メキシコ・ブラジルの日系部品メーカー:工場拡充、新規取引先開拓など

アイシン精機、カルソニックカンセイ、ケーヒン、ジェイテクト、日立オートモティブシステムズ、ヨロズなどの動向

2014/10/14

要 約

Thailand Map
(地図をクリックすると拠点マップが開きます)。

 本レポートは、中南米における日系部品メーカーの動向レポートの後編。メキシコにおける生産能力向上などと、ブラジルにおける動向の動向についてまとめた(収録対象は、2014年9月中旬までの約10カ月間)。メキシコにおける新規進出の動向についてまとめた前編はこちら

 メキシコでは、日産、ホンダ、マツダの3社がそれぞれ新工場を2013年末から2014年始にかけて稼働させた。今後、アウディ、日産とダイムラーの合弁、BMWなどの新工場などが、2015年以降に建設される計画。

 これに対応し、日系部品メーカーは、新規進出だけでなく、生産能力増強への動きも早い。新規取引先の開拓や生産品目の追加もみられる。

 一方、ブラジルへの日系部品メーカーによる、新規進出はそれほど多くない。生産能力増強では生産品目の追加の動きも見られた。

 日系部品メーカー動向関連レポート:
メキシコへの新規進出 (2014年10月)
タイ編 (2014年9月)
インドネシア編 (2014年6月)、ベトナム/マレーシアなど編 (2014年6月)、欧州編 (2014年7月)、米国編 (2014年3月)
中国編(下):華南・華北・東北などでの動向 (2014年3月)、中国編(上):華東・華中地域の動向 (2014年3月)
中南米編(下) (2014年2月)、中南米編(上) (2014年2月)、
インド編 (2013年8月)

メキシコでの生産能力拡充 ( )は生産品目

既存工場の設備・
生産ライン増設
 アーレスティ(アルミダイカスト部品)、今仙電機(シートアジャスター)、河西工業(トリム)、住友電装(ワイヤーハーネス)、デンソー(新たに変速機部品)、ニッパツ(懸架ばね)、南条装備(内装部品)、ニフコ(ファスナー)、古河電工(バッテリーステートセンサー)、山下ゴム(ゴム製品)など
建屋・工場の増設  建屋増設:カルソニックカンセイ(コックピットモジュールなど)、 ケーヒン(新たにコンデンサー、インジェクター)第2工場:ジーテクト(CVT用部品)、太平洋精工(金属部品)第3工場:日立オートモティブシステムズ(ピストン・アルミダイキャスト部品)

ブラジルでの事業展開 ( )は生産品目

新会社設立、
新規工場稼働
 アイシン・エーアイ(マニュアルトランスミッション)、アドヴィックス(ブレーキブースター、マスターシリンダー)、TPR(シリンダーライナー)、三井物産(鋼材加工)、ヨロズ(サスペンション部品)、古河電工(自動車関連部品の販売会社)など
生産能力増強  アイシン精機(新たにエンジン、ダイカスト部品)、ジェイテクト(新たにコラム式パワーステアリング)、タチエス(シートの一貫生産)



メキシコ Guanajuato州、Jalisco州、Mexico州での生産能力増強など

 

会社名 活動内容
今仙電機
2014年3月に増資し、アジャスター製造ラインを増設へ
今仙電機は、2014年3月にImasen Mexico Technology S.A. de C.V.(Guanajuato州)に設備投資資金の一部とするため約10億円増資。シートアジャスターの製造ラインを増設し、北米や中南米での日系自動車メーカーの需要拡大に対応する。あわせて現地での内製率向上を図る。
河西工業
2014年度に既存工場の設備増強、ドアトリム生産の第3工場も検討
河西工業は、Kasai Mexicana, S. A. de C .V(Guanajuato州Leon市)の既存工場に2014年末から2015年にかけて成形天井生産のためのプレス機を導入する。また、自動車メーカーの生産拡大を見込み、ドアトリムの生産を含めた第3工場設立を2014年度に検討する。
ジーテクト
CVT用精密部品などの新工場建設へ、2015年末~16年の稼働目指す
ジーテクトは、CVT用の精密部品や小物プレス部品を生産する新工場建設する。ホンダの2015年後半からのCVTを生産、ジヤトコのCVT増産に対応し、2015年末から16年の稼働を目指す。立地は既存工場(Guanajuato州)とは別で、ホンダのCVT工場(Guanajuato州)やジヤトコの工場(Aguascalientes州)の近くを検討。
太平洋精工
2014年9月に第2工場稼働、シートの金属部品生産、2015年にはヒューズ生産
太平洋精工は、PEC de Mexico,S.A. de C.V.(Baja California州)の第2工場(Guanajuato州)が2014年9月に稼働。金属部品の生産を開始。投資額は約20億円。2015年には同工場に自動車用ヒューズの生産設備も導入し、生産を開始する計画。第1工場と合わせてヒューズの月産能力を1000万本と2倍に増強する。
大同メタル
エンジン軸受の増産計画を更に拡大へ
大同メタル工業は、2013年7月に生産開始したDaido Metal Mexico S.A .de C.V. (Jalisco州)のエンジン用軸受の年産能力は、スタート時に25万台分。2014年度までに、日本、タイ、チェコから北米向けに供給しているエンジン軸受の生産の大半をメキシコ工場に集約する計画。2016年度までに新規受注の増加を見込み500万台分に引き上げる計画だったが、日米メーカーからの受注が当初計画を上回っているため、もう一段の投資計画を策定する。
ニッパツ
懸架ばね事業などの強化のため社債発行
ニッパツは2014年9月、約1億ドルの社債発行を発表。2015年12月までの運営・設備投資等の資金用。用途はNHK SPRING MEXICO, SA. DE C.V. (Guanajuato州)の懸架ばね(スタビライザー及びコイルばね)事業の設備投資資金として約1400万ドル、他のメキシコ子会社用に800万ドル、米国子会社4社の設備投資資金約6500万ドル、次世代軽量化巻ばねの研究開発投資資金約500万ドルなど。
ニフコ
現地子会社に増資、需要拡大に対応
ニフコは、ファスナーや内装品を生産するNifco Central Mexico S.de R.L.de C.V..(Guanajuato州)に2013年11月に360万ドル増資。北米の需要拡大に対応し、合成樹脂成形品事業の強化を図るもので、増資後の資本金は960万ドル。
日立オートモティブシステムズ
ピストン、アルミダイカストの第3工場建設、生産開始は2015年5月
日立オートモティブシステムズは、Hitachi Automotive Systems Mexico S.A. de C.V.(Mexico州)の第3工場としてピストンやアルミダイキャスト部品を生産する新工場を建設し、2015年5月から生産開始する。敷地面積は約18万平方メートル。順次生産品目を拡大し、北・中南米向け供給体制を強化する。

 

 



メキシコ San Luis Potosi州での生産能力増強など

 

会社名 活動内容
ケーヒン
コンデンサー、インジェクターの新ライン設置
ケーヒンは、2013年7月に稼働したKeihin de Mexico S.A. de C.V. (San Luis Potosi州)の新工場の敷地内の新建屋に自動車空調用コンデンサーのラインを設置し、2014年夏にフォルクスワーゲン向け製品の量産を開始する。年産能力は75万台分。また、同工場と米国インディアナの工場に直噴エンジン対応インジェクターの生産ラインを新たに設置し、2015年から量産する。米国工場は部品精度が求められる工程、メキシコ工場は手作業など労働集約型の工程を担う。投資額は約4000万ドル。2016年の年産能力は、日本と米州を合わせて約650万本。
南条装備
内装部品の新工場の生産能力を増強計画
南条装備工業は、2014年1月に生産開始したミドリ安全との合弁会社Midori- Nanjo Auto Interior(San Luis Potosi州)で内装部品の生産能力を増強する。マツダのメキシコ工場への供給に加えて、別の日系メーカーから北米で2015年春に生産開始する次期車種の内装部品を受注。約1億円を投じて生産能力を現状比3割増強する。

 

 



メキシコ Aguascalientes州、Zacatecas州への生産能力増強など

 

会社名 活動内容
アーレスティ
2015年度にアルミダイカスト部品の生産能増強
アーレスティは、Ahresty Mexicana, S.A. de C.V.(Zacatecas州)に約48億円を投じて工場を拡張し、設備を増強。2015年度のエンジンや変速機などのアルミダイカスト部品の年産能力を2013年度比2割強引き上げる。現地の日系メーカーのほか欧米系の部品メーカーにも販売を拡大する。
カルソニック
カンセイ
既存工場の建屋を増築し、生産能力拡張
カルソニックカンセイは2013年12月、Calsonic Kansei Mexicana, S.A. de C.V.(Aguascalientes州)のSan Francisco工場で建屋を増設し、コックピットモジュールなどの生産能力を増強したと発表。日産の第3工場稼働に対応し供給体制を強化。マツダ向けにも熱交換部品の生産を開始。将来的には、ダイムラーへの供給も狙う。
ジヤトコ
CVT生産の第2工場が2014年9月に稼働
ジヤトコは、JATCO Mexico, S.A. de C.V.(Aguascalientes州)の第2工場が2014年9月に稼働。投資額は約205億円。CVTの年産能力は40万台で、第1工場と合わせて170万台。第2工場は日産の第2工場近くに立地。中・大型車用とハイブリッド車用の2機種のCVTを生産。
山下ゴム
メキシコでの内製化、生産拡大を計画
山下ゴムは、ゴム製部品の新興国での生産比率を2016年度以降に8割以上に引き上げ、日米での比率を引き下げる。世界生産の5割弱を占める米州では、メキシコの生産比率を現状の約半分から8割に高める。YUSA AUTOPARTS MEXICO, S.A. DE C.V.(Zacatecas州)では材料などの内製化も計画。(2014 年7月報道)

 

 



メキシコ 米国との国境沿いの州などでの生産能力増強

 

会社名 活動内容
SMK
高解像度車載カメラモジュールの生産を検討
SMKは、車載用カメラモジュールの生産規模を2013年度の3倍の年10万個レベルに引き上げる。2014年に納入先の欧米自動車メーカーから高画素・高解像度の車載用カメラモジュールを追加受注したためで、日本の製造拠点に加え、メキシコのSMK製造拠点(Baja California州Tijuana市)の活用を検討。製造工程を自動化する工作機械の導入などで増産に対応する。
住友電装
ワイヤーハーネスの生産能力増強
住友電装は、2014年度にグループ会社のConductores Technologicos de Juarez, S.A. de C.V.(Chihuahua州)とAutosistemas de Torreon S.A. de C.V.(Coahuila州)の3つのワイヤーハーネス工場で組み立て作業に関わる設備を新たに導入して、生産能力を2013年度比2割程度増強。特に非日系メーカーとの取引拡大を図る。投資額は約80億円。
デンソー
第1工場を拡張し、変速機部品を2015年12月から生産
デンソーは、Denso Mexico, S. A. de C .Vの第1工場(Nuevo Leon州)を拡張して製造ラインを新設し、2015年12月から変速機部品を生産する。メキシコでは初の生産。投資額は5380万ドル。北米での自動車生産の拡大に対応。また、グループ会社の浜名湖電装がメキシコ子会社のHamaden Mexico S.A. de C.V.(Nuevo Leon州)を2014年4月に設立。エンジン制御用ソレノイドなどを2016年8月頃に生産開始予定。投資額は3580万ドル。北米、南米に供給する計画。
古河電工
バッテリーステートセンサーの生産能力増強を2015年以降に計画
古河電気工業は、Furukawa Mexico, S.A. de C.V.(Baja California州)の工場でアイドリングストップシステム用の電池の充電状況を感知する「バッテリーステートセンサー」を生産。現在は1生産ラインだが、受注増に備え2015年以降に生産能力の増強を図る計画。

 



ブラジル 新生産拠点の構築、生産能力増強

  ブラジルでの、2014年1-9月の自動車生産台数が238万台(前年同期比16.8%減)、新車販売台数が253万台(同9.1%減)、輸出台数が26万 台(同38.5%減)。新車販売は経済成長の減速・インフレ・金融引き締めなどの影響を受けている。輸出は、アルゼンチン向けの減少が大きく影響。
 自動車メーカー各社は生産調整を続けている。政府は、輸入車などへ工業製品税率を上乗せするなど国内の産業保護策を取って、海外メーカーに対して国内での生産能力を強化する投資を促している。

会社名 活動内容
アイシングループ
グループ3社で生産体制拡充
アイシン精機は、車体系部品の生産会社AISIN AUTOMOTIVE LTDA.(以下、AAL、Sao Paulo州)の敷地内に新建屋を建設。ダイカスト設備を導入して、新たにエンジン部品、ダイカスト部品の生産を2016年2月に開始する。2016年度の売上高は73億円を見込む。
アイシン・エーアイは2013年9月にAisin AI Brasil Industria Automotiva Ltda.(AALの敷地内)を設立し、マニュアルトランスミッションの現地生産を2014年8月から開始。2016年度の売上高は60億円を見込む。
アドヴィックスはADVICS Automotiva Latin America LTDA.(AALの敷地内)を2014年3月に設立し、2015年10月からブレーキブースター、マスターシリンダーを生産開始予定。2016年度の売上高は46億円を見込む。2社とも取引先からの受注を契機にブラジルに初進出。
河西工業
ブラジルでの供給スキーム検討
河西工業は、2014年度の世界の生産体制拡充の中で、アライアンスとの提携が不可欠としているが、ブラジルにおいても事業スキームの検討を行う。
ジェイテクト
電動パワーステアリングの一貫生産開始
ジェイテクトは、JTEKT AUTOMOTIVA BRAZIL LTDA.(Parana州)の工場を拡張して新たにコラム式パワーステアリングの生産ラインを設置。2014年2月から一貫生産を開始。これまでは日本からコラムユニットを輸出して現地でアッセンブリーしていた。投資額は約30億円。
タチエス
シート用フレームの一貫生産へ
タチエスは、TACHI-S do Brasil participacoes Ltda. (Rio de Janeiro州)でシートの一貫生産を早ければ2015年秋に開始する。現在は、フレームをメキシコから送りブラジルでトリムカバーなどを合わせてシートを組み立てているが、ブラジルのサプライヤーからフレーム部材を調達し、コスト削減を図る。
TPR
アルミブロックエンジン用のシリンダーライナー生産会社設立
TPRは2014年7月、アルミブロックエンジン用のシリンダーライナーの生産拠点TPR Industria de Pecas Automotivas do Brasil Ltda.(Sao Paulo州)を設立。工場は2016年1月に生産開始予定(2015年6月との現地報道もある)。2018年には年産300万本を計画し、トヨタ他の日系メーカーや欧米メーカーに供給する。総投資額は30億円。
西川ゴム
米提携先の自動車用ゴム会社に出資へ
西川ゴムは、提携先の米Cooper Standard Automotive, Inc.の現地生産会社に2014年度中に40%出資する計画。ブラジルでの自動車用ゴム製品生産での日系取引先の要請に対応する。
古河電工
南米初の自動車関連部品の販売会社設立
古河電工は2014年7月、車が衝突した際に衝撃を感知するセンサーとエアバッグをつなぐ部品のステアリング・ロール・コネクター(SRC)の販売会社をブラジルに設立。自動車関連部品では南米初の営業拠点。当面はメキシコの工場からSRCを調達するが、将来的には現地生産も検討。
三井物産
鋼材加工の合弁会社が2014年8月に商業生産開始
三井物産は、自動車向けの鋼材加工・販売事業会社 MAG Alianca Automoveis do Brasil SSC S.A. (Rio de Janeiro州)をArcelorMittal Gonvarri Brasil S.A.と折半出資で設立。資本金は約45億円。2014年8月に商業生産を開始。日産の現地工場向けの鋼材加工を手掛ける。加工能力は、年間16万トン。
ヨロズ
サスペンション部品等の工場が2014年7月に生産開始
ヨロズは、サスペンション部品などを生産するYOROZU AUTOMOTIVA DO BRASIL LTDA.(Rio de Janeiro州)の新工場が2014年7月に稼働開始。総投資額は約74億円。フル操業時の売上高は約52億円の計画。

(参考資料:各社広報資料, 各紙報道)

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>