ:新棟)
新会社(工場)設立・建設/稼働 【広東省】日立オートモティブシステムズ/ホンダ(電動車用モーター:合弁会社)、村上開明堂(バックミラー:孫会社)  、ユニプレス(ホットスタンプ:合弁会社)
【江蘇省】イリソ電子(車載用コネクター:新会社)、積水化学(内装用ポリオレフィンフォーム:新会社)、日立金属(ネオジム磁石:合弁会社)
【上海市】JFEスチール(偏析防止プレミックス鉄粉:合弁会社)
【浙江省】日新製鋼(特殊鋼:合弁会社)
【遼寧省】田島軽金属(アルミ鋳造部品:合弁会社)、パナソニック(HV/EV用リチウムイオン電池:合弁工場開所)
事業体制強化
(合弁会社化、増資、統括会社、開発拠点)
【江蘇省】宇部興産/三菱ケミカル(リチウムイオン電池向け電解液:合弁会社化)、クレハ(PVDF樹脂:日本での生産分も移しフル稼働へ)
【上海市】アルパイン(EV用バッテリーマネジメントシステム:増資)、積水化学(中国統括会社)
【河南省】タチエス(開発拠点に衝突実験装置設置)
事業参入中止 【浙江省】永大化工(フロアマット販売)
国外に生産移管 【地域不明】テイ・エステック(トリムカバー:中国工場は内需特化型に転換)

 

日系部品メーカー動向関連レポート:



華南地域での動向:オムロン、サンコール、大同特殊鋼、日立AMS、三井化学、村上開明堂、ユニプレス

オムロン オートモーティブエレクトロニクス 広州工場のECUなどの生産能力を1.5倍に増強
オムロン オートモーティブエレクトロニクスは、歐姆龍(広州)汽車電子(OMRON (GUANGZHOU) AUTOMOTIVE ELECTRONICS Co., Ltd.)の第2工場にECU、EPS、パッシブエントリー・プッシュエンジンスタートシステムなどを製造する新たなラインを追加し、2017年4月に稼働(予定)。これら製品の生産能力を約1.5倍に増強する。中国での日米欧・韓国系のメーカーに加えてハイエンドモデルを生産する中国メーカーからの受注拡大に対応するもの。これにより売上高を現状の300億円強から最大450億円に増加させる見通し。
サンコール 広州工場でエンジンバルブ用弁バネ線材の生産体制構築
サンコールは、エンジンバルブ用弁バネ材料の線材生産について、従来の日本1極に中国、メキシコを加えた3極の生産体制を構築する。投資額は約60億円。中国では、弁バネ、リングギアなどを生産する広州新確汽車配件有限公司(Suncall (Guangzhou) Co., Ltd.)の工場で、早ければ2017-18年にフル生産する計画。月産能力は300トン。供給先は、中国やタイなどのアジア各国。メキシコ工場の月産能力は600トンで、欧米諸国に供給する。3極合計の月産能力は1600トンになると報じられている。(2016年9月報道)
大同特殊鋼 深圳工場での生産を自動車のモーター用磁石にシフト
大同特殊鋼は、海外の自動車向け磁石事業の生産体制を強化する。その一環として中国では大同磁石(深圳)有限公司(Daido Electronics (ShenZhen) Co., Ltd.)で、従来の携帯電話の振動用モーター向けから自動車向け中心にシフトさせると報じられた。(2016年12月報道)
日立オートモティブシステムズ/ホンダ 広州で電動車両用モーターを2019年に生産開始
日立オートモティブシステムズ(日立AMS)とホンダは、電動車両用モーターを開発・製造・販売する合弁会社を日本で2017年7月に設立予定。資本金は50億円で、出資比率は日立AMS 51%、ホンダ 49%。米国と中国に子会社を設立し、2019年に電動車両用モーターの生産を開始する。中国では広州に生産拠点を置く方針で、両社の既存工場を活用するか、新工場を建設するかは検討中、と報じられている。
三井化学 中山市のポリプロピレン(PP)コンパウンド工場の生産能力を2017年度に増強
三井化学は、バンパーなどに使うポリプロピレン(PP)コンパウンドの生産能力増強を中国、米国、メキシコ、インドなどで行う。世界全体での年産能力を2017年度に105万トンとし、世界トップクラスの供給力を確保する。中国では、2017年度に三井化学複合塑料(中山)有限公司(MITSUI ADVANCED COMPOSITES (ZHONGSHAN) CO., LTD.)で生産工程の改造を行うと思われ、年産能力を現在の7万トン前後から2割増強する。米メーカーの中国法人向けの納入拡大に備えると報じられている。(2017年1月報道など)
村上開明堂 佛山市にバックミラー組立生産の孫会社設立、2018年に生産開始
村上開明堂は、中国で2ヵ所目のバックミラー工場として、100%出資子会社の嘉興村上汽車配件有限公司(浙江省、Jiaxing Murakami Corporation)が広東省に佛山村上汽車配件有限公司(佛山市、Foshan Murakami Corporation)を2016年10月に設立。資本金は1000万元(約1.6億円)。新工場を建設し、2018年1月に稼働する計画。これにより、中国での同社のバックミラー年産能力を2019年に1.5倍に増加させ、広東省の日系メーカーなどへの売り込みを目指す。現状の年産能力は不明。
ユニプレス 広州市にホットスタンプの合弁会社を2017年に設立、2019年に工場稼働予定
ユニプレスは、子会社のユニプレス(中国)と東風(武漢)実業が車体用ホットスタンプ部品を製造・販売する折半出資の合弁会社、東風ユニプレスホットスタンプ(広州市、Dongfeng Unipres Hot Stamping Corporation)を2017年2月に設立。資本金は1億元(約15億2700万円)。工場は2019年4月に稼働する予定。投資額は1億元。ユニプレスは現在、日本と英国でホットスタンプ部品を生産し各国に供給しているが、軽量化ニーズの高まる中国での需要増に対応する。中国地場系メーカーの需要も開拓する。2020年度に売上高1.5億元(22.9億円)を見込む。


華中地域での動向:エイチワン、寿屋フロンテ、タチエス

湖北省

エイチワン 武漢工場の溶接ラインを2017-18年に増強し、生産能力を1.5倍に拡充へ
エイチワンは、武漢愛機汽車配件有限公司(WH Auto Parts Industries Inc)のプレス工場に3000tサーボトランスファープレス機を設置し、2016年10月に稼働。投資額は約17億円。これにより、多種多様な製品を高ハイテン材で量産する体制を整えた。さらに2017-18年にかけて溶接ラインを拡充し、車体骨格部品の日産能力を現在の2000台レベルから同3000台レベルに引き上げる。投資額は約10億円。納入先の東風ホンダのSUVが好調のためフル稼働状態にあり、能力増強を図る。
寿屋フロンテ 武漢に第二工場棟を建設し、原材料メーカーを入居させ生産体制強化
寿屋フロンテは、武漢寿屋汽車内飾件有限公司(WUHAN KOTOBUKIYA AUTOMOTIVE INTERIOR TRIM CO.,LTD.)のフロアカーペット生産拠点内に第二工場棟を建設し、2016年11月に稼働。新棟には取引先の原材料メーカーが入居し、生産した原材料を納入。従来は武漢市と上海市の工場から送っていた。これにより、物流コストを従来の10分の1程度に削減するとともに、生産効率を高め、競争力を強化する。フロアカーペットの生産量は、2016年に58万台分(前年比23.4%増)、2017年には70万台分(同48.9%増)を計画。(2016年9月報道)



河南省

タチエス 鄭州の開発拠点に衝突実験装置を2017年以降に導入
タチエスは、中国のR&D拠点の泰極愛思(鄭州)汽車座椅研発有限公司(TACHI-S Engineering Zhengzhou Co., Ltd.)が2016年5月に稼働。2017年以降には開発機能を高めるため、同拠点にシートの安全性を確かめる衝突実験装置を導入する。現在は、中国でシートを開発するたびに日本へ輸送し、衝突実験を行っており、開発に時間や輸送コストがかかっている。ホンダや日産など顧客の要望に沿って素早く実験できる体制を整え、新モデルのシートの受注につなげる。投資額は数億円と見られる。


華東地域での動向:日本精工、アルプス電気、アルパイン、小倉クラッチ、ジェイテクトなど

安徽省・江蘇省・上海市

日本精工 AT用部品などの3工場の生産能力増強
日本精工は、中国でのAT用部品の生産能力を増強するため、2017年にも既存の3工場に新ラインを導入し、生産能力を現状比6~7%以上引き上げる計画。投資額は50億円。安徽省の合肥恩斯克有限公司(HEFEI NSK CO., LTD.)ではボールベアリング、江蘇省の常熟恩斯克軸受有限公司(CHANGSHU NSK NEEDLE BEARING CO., LTD.)ではニードルローラーベアリング、上海市の恩斯克華納変速機零部件(上海)有限公司(NSK-WARNER (SHANGHAI) CO., LTD.)では変速機用のフリクションプレートの生産能力をそれぞれ増強する。常熟工場が2017年春までに、合肥と上海の工場が2017年夏に新ラインでの生産を開始する。これにより、日米欧系メーカーのみならず、ATへのシフトを進める中国系メーカーからの需要増をとり込み、3工場合計で2017年には売上高の50億円増を目指すと報じられている。(2016年12月報道)



江蘇省

アルプス電気 無錫市の工場を拡張し、電子部品の生産能力増強へ
アルプス電気は、無錫アルプス電子(WUXI ALPS ELECTRONICS CO., LTD.)の既存工場の敷地内に新工場棟を建設する。竣工は2018年2月の予定で、自動車やモバイル機器向け電子部品の生産能力を増強する。敷地面積は既存工場が約9万平方メートル、新工場棟は1.7万平方メートル(2階建て)。投資額は約12億円。中国での需要増に対応する。
イリソ電子 車載用コネクター製造の新工場が2017年内に稼働予定
イリソ電子工業は、南通市に新会社(名称は不明)を2017年初までに設立し、2017年内の新工場稼働を計画。中国および近隣の中華圏向けに主として車載用コネクターを生産する。その他に民生機器用コネクターなども生産。敷地面積は約3.6万平方メートル。投資額は約15億円。めっきやプレス、モールド加工などの工程の内製比率を徐々に高め、2019年に量産を本格化させる見通し。上海意力速電子工業有限公司(SHANGHAI IRISO ELECTRONICS CO.,LTD)に続く中国第2の生産拠点で、供給力を高めることにより、受注拡大を目指す。
宇部興産、三菱化学(現三菱ケミカル) 中国でのリチウムイオン電池向け電解液事業を合弁化
宇部興産と三菱化学(現三菱ケミカル)は2016年10月、江蘇省にある両社のリチウムイオン電池用電解液製造拠点の提携で合意したと発表。2017年4月をめどに、宇部興産の子会社の安逸達電解液技術(張家港)(年産能力5,000トン)と三菱化学の子会社の三菱化学功能塑料(常熟市)(同10,000トン)を統合して両社の合弁会社とし、持分比率50:50で運営する。両社の知的財産を含む技術資源の相互利用や生産技術の融合などにより、技術力とコスト競争力を強化。中国でのEV、PHVなどの車載用リチウムイオン電池向けや、定置電池向けを中心に販売拡大を図る。
クレハ 常熟市のポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂工場に日本での生産分も移しフル稼働へ
クレハは、2014年に呉羽(常熟)ふっ素材料有限公司(KUREHA (Changshu) Fluorine  Materials Co., Ltd.)でリチウムイオン電池(LIB)用のポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂を生産開始したが、日本のいわき事業所でも生産しているバルブや継ぎ手向けの汎用PVDF樹脂を2016年度に常熟の生産子会社に集約。これにより2018年度に、第一期工場建設プロジェクトのフル稼働に当たる年産5000トンを目指す。とりわけEVバス向けの大型LIB用PVDFの販売拡大を図る。また、中国での需要拡大を受けて、海外では初となる「技術センター」開設も検討している。
積水化学 無錫市に内装用ポリオレフィンフォーム生産会社を2017年6月に設立へ
積水化学工業は、韓国の連結子会社の映甫(よんぼ)化学(韓国清州市、YOUNGBO CHEMICAL CO., LTD.)を通じて、自動車内装向けポリオレフィンフォーム生産会社(社名は不明)を2017年6月に無錫市で設立する。中国での同製品の生産拠点は、映甫高新材料(廊坊)有限公司(河北省廊坊市)に続き2社目。自動車の高級化に伴い、内装の質感を高めるための需要増加に対応。投資額は約25億円。建屋と生産ラインを新設し、2019年度上期の稼動予定。年産能力は1600万平方メートル。
大同メタル 蘇州市に第3工場を建設し、エンジンすべり軸受の生産能力増強へ
大同メタル工業は、中国でのエンジンすべり軸受の生産能力を増強するために蘇州市の大同精密金属(蘇州)有限公司(DAIDO PRECISION METAL (SUZHOU) CO., LTD.)で第3工場を2017年に新設する。稼働は2018年の予定。欧米メーカーに加えて性能要求レベルが上がっている中国メーカーとの取引拡大を目指す。併せて、適合開発などでメーカーへの対応力を高めるため、日本人エンジニアが常駐する体制を構築する。
日清紡ホールディングス 揚州工場の電子制御ブレーキシステム部品の生産能力拡充
日清紡ホールディングスは、日清紡大陸精密機械(揚州)有限公司(Nisshinbo-Continental Precision Machining (Yangzhou) Co., Ltd.)の工場設備を段階的に増強し、2020年頃に電子制御ブレーキシステム(EBS)部品の年産能力を1000万個超(現状比約20%増)とする計画。投資額は約20億円。自動車の安全性向上のためにニーズが増加していることに対応。(2017年4月報道)
日本ガイシ 蘇州の工場で排ガス浄化用セラミックスの生産設備を増強
日本ガイシは、中国での排ガス規制強化に伴う排ガス浄化用触媒担体「ハニセラム」の需要拡大に対応するため、NGK(蘇州)環保陶瓷有限公司(蘇州市、NGK Ceramics Suzhou Co., Ltd.)の工場建屋を増築し生産ラインを増強する。また、ガソリン車用のPM(粒子状物質)除去フィルター「ガソリン・パティキュレート・フィルター(GPF)」の生産ラインも新たに導入する。投資額は約12億円。新生産ラインは、GPFが2018年4月から、ハニセラムが同年9月から稼働予定。年産能力は、全製品(ハニセラム、大型ハニセラム、ディーゼル車向けPM除去装置のDPF、GPF)合わせて現在の約4,000万個(ハニセラム換算)から約5,000万個に約25%増強する計画。
日本ピストンリング 儀征市のバルブシート工場の生産能力を2018年3月までに増強
日本ピストンリングは2018年3月までに中国と米国のバルブシート生産拠点の生産能力を増強する。VWからの受注拡大に対応するもので、2017年度の全社投資額60億円の大半をこの2カ国にあてる。中国では、儀征日環亜新科粉末冶金製造有限公司(儀征市、NPR ASIMCO Powdered Metals Manufacturing (Yizheng) Co., Ltd.)の工場に新ラインを設置し、2017年度末の生産能力を2015年度比約2.75倍に引き上げる。なお、同工場設立時の計画では2016年の月産数量は約900万個。
パナソニック 蘇州市の工場でも車載用リチウムイオン電池生産へ
パナソニックは、蘇州市の工場で2017年度中にも、ノートパソコンや携帯電話などの民生用向け電池の生産ラインの一部を車載用に転換すると報じられている。中国での車載用リチウムイオン電池の需要増に対応するもの。パナソニックの中国での車載用電池の生産拠点は、大連の新工場に次いで2カ所目となる。なお現在、蘇州市では三洋エナジー(蘇州)有限公司が、民生用リチウムイオン電池を生産している。
日立金属 南通市にネオジム磁石の合弁会社を2016年9月に設立、量産開始は2017年3月
日立金属は、合弁会社の日立金属三環磁材(南通)有限公司(Hitachi Metals San Huan Magnetic Materials (Nantong) Co., Ltd.)を2016年9月に設立。工場建設費を含む資本金は、4.5億元(約90億円)。出資比率は、日立金属51%、中科三環49%。2017年3月からネオジム磁石を量産し、電気自動車やハイブリッド車、産業用モーター向けに供給。年産能力は、2017年度が1000トン規模。2018年度には2000トンに引き上げ、売上高100億円程度を見込む。中国で原材料調達から製造、販売までの一貫体制を整えることで、グローバル市場での競争力を強化する。



上海市

アルパイン 合弁会社に2016年11月に増資、受注拡大に向け投資
アルパインは、合弁会社の東軟睿馳汽車技術(上海)有限公司(Neusoft Reach Automotive Technology (Shanghai) Co., Ltd.) が2億5500万元の第三者割当増資を2016年11月に行い、資本金を5億6270万元に引き上げた。この増資のうち、アルパイン子会社のALPINE ELECTRONICS(CHINA) CO., LTD. が9945万元を引き受け、増資後の出資比率をそれまでの39%から44.33%に引き上げた。他の出資者である東軟集団股份有限公司の比率は46.61%(増資前は41%)、瀋陽福瑞馳企業管理中心は9.06%(同20%)となった。2015年11月に設立された東軟睿馳汽車技術は、初事業としてEV向けバッテリーマネジメントシステムを開発し、2016年に中国メーカーに納入。さらに、インテリジェントチャージの重要技術、画像認識やセンサーを融合させた高度な運転支援システム、自動運転の重要技術、クラウドプラットフォームベースのテレマティクス、コネクテッドカーなどの分野での研究開発と事業化を目指している。増資資金を活用して、受注拡大に向けた投資を行う。
JFEスチール 自動車部品用偏析防止プレミックス鉄粉の合弁会社を2017年2月に設立、2018年に生産開始
JFEスチールは、宝鋼金属有限公司と折半出資の合弁会社、上海宝武杰富意清潔鉄粉有限公司(Shanghai Baowu JFE Clean Iron Powder Co., Ltd.)を2017年2月に設立。資本金は明らかでない。新工場を建設し、2018年3月の稼働を目指し、自動車部品用偏析防止プレミックス鉄粉を製造販売する。年産能力は3万トン。総投資額は1億900万元。中国での原料調達から製品化までの一貫生産体制を整え、需要拡大が見込まれる高級粉末冶金用鉄粉を供給する。
積水化学 中国統括会社を2016年12月に設立
積水化学工業は、上海市に統括会社の積水化学投資(上海)有限公司 (Sekisui Chemical (Shanghai) Investment Co., Ltd.)を2016年12月に設立。中国に13社あるグループ会社への経営管理支援とガバナンス機能の強化が目的。従来、上海駐在員事務所で行っていた現地情報収集の業務なども新会社に移管。資本金は500万ドル。今後、既存の中国グループ会社への住友化学からの出資持分を新会社に現物出資する資本再編を行い、資本金を3000万ドル以上に増やす方針。



浙江省

永大化工 フロアマット販売の事業参入を中止
永大化工は、2013年12月に完全子会社の天台永大貿易有限公司(浙江省天台県)を設立し、自動車用フロアマットや関連製品の販売事業を展開するための市場調査を行ってきた。しかし、現状では採算確保が困難と判断し、2016年8月に同子会社の解散を決定した。
小倉クラッチ カーエアコン用クラッチの新工場を建設し生産能力増強
小倉クラッチは、小倉離合機(長興)有限公司(浙江省長興県、OGURA CLUTCH (CHANG XING)CO.,LTD.)の敷地内にカーエアコン用クラッチ専用の新工場を建設し、2017年末の稼働を目指す。これによりカーエアコン用クラッチの年産能力を30万台から200万台の約7倍に引き上げる。中国内のみならず欧米メーカーに納入する海外の部品メーカーへの輸出増に対応する。総投資額は約10億円。同時に既存工場では、エレベーターや生産用ロボットなどの産業用クラッチの増産体制も整え、中国国内の需要増にも対応する。
日新製鋼 特殊鋼事業の合弁工場が2016年秋に稼働
日新製鋼は、2014年7月設立の合弁会社の浙江日新華新頓精密特殊鋼有限公司(浙江省平湖市、Zhejiang Nisshin Worthington Precision Specialty Steel Co., Ltd.)の工場が2016年秋に稼働。特殊鋼事業では初の中国内生産で、ベアリング、チェーン、バネ、トランスミッション部品などに使われる特殊鋼の鋼帯を生産。年産能力は12万トン。合弁会社の資本金は1億2400万ドル。出資比率は、日新製鋼55%、伊藤忠丸紅鉄鋼35%、米ワージントン社10%。
三井化学 リチウムイオン電池向け電解液の合弁工場が2016年に生産開始、続けて設備増強に着工
三井化学は、台湾プラスチックとの折半出資の合弁会社 台塑三井精密化学有限公司(寧波市、Formosa Mitsui Advanced Chemicals Co., Ltd.、資本金8200万ドル)でリチウムイオン電池向け電解液を2016年9月に生産開始。年産能力は1500トン。加えて、2016年12月には中国での電気自動車、プラグインハイブリッド車の更なる市場拡大に備え、設備増強工事を着工。年産能力を5000トンまで高める。2017年11月の営業運転開始を計画。



福建省

ジェイテクト 厦門市の工場で新EPS量産へ
ジェイテクトは、捷太格特轉向系統(厦門)有限公司(JTEKT STEERING SYSTEMS (XIAMEN) CO., LTD.)の工場に新生産ラインを設置し、モーターをラック軸に並行に配置し、従来よりも大出力が可能なラックパラレル(RP)式の電動パワーステアリング(EPS)の量産を2018年に開始する。自動車の電動化に伴い、油圧式が中心だった中・大型車でもEPSへの移行が進んでいることに対応する。同RP式EPSの生産は、2016年末に日本の工場で開始。2017年夏には米国テネシー州の工場でも生産を開始する。
ジェイテクトは、中・大型車向けに、ラック軸上にモーターを配置し、ダイレクトにアシストするラック同軸(RD)式EPSについては以前から生産している。



山東省

大豊工業 煙台市の工場で樹脂コーティング軸受の生産能力拡充へ
大豊工業は、大豊工業(煙台)有限公司(Taiho Kogyo Corporation of Yantai)で小型・高性能エンジン向けに低燃費化につながる樹脂コーティング軸受の生産ラインを2016年に稼働した。取引先がトヨタ以外にも広がり始めているため、2018-19年にも生産能力を増加させる計画。


華北地域での動向:GSユアサ、椿本チエイン

天津市

GSユアサ 天津市に鉛蓄電池の大型工場を新設し生産能力増強
GSユアサは、天津杰士電池有限公司(Tianjin GS Battery Co., Ltd.)の鉛蓄電池の新工場を18万平方メートルの敷地に建設し、2018年夏頃の稼働を予定。アイドリングストップ車両や低燃費車両などの環境対応車での需要拡大に対応し、高性能鉛蓄電池を中心に生産能力を増強する。また、既存工場の生産を新工場に移転・集約し、生産の効率化と合理化も図る。新工場の年産能力は最大800万個。既存工場の最大400万個から倍増させ、売上高は2016年の約2倍を目指す。投資額は約175億円。
椿本チエイン 天津市の工場で新棟を建設、タイミングチェーンドライブシステムの生産能力倍増へ
椿本チエインは、椿本鏈条(天津)有限公司(Tsubakimoto Chain (Tianjin) Co., Ltd.)でエンジン用タイミングチェーンドライブシステムの生産能力を2017年度から順次拡大し、現状比2倍超に高める。まず、搬送用などの産業用チェーンを生産する第1工場内に工場棟を新設。2017年度内に稼働させる。さらに従来から車両用タイミングチェーンドライブシステムを生産する第2工場内にも新たな工場棟を建設する方向。投資額は30億円規模とみられる。日系メーカーのみならず、欧米系、中国系メーカーからの受注が拡大しており、需要増に対応するものと報道されている。(2017年3月報道)


東北地域での動向:田島軽金属、パナソニック

遼寧省

田島軽金属 遼寧省でアルミ鋳造部品の合弁会社を2018年に設立へ
田島軽金属は、2018年に初の海外生産子会社を中国地場メーカーとの合弁で遼寧省に設立し、砂型アルミ鋳造部品を生産する。設立地や社名などの詳細は不明。今後、中国でのアルミ鋳物の需要が日本の10倍程度まで膨らむと予測し、EVを手掛ける中国メーカーからの受注獲得を目指す。砂型鋳造は、多品種少量の精密部品を生産するのに向いており、中国ではとりわけアルミ部品の試作品の受注が倍増するとみている。日本と同水準の品質を確保するため、工場で使う砂型は日本で製造し合弁会社に輸出する。工場は2020年にフル稼働を計画と報じられている。(2017年4月報道)
パナソニック 大連市の車載用リチウムイオン電池工場が2017年に開所
パナソニックは2017年4月、車載用リチウムイオン電池の合弁会社、大連松下汽車能源有限公司(Panasonic Automotive Energy Dalian Co., Ltd.)の工場が開所したと発表。工場の敷地面積は約17万平方メートル、建屋面積は約8万平方メートル。2017年度からハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、電気自動車などの環境対応車向けリチウムイオン電池を生産する。


中国全体での動向:小糸製作所、住友理工、セーレン、テイ・エステック、日清紡ホールディングス

小糸製作所 中国で新型LEDヘッドランプを2017年に生産開始
小糸製作所は、新型の発光ダイオード(LED)ヘッドランプの「LED Compact バイファンクション」を2017年にも中国で生産開始する。中国での同ヘッドランプの需要は、現在10万台分超だが、2020年には30万~40万台分に増加すると見込み、供給体制の強化を判断。中国に4カ所ある生産拠点のどこで生産するかは未定と報じられている。(2016年12月報道)
住友理工 中国で樹脂製ホースモジュールの量産を2016年に開始
住友理工は、タイと中国で燃料タンク用の樹脂製ホースモジュールの専用生産ラインを整備し、2016年に量産開始。2カ国合計の年産能力は21.3万台分。投資額は明らかにしていない。中国での年産能力は、10.8万台分と報じられている。樹脂燃料ホースは、金属製ホースに比べ40%の軽量化が可能。(2016年7月報道)
中国の工場名は明らかでないが、東海橡塑(広州)有限公司(TOKAI RUBBER (GUANGZHOU) Co., Ltd.)では、樹脂燃料ホースの生産が行われている。(当社資料:部品メーカー50000社検索)

防振ゴムは日本向け輸出を中止へ
中国での防振ゴム生産では、人件費の高騰や為替変動などのリスクが拡大する場合は、日本向け輸出を中止し、日本での生産に切り替える方針と報じられている。2016年6月に、東日本の防振ゴム生産拠点の住理工山形が稼働。為替変動の影響を受けない日本での事業基盤の再構築を進めている。
セーレン 中国でシート用合成皮革の生産能力増強を検討
セーレンは、海外でシート用合成皮革「クオーレ」の生産能力を増強する。2018年までにメキシコ工場の月産能力を現状比2倍の40万メートルにすることを決定した。投資額は約10億円。今後、更に中国およびメキシコの工場で20万メートル規模の月産能力の追加を検討する。投資額は約10億円を見込む。これによりセーレンのシート用合成皮革の世界全体での月産能力は、2017年初の100万~110万メートルから約150万メートルになると報じられている。中国での工場名は明らかでないが、現在、世聯汽車内飾(蘇州)有限公司(江蘇省、Seiren Suzhou Co., Ltd.)で、シート用合成皮革を生産している。
テイ・エス テック 輸出用のトリムカバー生産をバングラデシュ工場に移転、中国での生産は内需向けに
テイ・エス テックは、2017年度からスタートする「第13次中期計画」で中国事業の内需型へのシフトを加速させる。現在、中国から米国、日本、英国向けにトリムカバーなどの部品を輸出しているが段階的に縮小し、2016年6月に生産設備の設置を完了したバングラデシュの縫製新拠点TS TECH BANGLADESH LIMITEDに生産移管していく。中国での輸出用トリムカバー生産は、寧波保税区提愛思泉盟汽車内飾有限公司(NINGBO FTZ TS TRIMONT AUTOMOTIVE INTERIOR INC.)と寧波出口加工区提愛思泉盟汽車内飾有限公司(NINGBO EPZ TS TRIMONT AUTOMOTIVE INTERIOR INC.)で行っている。この他、広州徳愛康紡績内飾製品有限公司(GUANGZHOU TECH INTERIOR TRIM MANUFACTURING CO.,LTD.)でもトリムカバーを生産している。
日清紡ホールディングス 中国で環境対応のブレーキ用摩擦材を増産へ
日清紡ホールディングスは、自動車用ブレーキ事業に2017年度からの3年間に400億円の設備投資を実施する。うち、約100億円を環境規制に対応する銅を含まない摩擦材の増産や研究開発にあてる。日本、米国、中国の工場でプレス機や焼結設備など摩擦材の生産設備を増強し、2019年度までに規制対象品の生産能力を現状比20-30%引き上げると報じられている。中国の工場名は不明。

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中国、日系、サプライヤー、部品メーカー

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