メキシコ:「ニアショアリング」とEVシフトにより各社が投資計画を発表
2022年の生産・販売台数は回復、Teslaが次世代EVの新工場を建設
2023/04/20
- 要約
- グローバルなサプライチェーン再構築の動きを背景に、北米内の経済連携が加速
- 2022年の生産状況:対前年増加(+9.2%)で長期低迷に歯止め、87%が輸出向け
- Tesla:メキシコ工場建設を発表、経済効果に期待が高まる
- 2022年の販売状況:2年連続で販売回復、中国製が輸入車の最大勢力に
- 中国メーカー:メキシコ販売は対前年2.8倍に
- GM:乗用車生産を終了、国内販売は中国からの輸入車が65%に急増
- Stellantis:北米初の量産EVとなる大型バンをメキシコで生産へ
- Ford:生産車を米国の人気車に絞り大幅増産、Mustang Mach-Eも伸長
- VW:2022年は生産台数で2位に躍進、2025年からEV生産予定
- 現代・起亜:メキシコ国内販売で3位に躍進
- 日産:半導体不足による生産制約が影響し、生産、販売とも減少
- トヨタ:北米生産を一本化した「Tacoma」で大幅増産、ハイブリッド車の販売拡大
- マツダ:生産の主軸は乗用車系からSUVへシフト、2022年に「CX-3」の生産を開始
- ホンダ:生産は「HR-V」に一本化、2022年にフルモデルチェンジ
- LMC Automotive生産予測:メキシコの生産台数は2026年に409万台へ
要約
メキシコ北部での建設が発表されたTeslaで5番目となるGigafactory(出所:Tesla) |
ここ1~2年の間に、メキシコのグローバルな自動車産業における位置づけは大きく変化した。ひとつは最大市場である米国が、米中対立の先鋭化やロシアのウクライナ侵攻による地政学的リスクの高まりを受けて、同盟国に生産や調達先をシフトする「フレンドリーショアリング」に大きく舵を切ったことが大きな要素としてあり、さらに昨今のコロナ禍や半導体不足によるサプライチェーンのリスクが強く認識され、それに備える「ニアショアリング(より消費地に近い所で生産を行う)」の投資先として、北米の近隣国であるメキシコの優位性が高まったことが挙げられる。2020年に合意に至ったUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の中で対立点となっていた無関税要件をめぐっても、これらの環境変化を背景に2023年に入りメキシコ・カナダに有利な形で決着へ向かっている。
また、自動車業界がEV化に向けて新車・新技術の開発、導入を急速に進めるなかで、北米向け車両の生産拠点であるメキシコで、OEMや部品メーカーが設備の増強や刷新のための投資計画を矢継ぎ早に発表している。2023年3月にはTeslaが、同社の第5番目となる車両工場(Gigafactory)をメキシコ北部に新設することを正式発表し、その産業や経済への効果に期待が高まっている。
2022年の状況を振り返ると、メキシコの自動車生産、販売は、対前年で各々9.2%、7.9%の増加となり回復を示したが、コロナ禍前の水準とはまだ大きな開きがある。また回復のスピードもOEMによって大きく異なり、業界の勢力図にも変化が見られる。生産車の輸出先として米国市場への依存が更に高まる一方で、中国がメキシコへの輸入車生産国として最大になるなど、注目すべき動きも多い。
本レポートでは、USMCAとメキシコ自動車業界を報告した前回レポート(2022年3月掲載)のアップデート版として、市場の最新の状況を俯瞰すると共に、主要OEMを中心に業界各社の動向と発表された計画を整理し、報告する。
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