タイ: 投資奨励策で9社のHV・PHV・EV計画を認定、バッテリー工場も稼働

2019年は米中貿易戦争の影響などで輸出減、内需回復だが生産は横ばい

2019/07/03

要約

  2018年のタイの生産台数は前年比8.7%増の216万台。車種別では、乗用車が前年比7.0%増、商用車が9.9%増となった。乗用車のうち、タイ政府が認定する低燃費小型車のエコカーは6.5%増、商用車では1トンピックアップトラック(乗用ピックアップ(PPV)を含まない)が11.2%増加し、生産全体に占める比率は49.4%となった。2018年のタイでの販売台数は前年比19.5%増の104万台で、2年連続増加。経済成長に支えられ、国内販売は好調に推移した。一方、輸出は0.1%増の114万台にとどまった。アジア向けは増加したが、中東、欧州、北米向けが減少した。

  タイ工業連盟(FTI)は、2019年の生産台数は前年比0.6%減の215万台と予測。そのうち、国内販売向け生産は、3.5-3.8%の経済成長を背景に前年比0.8%増の105万台。海外輸出向け生産は、米中貿易戦争の影響が輸出先の数カ国で出てきていることから、3.6%減の110万台(生産全体の51.2%)と予測している(2019年1月時点)。

  タイは2014年の軍事クーデター後、軍政が続いていたが、2019年3月に総選挙(下院選)を実施。第2党となった親軍政党「国民国家の力党」は同党を含む計19党の連立で合意し、軍事政権トップのプラユット暫定首相が6月11日に正式に新首相に就任。引き続き政権を握ることとなった。今後、連立政権の新内閣が発足すると、民政に移行する。

  軍事クーデター後、軍政のもとで経済は徐々に回復したが、タイの民主化後退を懸念した先進国からの投資は低迷。民政移行により、海外からの投資が増える見込みだが、軍政より政策の実行力が低下し、19党からなる連立与党の足並みが乱れる可能性もあり、政情不安が経済および自動車業界に影響を及ぼすことが懸念される。

  政府はタイをEV生産のハブとすることを目指し、2017年3月から電動車投資奨励策を実施。2019年5月時点でタイ投資委員会(BOI)は優遇措置を適用する生産計画として、HVとPHVは各4社、EVは1社の計画を承認した。このほか、HVには1社、PHVには4社、EVには19社がBOIに申請しており、認可を待っている。

  生産拠点の動きでは、SUBARUがマレーシアのTan Chongグループと年産能力10万台の合弁工場を建設し、2019年4月に生産を開始。また、商用車メーカーの動きが活発で、Scaniaと三菱ふそうが2019年に新工場を開所。日野自動車はタイでASEAN最適車を開発・生産する新拠点を開設し、2021年に稼働を開始する計画。

タイの車種別自動車生産台数 Honda Accord
タイの車種別自動車生産台数
(出所:FTI資料からMarkLines作成)
2019年5月発売の新型Honda Accord
(バンコク国際モーターショー2019)

 

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