タイの日系部品メーカー:能力拡大、地域統括会社設立、開発機能強化などが続く
アイシンAW、曙ブレーキ、オムロン、JVCケンウッド、信越化学、住友ゴム、トヨタ紡織、日本ガイシ、日本精工など
2015/09/10
要 約
以下は、タイにおける日系自動車部品メーカーの新生産拠点構築、生産能力増強、生産品目拡大、事業体制・開発拠点強化等の動きである (収録対象は、2015年8月下旬までの約12カ月間)。
タイの2015年1-7月の自動車生産台数は、110.1万台(前年同期比0.2%減)と停滞が続いている。消費の低迷、輸出の不振による景気回復の遅れや厳しい銀行のローン審査などから国内販売台数が2015年1-7月に43.0万台(同15.8%減)となっているため。輸出は、同67.8万台(同4.1%増)と比較的堅調である。
このように、国内販売は不振であるものの、タイをグローバル輸出拠点とする日系完成車メーカーの生産能力拡大計画には、いまのところ、大きな変更はない。
・トヨタは2015年の国内販売目標を年初の33万台から7月に28万台に下方修正。輸出に関しては新興国戦略車IMVのピックアップトラックを全面刷新し強化を図っている。
・日産は新工場を2014年7月に稼働させ、国内販売冷え込みを輸出でカバーする計画だったが、輸出も振るわず生産が想定より伸び悩んでいる。しかし、将来的に稼働率はアップするとみており、同工場近隣にサプライヤーパーク新設を検討。部品の調達コストを削減し、競争力強化を図る。
・ホンダは四輪車新工場を2015年中に稼働させる計画を延期し、2016年3月とする方針。
・マツダは、2015年1月に自動変速機工場を稼働し、タイのほか海外の生産拠点に供給。また、同年10月にはエンジン工場も稼働する。
このような動きのなか、日系自動車部品メーカーによるタイ国内での需要増対応や輸出拡大を図るための生産能力増強や生産品目拡大の動きは活発で、一次・二次サプライヤーによる新規進出も続いている。この他、タイでは地域統括会社設立、開発機能強化などの動きも引き続きみられる。
タイにおける日系自動車部品メーカーの動き
新規進出 | アイシンAW(自動変速機)、JSP(発泡ポリプロピレン)、スタイ(鋳造部品の含浸処理)、大同特殊鋼(トランスミッション用型鍛造部品)、トーヨーエイテック(オイルポンプ)、東レハイブリッドコード(タイミングベルト用繊維素材)、ニッタ(ホース、チューブ製品)、パイオニア/インクリメントP(デジタル地図)、福寿工業(エンジン用部品) |
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生産能力増強 | <新工場> 協和工業(ユニバーサルジョイント)、JVCケンウッド(車載カメラ)、大豊工業(バキュームポンプ)、ダイヤモンド電機(点火コイル)、TBK(商用車用エンジン部品)、NiKKi Fron(クラッチ部品)、メイドー(ボルト)、安永(コンロッド)、ユニバンス(トランスファーユニット) <工場拡張> 信越化学(シリコンモノマー)、住友ゴム(タイヤほか) <設備増強> 愛知製鋼(鍛造部品)、旭テック(アルミホイール)、オイレス工業(軸受)、三遠機材(CVT部品)、自動車部品工業(プロペラシャフトなど)、住友電工(アルミ電線)、日本精工(電動パワーステアリング)、三ツ知(工業用ファスナー)など |
生産品目拡大 | 曙ブレーキなど(新会社設立、ブレーキキャリパー用鋳鉄部品)、神戸製鋼所(新合弁会社設立検討、線材)、山陽特殊製鋼(新会社設立、軸受用素形材)、中央発條(現地部品メーカーと技術援助契約、サスペンション部品)、トヨタ紡織(新会社設立、内装部品)、西川ゴム(グラスランチャンネル)、日清紡ブレーキ(新会社設立、商用車用ブレーキ)、日本ガイシ(新会社設立、排ガス浄化用セラミックス)、日本プラスト(第2工場建設、樹脂部品) |
事業体制強化・再編 | NPR(タイにバルブシートの生産調整機能)、日立化成(連結子会社4社を統合)、古河AS(東南アジア統括会社設立)、三菱マテリアル(アジア地域の事業統括会社設立) |
開発・技術センター等 | <新規設立>オムロン(車載製品の設計・開発機能)、河西工業(内装部品の開発センター)、横浜ゴム(タイヤの開発拠点) <拡充・強化> デンソー(技術者増員) |
(資料)各社の計画から作成
なお、タイ以外の東南アジアにおける日系自動車部品メーカーの動きは、2015年4月に掲載した "東南アジアの日系部品メーカー:インドネシア、ベトナム、マレーシア、フィリピン等" に収録した。
日系部品メーカー動向関連レポート:
・ 欧州編 (2015年8月)
・ メキシコへの新規進出 (2015年6月)、メキシコでの増強とブラジルでの動向 (2015年7月)
・ 東南アジア編 (2015年4月)、米国編(2015年3月)
・ 中国編(上):華南・華中・西南での動向 (2015年1月)
・ 中国編(下):華東・華北・東北地域・中国全体での動向 (2015年2月)
・ インド編 (2014年11月)
・ タイ編 (2014年9月)