ASEAN:域内のEVハブ目指すタイとインドネシア、各国がCASE事業を推進

域内で生産体制見直しの動き、ベトナム・ミャンマーで生産拡大へ

2020/05/07

要約

Mitsubishi Xpander Cross
PeroduaのコンパクトSUV「Aruz(アルス)」(2019年1月にマレーシアで発売)
(写真:ダイハツ)

  ASEAN市場では最近、CASE対応の事業が進展している。環境規制の厳格化に対し、各国とも電動化を進めている。タイとインドネシアはASEAN地域の「EVハブ」を目指し、新たな電動化政策を発表。マレーシアも新しい国家自動車政策で、次世代自動車生産の域内ハブを目標としている。タイは2030年までに国内の生産能力の30%、インドネシアは2025年までに生産台数の20%をEVとする目標を表明。電動車向けバッテリー生産や充電ステーションの設置計画も策定している。

  ASEAN市場では配車サービスなどのモビリティサービスや自動運転技術の開発も進められている。インドネシアでは、現代自動車が配車サービス大手のGrabと提携、三菱自動車が同じく配車サービス大手のGojekに出資した。シンガポールでは自動運転バスの実証実験が進められている。

  ASEAN主要4カ国の2019年の生産台数は前年比4.5%減の397万台で、3年ぶりに減少に転じた。生産関連の動きでは、タイでGMが工場を長城汽車に売却し、販売を終了する一方、長城汽車は取得した工場で2022年から生産を開始する。インドネシアでは日産が生産を終了したが、現代自動車が年産能力15万台の新工場を建設する。フィリピンではホンダが生産を終了。ベトナムではFord、起亜自動車、Vinfast、PSAが生産能力を拡充、ミャンマーではトヨタとスズキが新工場を建設する。

  ASEAN主要6カ国の2019年の新車販売は前年比1.5%減の約338万台。2018年まで3年連続で前年を上回ってきたが、2019年は政治不安や米中貿易摩擦の影響等で各国の経済が停滞し、販売が減少した。タイでは自動車ローン審査の厳格化で販売は伸び悩み、インドネシアでは大統領選に伴う不安定な政治情勢で販売が減少。マレーシアはSUVを中心とする新モデルの効果で販売台数は微増。フィリピンは増税に伴う駆け込み需要の影響が残り、販売は微増。ベトナムは非関税障壁となる政令の影響が限定的となり、輸入車販売が大幅に伸びて販売は拡大した。シンガポールは米中貿易摩擦による景気減速で、販売が減少した。


  なお、2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大による直接の影響や各社の対応については、末章のLMC AutomotiveによるASEANの販売予測、ならびに下記コンテンツをご参照ください。


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