全固体電池:量産の現状と計画

主要メーカーによるEV向け固体電池の開発・提携状況

2023/02/28

要約

 世界の先陣を切り全固体電池の量産化が期待されたトヨタ/東工大や日立造船による材料開発は日程を延期したが、他社による半/全固体電池(以下固体電池)の上市例は数を増している。それは固体電池特有のメリットが多いためで、「半」固体電池を含め多種の技術が提案されている。ただしEV向け量産で先行するのはスタートアップで、自動車向け電池大手は遅い時期を提示、あるいは現時点で取り組みを明言していない。

 本稿では量産済のリチウムイオン固体電池を、用途によらず取り上げた。また、特に乗用BEVへの採用の動きが活発であるため、各自動車メーカーの公表する計画をまとめるとともに、それら計画に関与するすべての固体電池サプライヤーの製品を概説した。

 (注)本稿では商業ベースでセルの供給ができる状態を量産とした。したがって、たとえ数量が多くとも試作・実証用に供給しているものは量産として扱わなかった。


 これらの固体電池に関する情報は2023年1月までの関係各社によるホームページ、説明会に加え、下記の展示会取材によって収集した。

【名古屋】オートモーティブワールド 第5回 主催:RX Japan株式会社 2022/10/26~28
【関西】二次電池展~バッテリー大阪 主催:RX Japan株式会社 2022/11/16~18
オートモーティブワールド 第15回 主催:RX Japan株式会社 2023/1/25~27
ネプコンジャパン 第37回 主催:RX Japan株式会社 2023/1/25~27
ウェアラブルEXPO 第9回 主催:RX Japan株式会社 2023/1/25~27
菅野 了次 氏による講演 高橋 司 氏の講演
近年、全固体電池の話題が急増したきっかけはトヨタ/東京工業大学が開発した硫化物電解質であり、研究の広がりに多大な影響を及ぼした。同大学の工学博士 菅野 了次 氏による第15回オートモーティブワールド(2023年1月)での講演では、普及にはまだ課題が山積している点が強調された。 硫化物固体電解質の市場投入は、2023年にマクセルが先鞭をつける模様である。その材料であるアルジロダイト型電解質の開発は三井金属鉱業が行った。同社 事業創造本部 高橋 司 氏の第9回【関西】二次電池展における講演では、硫化物各材料の得失やアルジロダイトの特長が説明された。

 

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