中国新興EVメーカー(上):トップ4社はテック企業と緊密な関係を構築

蔚来汽車、理想汽車、小鵬汽車、威馬汽車

2021/03/12

要約

蔚来首款自动驾驶电动轿车ET7
NIO初の自動運転EVセダン ET7 (出典:NIO)

 中国汽車工業協会(CAAM)は、2021年113日に2020年の新エネルギー車(以下、NEV)の生産及び販売が過去最高を記録したと発表した。NEVの生産は前年比7.5%増の136.6万台、販売は10.9%増の136.7万台で、前年のマイナス成長からプラス成長に転じた。また、CAAMは2021年のNEV販売は180万台に達すると見込んでいる。

 一方、中国汽車報によると、中国新興EVメーカーは2020年にピーク時の100社余りから40社余りまで減ったと報じている。これらのうち量産を実現し、且つ販売実績がある企業は10社前後に過ぎない。CAAMの統計では、2020年1-11月の中国新興EVメーカー10社の販売台数は合計約13万台。このうち蔚来汽車(NIO)、理想汽車(Li Auto / Leading Ideal)、小鵬汽車(Xpeng)、威馬汽車(WM Motor)の4社で販売の80%(10万台)を占めた。

 現在、中国新興EVメーカー上位4社のうち、NIO、理想汽車、小鵬汽車の3社は米国で次々に上場を果たしている。メディアによると中国新興EVメーカーは多くの資金を必要としており、この3社が米国での上場を選択した一つの要因は、中国の上場審査が厳しいのに対し、米国での審査は比較的容易で資金調達の環境も良く、直面する資金不足をより早く解決できるためと報じられている。NIOは2018年9月12日にニューヨーク証券取引所に上場し、米国で上場した初の中国新興EVメーカーとなった。2020年7月30日には理想汽車がNASDAQに上場。1ヵ月が経たないうちに小鵬汽車もニューヨーク証券取引所に上場した。なお、威馬汽車はまだ上場していないが、上海証券監督管理委員会は、威馬汽車がすでにプレリスティング・チュートリング(Pre-listing tutoring)を終え、2021年に中国版NASDAQの科創板(Science and technology innovation board)に上場する見込みであることをウェブサイトで明らかにしている。

 特筆すべきことは、中国新興EVメーカーのトップ4社は大手テック企業と密接に関係していることが挙げられる。IT大手TencentはNIOに対して投資を拡大しており、2020年7月には16.3%まで出資比率を上げて、NIOの第2位株主となった。理想汽車は2020年7月の上場後、IT大手の美団(Meituan)の創業者王興 氏が理想汽車の筆頭株主になった。小鵬汽車もまたAlibabaや小米(Xiaomi)から融資を受けている。AlibabaはIPO前に14.4%の株式を持つ筆頭株主。小米は2019年に資金調達シリーズCラウンドに参加するとともに、さらなる戦略的提携を締結した。威馬汽車は、2019年初めに百度と戦略的提携を締結し、2020年12月には「Apollo」プラットフォームで共同製作した威馬汽車にとって3番目のモデルとなるインテリジェント電動SUV「W6」を発表した。なお、2021年1月末時点、百度は威馬汽車の株式を10.22%保有している。

 このほか、2020年年初から多くの中国新興EVメーカーが存続困難にあると報じられた。前途汽車(Qiantu Motor)、緑馳汽車(REECH)、長江汽車(Changjiang Automobile)、奇点汽車(Singulato)、拜騰汽車(Byton)、江蘇賽麟(Saleen)、南京博郡(Bordrin Motors)などが、業務停止、破産/再編、製造放棄などネガティブなニュースが次々と伝えられている。世界的なコロナ禍の影響で中国自動車業界のブランド淘汰が加速している。

 本レポートではNIO、理想汽車、小鵬汽車、威馬汽車の2019年下半期以降の動向を紹介する。


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