VWグループ(下):2020-2024年にEV、HV、デジタル化に600億ユーロを投資

Fordとの提携を小型商用車から自動運転技術、電動化にも拡大

2019/12/04

要約

ID. SPACE VIZZION
ID.シリーズ7番目のコンセプトカーID. SPACE VIZZION(出典:VW)

  VWグループが2019年6月に改訂した中期経営戦略「Together 2025+」では、「未来の世代のためのモビリティを創造する」ため、今後、さらにグループの変容を加速化し、戦略目標を体系的に達成するとしている。特に、組織のスリム化、ブランド価値向上のためのラインアップ再編、ソフトウェア商品としての車やサービスの開発等を今後の課題としている。2019年11月には同戦略の業績目標を再確認し、2025年までに特別項目を除くグループの営業利益率を7-8%、自動車部門の投下資本利益率を14%超とすることを目指す。設備投資と研究開発費については、2020年以降はそれぞれ売上高比で6%を目標とする。

  2019年11月に修正された次世代技術への投資計画では、2024年までの5年間でハイブリッド化、電動モビリティ、デジタル化に約600億ユーロ(以前は2023年までに440億ユーロ)を投資する計画。そのうち電動モビリティには330億ユーロ(同300億ユーロ)を投資する。10カ年の電動化計画も見直し、2029年までにEVを75車種(以前は2028年までに70車種)、HVを60車種投入する。EVの累計販売台数は2,600万台(同2,200万台)、HVは600万台の計画。

  EVの生産は、2022年までに欧州・米国・中国の18工場で行う計画で、工場の改修・新設を進めている。VWが開発したEV専用のMEBプラットフォームを使用するEVの生産拠点の中心となるのはドイツのZwickau工場で、約12億ユーロを投資して改修。中国では上汽VWの上海・安亭工場と一汽VWの佛山工場、米国ではChattanooga工場がMEBベースのEVの生産拠点となる。

  自動運転の分野ではAurora Innovationとの提携を解消し、Ford傘下の自動運転関連会社Argo AIに投資した。コネクテッドカーの基盤となるクラウドの開発では、引き続きMicrosoftとの提携を強化するが、自社内にもソフトウェア開発ユニットを設立し、ソフトウェアの内製化を進めている。モビリティサービスでは、VWは欧州でカーシェアリングサービスを拡大、インドでは定額利用サービスを開始した。Audiは欧州ではAudi on Demandブランドでモビリティ事業を展開、中国ではネット配車サービスを実施する。

  VWとFordは提携関係を拡大している。2019年1月に小型商用車の開発・生産で提携したが、同年7月には自動運転技術と電動化計画でも協力することに合意。VWはFordの自動運転子会社に投資し、FordはVWのEV用MEBプラットフォームを使用する。また、同年10月には米国の充電ネットワークでも提携することで合意した。


  なお、VW Groupの2019年1-9月期の販売台数と業績、2019年通年の業績見通し、新型車投入計画、中国市場、米国市場、LMC Automotive生産予測については、先に掲載した「VW グループ(上)」をご覧ください。

 

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