中国・華東地区の日系自動車部品サプライヤー:NEV向け製品の生産能力増強

中国企業との提携等で事業体制を強化、新規顧客獲得を目指す

2021/12/23

要約

華東周辺
中国の自動車工場マップ
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華東地区の自動車工場マップ

  本レポートは、中国・華東地区における日系部品メーカーの動向である。(2020年8月から2021年10月までの約15ヵ月間を収録)


  2020年の中国の自動車生産台数は2,523万台(前年比1.9%減)、販売台数(工場出荷台数)は2,531万台(同1.8%減)で、3年連続の減少となった。新型コロナウイルス感染拡大は、2020年3月までは生産・販売に大きく影響したものの、その後回復に向かった。2021年に入ってからも4月までは回復傾向が続いていたが、5月以降は半導体不足に加えて、中国各地での電力制限実施により、前年同月比で2ケタ台の減少を見た。10月以降は改善の兆しが見えつつあり、1~11月累計では生産台数が2,315万台(前年同期比3.7%増)、販売台数は2,346万台(同4.6%増)となっている。

  一方で新エネルギー車(NEV)は、生産・販売台数が共に増加している。2020年の生産台数は136.6万台(前年比7.5%増)、販売台数は135.9万台(同10.3%増)。2021年1~11月累計では生産台数が302.3万台、販売台数が297.2万台と共に前年同期比約170%の大幅増をみている。NEV販売台数に占めるEV比率は82.4%、PHVは17.6%、FCVは0.04%で、この比率はここ数年間ほぼ同じである。


  上汽、一汽、東風、長安、吉利などの中国大手メーカーは第14次五カ年(2021年-2025年)発展計画を発表し、「新四化(電動化、インテリジェント化、コネクテッド、シェアリング)」の整備を加速し、とりわけ自動運転、半導体チップ、水素エネルギー、バッテリーおよび充電/バッテリー交換などを強化するとしている。新興EVメーカーも製品技術の開発と生産能力の拡大などを進めている。VWは中国で全額出資による初のバッテリーシステム組立工場を安徽省に建設し、既存の長沙工場にもバッテリー工場を新設する。トヨタ、日産、ホンダなどの日本メーカーもNEVへの対応を急いでいる。


  日系サプライヤーもこうした動きに対応して、NEV関連の新製品投入や生産体制強化、中国企業などとの提携を進めている。

  新製品投入では、日本精工がEV用高出力シングルピニオンEPSをVWと共同開発し、2023年からVW向けに量産する。ネツレンはEV向け太径高強度バネ鋼線「ITW」を中国メーカー向けに生産開始した。エンビジョンAESCは車載用新型二次電池の新工場を稼働。明電舎は、新たにEV用モーターやジェネレーターを生産する工場を2021年に稼働させる。

  生産体制強化では、日立金属がEVモーター向けネオジム磁石の低コスト生産ラインを新設。コタニがNEV需要も視野にパワートレイン部品の工場を拡張。フェローテックHDがEV向け需要増に対応し、パワー半導体基板の生産能力を2021年度中に増強する。マレリはNEV用のエアコン・熱交換器の新工場を建設中。

  提携による事業体制強化では、ロームが電動車用のSiCパワーモジュールで、正海集団と合弁会社を設立。また、吉利汽車集団とEV用SiCパワーデバイスでの戦略的パートナーシップを締結し、中国の車載部品大手UAESと技術共同実験室を開設した。

  ADAS、自動運転関連では、豊田合成がミリ波レーダー対応エンブレム、インフレーターの生産を開始。日本電波工業はADAS向けの水晶振動子の生産設備増強を進めている。マレリはミリ波レーダーやLiDARなどを手がける中国メーカーWHSTと業務提携。

  車載用半導体関連では、三井ハイテックがリードフレームの生産設備を増強し、フェローテックHDが半導体部材の増産体制構築を進めている。

  既存製品の生産体制強化では、住友化学がPPコンパウンドの5拠点目の製造拠点を新設、セキコーポレーションが2拠点目の精密プレス部品工場を設立、帝人フロンティアがエアバッグ用基布の設備増強を計画、村田製作所が積層セラミックコンデンサの第2工場を稼働、愛知電機がカーエアコン用電動コンプレッサー向けモーターの新工場を稼働した。なお、村田製作所の第2工場と愛知電機の新工場の建設は、新型コロナウイルス感染拡大の影響から、当初計画から各々10カ月、6カ月完成がずれ込んだ。

  新規顧客の獲得では、日本精機がヘッドアップディスプレイを吉利汽車から受注しSUV「領克09」向けの生産を開始し、ヤマハは吉利汽車から標準品の車載オーディアシステムを受注し、量産を開始した。


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<日系サプライヤーの海外事業動向>
  ASEAN (2021年11月)
  インド (2021年10月)
  メキシコ (2021年7月)
  米国・カナダ (2021年4月)
  中東欧 (2020年12月)
  中国全般 (2020年10月)
  中国・華東地区 (2020年9月)
  ASEAN (2020年6月)
  西欧 (2020年4月)

 

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