USMCAとメキシコ自動車業界の動向

米国産車優遇の動きなどで摩擦も生じるが、メキシコの輸出基地化はさらに進展

2022/03/31

要約

GMのメキシコSilao工場
GMのメキシコSilao工場
USMCAのルール下で新たな労働組合が選ばれた
(出典:GENERAL MOTORS DE MEXICO)

  USMCA(United States-Mexico-Canada Agreement、米国-メキシコ-カナダ協定)は、NAFTA(North America Free Trade Agreement:1992年施行)に替わる北米3国間の貿易協定として2020年7月に関係国の合意に至り発効した。

  NAFTAに対しより厳しくなった自動車輸入の際の無関税諸要件について、その完全な履行は2023年までの猶予があるが、域内調達率の算定基準の解釈や、米国産EV補助金などの米国産車優遇策をめぐって米国とカナダ/メキシコ両国との対立も出てきている。今後の協議や合意の動向によって各社の投資や車種戦略に影響が出てくる可能性がある。

  一方で、メキシコへの投資は堅調で自動車OEMや部品メーカーのメキシコ工場への増産/設備投資は、USMCAをめぐる議論の行方が不透明な中でも一層の進展を見せている。OEM各社はメキシコを輸出基地と明確に位置付け、米系各社やトヨタなど生産車種の大部分を米国/カナダに輸出するメーカーも多く、その傾向は一層強まっている。乗用車からライトトラック系へのシフトや将来のEVの普及見込みなど、米国の需要動向に対応した生産車種の刷新や増産投資の計画も相次いで発表されている。

  本レポートでは、発効後1年半を経たUSMCAをめぐる主な動きと、メキシコ自動車業界の最新の状況について報告する。併せてLMC Automotiveによるメキシコ生産予測も報告する。

 

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