米国の日系部品メーカー:受注拡大に対応し、生産能力拡充、新たな生産品目追加

デンソー、小糸製作所、新日鉄住金、曙ブレーキ、ケーヒン、東洋ゴム、ジーテクト、三菱電機など

2014/03/26

要 約

 本レポートは、米国・カナダにおける、日系部品メーカーの生産能力拡充、新品目の生産などの動向についてまとめた(収録対象は、2014年3月中旬までの約9カ月間)。

米国の年次生産台数
 米国の自動車販売(乗用車、小型トラック)は、2013年には1,560万台で前年比7.6%増となった。2014年1~2月の累計販売台数は、前年同期比1.4%減の220.6万台。異常気象による大寒波の中で当初予想を下回ったが微減にとどまった。自動車業界では、販売ペースは依然堅調であり、2014年通年では1,600万台以上と予想している。

 米国での自動車生産も拡大を続け、2013年は前年比7.2%増の1,079万台となった。2014年1月は、前年同月比0.6%増の87.6万台。

 日本メーカーの米国生産は、2013年は前年比9.1%増の362.9万台と堅調に増加。

 中期的に日本メーカー各社は、北米での積極的な生産増強を図っている。トヨタは2013年に3工場で生産能力を拡大。2014年も4工場で増産ないしライン新設を計画している。ホンダは、米国販売車はハイブリッド車を除き、ほぼ全量を北米で生産する計画。日産は、2015年に米国販売車の85%を北米生産車にする計画。


 こうした動きに対応して、日系部品メーカーも生産能力増強を進めている。小糸製作所は、2014年3月までに米国2工場でのヘッドランプ、リアランプの年産能力を100万台分増強し、金型の内製率も引き上げる。設備投資額は80億円。曙ブレーキは、米国4工場でブレーキの生産能力を2016年までに2010年比1.5倍に引き上げる。新しい生産設備の導入・ラインの改造などへの投資額は150-200億円。

 日系部品メーカーによる生産能力増強の多くは、既存取引先の日・米自動車メーカーの増産あるいは新車種用部品の新たな受注などに対応するものだが、新規開拓した取引先からの受注(FCC:クライスラー、豊田合成:GM、フォードなど)もみられる。

 また、従来日本から輸出していた部品を米国で新た生産する動きもみられる。燃費規制強化に対応した軽量化・省燃費強化、ハイブリッド車や電気自動車の米国での生産本格化に対応した関連部品などである(下表)。

分野 メーカー 新たな生産品目
軽量化・
燃費効率など
FCC 紙ベースの摩擦材(日本から生産移管)
ケーヒン 直噴エンジン対応インジェクター
ジーテクト 新軽量化技術のホットスタンプ部品
太平洋工業 超高張力鋼板の車体骨格部品
トピー工業 不等厚リムの乗用車スチールホイール
三井金属鉱業 自動車用および汎用エンジン用触媒
三菱重工 乗用車用ターボチャージャー
UACJ・Constellium パネル用アルミニウム材
ハイブリッド車、
電気自動車
デンソー ハイブリッドシステムのインバーター
標準化したカーエアコン用HVAC
パナソニック・TESLA MOTORS 電気自動車向けの大規模電池工場(計画)
三井ハイテック ハイブリッド車などのモーターコア(検討中)
その他 セーレン 高付加価値合成皮革の内装材(検討中)
大同工業 四輪車用エンジンチェーン
日本精機 ヘッドアップディスプレー
三菱電機 高効率オルタネーターモーターコントローラーユニット


 新規生産拠点設立では、大同工業による米国販社内での四輪車用エンジンチェーン工場建設、三井金属鉱業による自動車触媒の製造・販売新会社設立、パナソニックとTESLA MOTORSによる電気自動車用電池の合弁会社設立計画、UACJとConstelliumによる自動車パネル用アルミニウム材の合弁会社設立計画などがみられる。

 事業強化・生産体制改革では、新日鉄住金とArcelorMittalはThyssenKrupp Steel USA LLCの鋼板工場を買収した。ケーヒンは、新型フィットの廉価部品のグローバル生産体制構築の一環として、「集中生産型」のインジェクター、ECU、熱交換器を日本、米国、タイで集中生産する。八千代工業は、米国の板金事業を売却し、樹脂製燃料タンクやサンルーフ事業に経営資源を集中させる。

 R&D体制強化では、アルパインが親会社のアルプス電気と米国内の研究開発拠点を統合し、次世代カーナビなどの開発を加速。河西工業は、北米開発センターを2014年に稼働させる計画。ジーテクトは、北米の既存子会社の営業・開発機能を分離し、G-NACに営業・研究開発を統合。三菱重工は、米拠点の乗用車用ターボチャージャーの開発人員を増強している。


日系部品メーカー動向関連レポート:
中国編(下):華南・華北・東北などでの動向(2014年3月)、中国編(上):華東・華中地域の動向(2014年3月)
中南米編(下)(2014年2月)、中南米編(上)(2014年2月)、
タイ編(上)(2014年1月)、タイ編(下)(2014年1月)、ASEAN編(2013 年11月)
欧州編(2013年10月)、インド編(2013年8月)、米国編(2013年7月)

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