ASEANの日系サプライヤー:タイ、ベトナムを中心とする投資動向

電動化などCASEへの対応、中期的な域内の需要増に期待(2020年1月までの動向)

2020/06/25

要約

  本レポートは、ASEAN諸国における日系サプライヤーの2020年1月までの投資動向などをまとめた内容であり、新型コロナウイルスによる各社への影響については言及していない。 (収録対象は2019年6月から2020年1月までの約7カ月間)

  タイの2019年の自動車生産台数は253.3万台で前年比1.7%減、販売台数は171.9万台で同3.9%減、輸出は94.9万台で同7.1%増だった。2020年1~5月は新型コロナウイルスの影響もあり、生産台数が53.4万台で前年同期比40.2%減、販売台数が27.1万台で同38.2%減、輸出は30.1万台で同35.0%減と大幅に減少している。
  インドネシアの2019年の自動車生産台数は128.7万台で前年比4.2%減、販売台数は103.1万台で同10.5%減だった。2020年1~5月は生産台数が52.5万台で前年同期比32.8%減、販売台数が24.8万台で同41.4%減となり、タイと同様に大きく減少している。
  ASEAN主要4カ国では、2019年の生産台数は前年比4.5%減の397万台となり、3年ぶりに減少に転じた。


  なお、2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大による直接の影響や各社の対応については下記コンテンツをご参照ください。

 

中期的な需要増に期待、中国や米国からの生産移管

  ASEAN諸国における2019年の自動車生産・販売台数が落ち込む状況下でも、日系サプライヤーはASEAN地域の中期的な需要増と日米欧向け輸出増を見込み、生産能力の増強を進めていた。ベトナムでは豊田合成がエアバッグ構成部品の第2工場を稼働、旭化成アドバンスがエアバッグ縫製加工の子会社を設立した。トーヨータイヤはマレーシアでSUVや乗用車向けタイヤの新工場を竣工。フィリピンでは三菱製鋼がASEAN地域で初のサスペンション用巻ばね工場を稼働した。
  また、設備の自動化やシステム化により現地工場の生産性向上を図る動きもある。UACJは日本からタイ工場を遠隔操作し、アルミ圧延材の生産性向上を図っている。カネミツはタイのテクニカルセンターでシミュレーション技術を活用した部品開発を進め、セーレンは製品在庫管理の自動化、IoT化を推進。
  さらに、中国や米国からASEANへ生産を移管する動きも見られる。米中貿易摩擦の影響を避けるため、NOKが防振ゴム関連製品の生産を中国からタイに移管。京セラも車載カメラモジュールなどの生産を中国からタイに一部移管。本多通信工業はタイ向けの車載用コネクター生産を中国からベトナムに移管。ユニバンスは米国で生産する四輪駆動装置をタイでの生産に切り替える計画。

 

CASE対応

  ASEAN地域では政府主導で電動化やCASEの推進、環境規制の強化が進められており、部品メーカー各社によるCASE対応も顕著である。
  電動化関連の動きでは、タイで三菱重工がEV向けカーエアコン部品の生産能力増強を進め、大同メタルが電動車用のアルミダイカスト製品の新工場を稼働、ロームはEVなどに搭載するインバーター制御に必要な「磁気式絶縁ゲートドライバーIC」の増産を進めている。ベトナムではサンデンACが電動車向けエアコンコンプレッサーの増産とテクニカルセンターの設立によるEV向けの先行開発を計画。使用済みバッテリーの関連事業も見られ、タイでトヨタグループが海外初のHVバッテリーリサイクル事業を開始、DOWAもHVやEVなどの廃電池の処理事業を開始した。
  CASE関連ではこのほか、パイオニアがカーナビの内外生産拠点再編でタイへの集約化、生産能力増強計画を進めている。日本電産はベトナムで5G/車載向け放熱部品の新工場を建設し、フィリピンではHDD用モーター工場を電動車向けトランクションモーター用に転換する方針。日立金属はベトナムとタイでEPB用ハーネスの生産能力を強化するとともに、フィリピンではサーバーやEV向けの高周波電源トランス向け軟磁性部材の生産拠点を新設する。
  CASEに対応する素材では、タイで大同特殊鋼が特殊鋼の2次加工の生産拠点を新設して、低燃費車やHVなどに対応できる高機能材の供給力を高める。帝人は樹脂コンパウンド工場および開発拠点を新設し、次世代自動車や通信分野での需要を取り込む計画。三井化学はPPコンパウンドの生産能力を増強し軽量化ニーズに対応する。
  また、MaaS関連では、インドネシアで三菱自動車・三菱商事がモビリティサービス大手GOJEKに出資。デンソーと金融サービスのGMSは小型保冷車での輸送実証事業を開始した。

 

ASEAN複数国における日系自動車部品メーカーの動き(生産品目、事業内容など、*新品目投入)

生産能力増強 日立金属(電動パーキングブレーキ (EPB) 用ハーネス:ベトナム、タイ)
提携強化 パイオラックス(工業用ファスナーなど:ベトナム、インドネシアなど)

タイ

新規事業、新会社・工場 高野自動車用品製作所(近距離輸送のEV小型ピックアップトラック)、大同特殊鋼(新工場:特殊鋼の2次加工)、大同メタル(新工場:*電動車用のアルミダイカスト製品)、トヨタ・デンソー・豊田通商(HVバッテリーリサイクル事業)、DOWA(HVやEVなどの廃電池の処理事業)、日本ゼオン(新工場:*アクリルゴム)
生産能力増強、新品目投入、開発拠点設立など <工場増設> 
太陽工業(第3工場:精密プレス部品)、美濃工業(第2工場:アルミダイカスト)

<工場拡張、設備増強など> 
宇部興産(ポリウレタン原料のPCD)、カネミツ(バーチャル試作シミュレーションでの部品設計:変速機部品など)、ケーヒン(トヨタから初受注:エンジン部品)、セーレン(製品在庫管理の自動化:シート素材など)、帝人(*樹脂コンパウンド工場と開発拠点新設)、テクノプラスト(自社工場建設:プラスチック切削加工)、三井化学(設備増強:PPコンパウンド)、山元(工場増築:車載電装部品)、UACJ(熱間圧延機を日本から遠隔操作:アルミ圧延材)、ヨロズ(金型請負生産)、ローム(設備増強:EVなどに搭載するインバーター向けゲートドライバー)
生産移管 NOK(中国からの生産移管:防振ゴム関連製品)、京セラ(中国からの生産移管:車載カメラモジュールなど)、パイオニア(カーナビの内外生産拠点再編でタイに集約化、生産能力増強へ)、ユニバンス(米国からの生産移管:四輪駆動装置)
地域統括、事業統合 旭化成(タイに地域代表会社設立。ASEAN地域の5カ国・16社で自動車用途素材や衣料などの高付加価値型事業)、三菱ケミカル(タイの3社を統合)

ベトナム

新規進出、新生産拠点、テクニカルセンター 旭化成アドバンス(新会社:エアバッグ縫製加工)、サンデンAC(カーエアコン用コンプレッサー増産とテクニカルセンター設立、EV向けを先行開発)、日本電産(新工場:5G対応機器向け放熱部品)、本多通信工業(中国からの委託生産拠点:車載用コネクター)
生産能力増強・新品目投入 <工場増設>
豊田合成(第2生産拠点:エアバッグ部品)、原田工業(第3工場:フィンタイプアンテナ)、メイコー(第3工場:*次世代車の車載向け基板など)
<設備増設>
内山工業(ベアリングシールなど)、南信精機(コネクターなど)

インドネシア

MaaS デンソー、GMS(小型保冷車での輸送実証事業)、三菱自動車・三菱商事(インドネシアのモビリティサービス大手GOJEKに出資)
生産能力増強 スワコ精密(工場拡張:小径精密加工品)

(参考資料:各社広報資料、各紙報道)

 

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タイの自動車工場マップ
(クリックすると拠点マップが開きます)
ベトナムの自動車工場マップ
(クリックすると拠点マップが開きます)

上記以外の国・地域は完成車メーカー工場立地マップよりご参照ください


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<日系サプライヤーの海外事業動向>
  西欧 (2020年4月)
  インド (2019年11月)
  米国・カナダ (2019年9月)
  ASEAN (2019年8月)
  中国全般 (2019年6月)
  中国・華東地区 (2019年5月)
  中東欧 (2019年6月)
  メキシコ (2018年10月)