メキシコの日系サプライヤー:NAFTA改定動向を注視

受注増加に対応した生産能力増強や新規進出が続く

2018/10/12

要約

メキシコの自動車工場マップ
メキシコの自動車工場マップ(クリックすると拠点マップが開きます)

  メキシコの2017年の自動車生産台数(除く大型バス・トラック)は377.4万台(前年比8.9%増)、輸出は310.3万台(同12.1%増)。一方、新車販売台数は153.0万台(同4.6%減)と減少。2018年1~9月は生産台数が295.4万台(前年同期比0.5%増)、輸出台数(日産は未発表のため除く)は257.1万台(同7.5%増)、新車販売台数が102.8万台(同7.1%減)。

  OEM各社は、Fordがメキシコでの乗用車新工場の建設中止を発表した以外には、今のところメキシコでの生産能力増強計画に変更がないと報じられている。2017年11月末に日産とDaimlerの合弁工場のCOMPASが生産開始(ただし、Infiniti第2車種の開発と生産は凍結とされる)。2019年第1四半期にはBMW初のメキシコ工場、2020年上半期にはトヨタの新工場が稼働する予定で、合計約60万台の生産能力増強が見込まれている。また、VWはエンジン生産を2020年までに2倍に引き上げる計画で、Fordはメキシコ工場での新型EV生産を準備中と報じられている。

  こうした中、トランプ政権下で自動車生産の一部をメキシコから米国にシフトさせることを狙うNAFTA再交渉が進められ、投資環境は不透明な状態が続いている。(米国は2018年8月27日にメキシコと、9月30日にカナダと改定内容について合意した。)

  日系部品メーカーは投資環境の先行きを注視する一方で、受注増に伴う生産能力増強や新規進出、生産品目追加などの投資が進めている。材料メーカーやTier2サプライヤーの新規進出や設備増強も多い。


  以下は、メキシコにおける日系部品メーカーの最近の動向である(収録対象は、2018年6月までの約1年間)。

 

メキシコでの新規工場設立 ( )は生産品目

新規工場進出 旭化成(コンパウンド樹脂)、渥美工業(車軸ハブ)、石光工業(切削部品)、エムエス製作所(ウェザーストリップ用ゴム成形金型)、小川工業(冷間鍛造部品)、京都プラテック(プラスチック金型・樹脂成形)、コタニ(精密鍛造品)、JFEスチール(溶融亜鉛鍍金鋼板)、豊田鉄工(骨格部品)、日泉化学(プラスチック内装材)、日本ゼオン(塩ビ系インパネ表皮材)

 

メキシコでの生産能力拡充  ( )は生産品目など、*は新品目

米国からメキシコに生産集約 ユーシン(ドアハンドル、キーセットなど)
設備増強 KYB(第3ライン:ショックアブソーバー)、積水化学(第3ライン:合わせガラス用中間膜)、セーレン(第2ライン:シート用合成皮革)、東プレ(生産ライン増設:ホットスタンプ部品)、東レ(設備新設:*高物性の炭素繊維レギュラートウ)、日本化薬(設備増設:インフレーター)、ハッカイ(設備増設:小型樹脂部品)、フジオーゼックス(設備増強:エンジンバルブ)、三井化学(1ライン増設:PPコンパウンド)、ヨロズ(設備増設:プレス部品)
工場拡張 北川鉄工所/日鉄住金物産(工場増設:小物鋳造部品)、シナノケンシ(工場増設:車載用精密モーター)、清水工業(工場増築:エンジン部品)、マブチモーター(工場拡張:中型電装用モーター、*小型電装用モーター)、森六テクノロジー(建屋増設:内装部品アウトレット)
新拠点・新工場設立 芦森工業(第2工場:安全部品)、東レ(新工場:*エアバッグ用の原糸と基布)、日軽エムシーアルミ(第2工場:アルミ2次合金)、日本電産(新工場を構想:電動車向け駆動用モーター)、富士機工(新工場:シフター)
現地メーカーに出資、生産委託 共進(メキシコ部品メーカーに出資:乗用車向けの小型部品)、帝人フロンティア(メキシコ企業に生産委託:*カーシート織物)


関連レポート:
米国の自動車関税、トランプ政権下での貿易政策(2018年9月)
LMC Automotive: 2017年~2018年の世界市場概況と今後の展望(2018年7月)
メキシコ:各社が生産増強計画を推進、輸出先の多角化も検討(2017年9月)

<日系部品メーカーの海外動向>
  米国・カナダ (2018年9月) 
  ASEAN (2018年8月)
  中国・華南・華中・華北・東北地区 (2018年3月)
  中国・華東地区 (2018年3月)
  中東欧 (2018年2月)
  西欧 (2017年12月)
  インド (2017年9月)
  メキシコ・ブラジル (2017年6月)

 

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