米国OEM各社のSUV、ピックアップトラック拡販策

米国市場のライトトラック比率は7割超、EV投入計画も本格化

2020/05/12

要約

  過去1年の米国自動車市場を振り返ると、2019年の米国の自動車(ライトビークル)販売は1,710.8万台と対前年比1.2%の減少になったものの、低失業率の継続と株価高に象徴される景況に支えられ、5年連続で1,700万台を超える水準を維持した。2020年に入ってもストライキ後のGM復調も手伝って、1、2月は継続して1,700万台超のSAAR(季節調整済み年率換算販売)を維持し底堅さを示した。しかしながら3月には新型コロナウイルス感染拡大の影響による生産とサプライチェーンの混乱、需要の縮小により、前年同月比38.4%減の99万332台と急激に悪化。4月(速報値)には46.6%減の71万827台と減少率がさらに拡大した。今後の感染拡大による生産、販売減は先の見えない状況になっている。

  自動車業界をとりまく不安定要素となっていた米中の貿易摩擦については、2019年末に米中暫定合意(第1段階の合意)に達したことで、約2年近くにわたって世界経済を巻き込んだ「貿易戦争」が当面の休戦状態に入った。また、NAFTAに替わるUSMCA(米国-メキシコ-カナダ協定)については、2019年12月にメキシコ議会が批准、2020年1月には米国議会両院承認を踏まえてトランプ大統領が署名し、さらに3月のカナダ議会の承認により2020年内の実施に向けた道筋が開けた。しかしながら、業界が一息つく間もなく世界を襲った新型コロナウイルス感染拡大は、生産や販売を直撃するだけでなく、再びOEM各社の商品投入や開発の日程計画にも影響を与え始めている。


  米国市場の需要構造を見ると、乗用車からライトトラック(SUV、ピックアップ)へのシフトが一層進み、一方では電動化を始めとしたCASE分野で実用化や市場投入を見据えた開発競争が激しさを増し、新興メーカーや異業種からの具体的な参入計画が明らかにされてきた。これらを背景に、OEM各社は販売と収益への貢献が期待できるSUV/ピックアップを軸とする商品体系・生産体制の再編、業界内外の合従連衡、そして新たな投資計画の発表を行った。

  本レポートでは、ここ1年余りの米国主要OEMによる新商品投入の実績や発表された計画について、各社の重点分野となったライトトラックに焦点を当てて報告する。
  なお、2020年3月以降のコロナウイルス感染拡大による直接の影響や各社の対応については、末章のLMC Automotiveによる米国市場生産予測、ならびに下記コンテンツをご参照ください。


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