中南米の日系部品メーカー(上):米州をカバーする工場をメキシコに新設

FCC、小糸製作所、ジェイテクト、ニッパツ、八千代工業などの動向

2014/02/24

要 約

Thailand Map メキシコの2013年の自動車生産台数(大型バス・トラックを除く)は293万台(前年比1.7%増)、輸出台数は242万台(同2.9%増)、販売台数は106万台(同7.7%増)と小幅増加ながらいずれも過去最高を更新した。販売台数では中古輸入車増が新車販売増を阻害したとみられている。輸出は、米国向けが前年比9.5%増加したものの、景気が低迷している欧州向けが32.3%減と大きく落ち込んだ。

2014年1月は、生産台数が前年同月比2.7%増で新記録の24.9万台、輸出台数は同0.4%減の17.8万台、販売台数は同1.5%増の8.6万台。

こうした中、日系自動車メーカーの生産能力が、米州全体への輸出拠点として一段と強化されている。アグアスカリエンテス(Aguascalientes)州では日産が2013年11月から年産能力17.5万台の新工場を稼働。
グアナファト(Guanajuato)州では、マツダが同14万台の工場を2014年1月から、ホンダが同20万台の工場を2月から、それぞれ稼働させた。

日系自動車部品メーカーでは、完成車メーカーの生産能力増への対応、米州全体をカバーする拠点づくりなどのため、メキシコへの新規進出や生産能力増強投資が続いている。

本レポートは、メキシコにおける日系部品メーカーの新規工場設立についてまとめた。(収録対象は、2014年2月上旬までの約9カ月間)。メキシコにおける生産能力向上などの動向、ブラジルにおける動向については、別途報告したします

[メキシコでの新規工場設立]

主としてメキシコでの需要増に対応 旭硝子(メキシコに再進出)、ニッパツ、新日鉄住金、ジェイテクト八千代工業など
米州をカバーする拠点 イビデン、FCCケーヒンエフテック大同メタル(北米に再進出)など
米国工場と連携してコスト削減 今仙電機ケーヒン豊田合成など

日系部品メーカー動向関連レポート: 中南米の日系部品メーカー(下):メキシコでの生産能力増強とブラジルでの動向 (2014年2月)
タイ編(上) (2014年1月)
タイ編(下) (2014年1月)ASEAN編 (2013 年11月)欧州編 (2013年10月)インド編 (2013年8月)
中国 (華北/東北/西南地域) 編 (2013年8月)
中国 (華南/華中地域) 編 (2013年7月)中国 (華東地域) 編 (2013年6月)
米国編 (2013年7月)メキシコ・ブラジル編 (2013年5月)



グアナファト(Guanajuato)州、ハリスコ(Jalisco)州、ケレタロ(Queretaro)州への新規進出

企業名 活動内容
今仙電機

シート部品工場が2014年1月に稼働

今仙電機は、Imasen Mexico Technology S.A. de C.V.(Guanajuato州)で約10億円を投じて新工場を建設し、2014年1月に自動車用シートアジャスターの生産を開始。今仙電機の米国オハイオ州工場から移管した部品の溶接を新工場が手掛け、オハイオ工場に送り、完成品に組み立てるもの。現地の安い人件費を活かし、北米全体での生産能力を拡充する。また、新工場の生産量が当初予定よりも増えるため、第2期工事を1年前倒しの2014年度に行う。
臼井国際産業

自動車用配管の加工工場が2014年8月に稼働へ

臼井国際産業は、Usui International Manufacturing Mexico, S.A. de C.V. (Guanajuato州)に20億円を投じて、自動車用燃料配管加工の新工場を建設。2014年8月の稼働を予定。日本で棒状の配管を製造してメキシコ工場に運び、曲げ加工をして仕上げる。アジア・北米地域での生産体制増強の一環。
エフテック

サスペンション部品の新工場が2014年1月稼働

エフテックは、F&P MFG.DE MEXICO S.A. DE C.V.(Guanajuato州)の新工場が2014年1月に稼働。サスペンション部品のサブフレームやペダルなどの足回り部品を生産。納入先はGM、ホンダ。2018年度のフル操業時に売上高約7,900万米ドルを計画。
サンショー

プラスチック部品工場が、2014年3月に操業へ

サンショーは、SANSHO MEXICANA, S.A.de C.V. (Queretaro州)の新工場が2014年3月に操業開始する。ウィンドレギュレ-タ-用のハウジング部品などプラスチック射出成型品を製造し、2014年に約1億円の売上高を見込む。現地の日系部品一次サプライヤーに納入。将来は北米・南米向けも視野に入れている。
新日鉄住金

自動車用鋼管の合弁工場が2013年に稼働

新日鉄住金は、合弁会社Nippon Steel & Sumikin Pipe Mexico ,S.A. DE C.V.(Guanajuato州)の新工場でミドル・ハイグレード領域の自動車用鋼管生産を2013年5月末に開始。月産能力は約2,000トン。日系及び欧米系自動車メーカー及び自動車部品メーカーに供給する。出資構成は日鉄住金鋼管55%、SPTアンドSCインベストメント25%(日鉄住金鋼管75%、住友商事25%出資)、メタルワン20%。
住江織物

フロアマット工場が2014年から本格稼働

住江織物は、Suminoe Textile de Mexico, S.A. de C.V.(Guanajuato州)を2013年6月に設立。2014年に工場を本格稼働させ、早期に月4万台分のフロアマットを量産する。マツダ、ホンダ、日産の現地工場に納入。将来はフロアカーペット、天井材など生産品目の拡充を視野に入れている。
ニッパツ

スタビライザー、コイルばねの生産会社設立

ニッパツは、NHK SPRING MEXICO, S.A.DE.C.V.(Guanajuato州)を2013年9月に設立。当初計画のスタビライザーに加えて、冷間成形コイルばねも生産。新工場は従来計画から8カ月前倒して、2015年2月に生産開始する。メキシコ市場の拡大に対応し2018年度に売上高2900万ドルを目指す。
大同メタル

北米向けエンジン用軸受生産を2013年に開始、北米への再進出拠点

大同メタル工業は、Daido Metal Mexico S.A .de C. V.(Jalisco州)で自動車エンジン用軸受の生産を2013年7月に開始。投資額は30億円。初年度の年産能力は25万台分でスタート。従来、米国向けには日本、タイ、チェコから供給していたが、メキシコ工場に順次切り替える。2014年からはメキシコ等での日系自動車メーカーからの新規受注向け生産も増加するため、年産能力を2016年までに500万台分に拡大する計画。追加投資額は30億円。将来は、ブラジル向け拠点としても活用する意向。2015年の単年度黒字を狙う。
ヒルタ工業

サスペンション部品の生産開始

ヒルタ工業は、Hiruta Mexico Co., Ltd.(Guanajuato州)の工場建屋を2013年6月に完成し、同年末までにサスペンション部品などを生産開始。メキシコ国内の日系自動車メ-カーや部品メーカーに納入する。2016年に25億円の売上を計画。
八千代工業

燃料タンク、サンルーフ生産の新工場が2013年11月に操業開始

八千代工業は、Yachiyo Mexico Manufacturing S.A. de C.V.(Guanajuato州)を2012年2月に設立。新工場は2013年11月に操業開始。燃料タンクとサンルーフそれぞれ年20万台の生産能力。ホンダがメキシコ工場で生産するCR-V、Vezel、フィット向けに供給するため、米国のOhio州、Alabama州の2工場から生産を移すもの。
ユタカ技研

排気・駆動系部品生産の新工場が2014年1月の操業開始

ユタカ技研は、YUTAKA TECHNOLOGIES DE MEXICO S.A. DE C.V.(Guanajuato州)の新工場が2014年1月に操業開始。ホンダの北米での増産に対応し、トルクコンバーター、排ガス浄化システム、サイレンサーを年間20万台供給する。同工場は、ユタカ技研の米国の既存工場に構成部品を送る役割も担い、これにより北米事業の利益率を改善する。

 



サン・ルイス・ポトシ(San Luis Potosi)州への新規進出

 

企業名 活動内容
旭硝子

メキシコに再進出、2016年から自動車用ガラス生産へ

旭硝子は2013年11月、AGC Automotive Mexico S.A.de C.V.(San Luis Potosi州)を設立し、2016年初頭から自動車用合わせガラスを生産すると発表。新工場の能力は年産150万台だが、まず約75万台の能力で立ち上げ、需要動向に合わせて設備を増強していく。これまでは米国工場からメキシコへ出荷してきたが、生産を現地化する。同社は2007年にメキシコ生産から一時撤退していた。
イビデン

DPFの生産拠点新設、2015年から工場稼働

イビデンは、2013年8月にIBIDEN Mexico, S.A.de C.V.(San Luis Potosi州)を設立。新工場を建設し、2015年6月にDPF(粒子状物質減少装置)を生産開始する計画。総投資額は130億円。現在米州へは日本、ハンガリーからDPFを輸出しているが、米州をカバーする生産拠点とする。
FCC

CVTのクラッチ生産工場が2015年度に稼働へ

FCCは、2013年6月にFCC AUTOMOTIVE PARTS DE MEXICO, S.A. DE C.V. (San Luis Potosi州)を設立。新工場を建設し、2015年度にCVTのクラッチを生産開始し、ホンダのメキシコ変速機工場に納入する。また、FCCの米国工場を補完し、フォードや独ZFなどの北米の顧客にも対応する。2017年度に約60億円の売上高を目指す。
ケーヒン

エアコン部品などの量産を2013年7月開始、2014年度はエンジン部品の生産も

ケーヒンは、2012年2月に設立したKEIHIN DE MEXICO S.A.DE C.V.(San Luis Potosi州)の工場で、インテークマニホールド、エアコン用コンデンサーなどの自動車部品の量産を2カ月前倒して2013年7月に開始。米国拠点の供給力にやや不安があり、メキシコ工場の稼働でカバーする。また、2014年度には、V6気筒エンジン部品のうち労働集約型生産に向く部品を北米工場からメキシコ工場に移管し、競争力を高める。
小糸製作所

新工場が2014年7月に稼働予定、ヘッドランプ、フォグランプなどを生産

小糸製作所は、North American Lighting Mexico, S.A. de C.V.(San Luis Potosi州)の新工場が2014年7月に稼働予定。年100万台分のヘッドランプ、フォグランプなどの照明機器を生産する。主な納入先は、トヨタ、日産、ホンダ、GM、フォードなどの日米メーカー。米国Paris工場(Illinois州)も年100万台分が増強され、北米全体で2014年度に年500万台分の生産体制が整う。
ジェイテクト

電動パワーステアリングの生産拠点設立

ジェイテクトは、JTEKT AUTOMOTIVE MEXICO, S.A. DE C.V.(San Luis Potosi州)を2014年2月に設立。約80億円を投じて電動パワーステアリング(EPS)の年産能力約90万台分の工場を建設し2015年末に稼働させる予定。当面は、メキシコの日系自動車メーカーの小型車向けに供給する。
倉庫精練

シート材工場が2014年に稼働

倉庫精練は、SOKO SEIREN MEXICANA,S.A.DE C.V.(San Luis Potosi州)を2013年1月に設立。自動車用シート材新工場を2014年5月に稼働予定。日系シートメーカーに納入する。2016年に年間140万メートルの生産を見込む。
中央精機

自動車用アルミホイール生産会社を設立

中央精機は、自動車用アルミホイールの生産会社Central Motor Wheel of Mexico Co., Ltd.(San Luis Potosi州)を2013年8月に設立。工場の操業開始は2015年8月予定。生産能力は年50万個からスタート。当初は全量を米国のトヨタに供給し、その後は他社にも拡販する計画。市場の状況を見て順次生産能力を増強予定。

 



アグアスカリエンテス(Aguascalientes)州への新規進出

 

企業名 活動内容
北川鉄工所

鋳鉄鋳物の生産工場が2014年5月から量産開始

北川鉄工所は、日鉄住金物産との合弁会社KITAGAWA MEXICO, S.A. de C.V (Aguascalientes州)の新工場で、2014年5月から自動車部品用の鋳鉄鋳物の製造・加工の量産開始し、月産500トンを見込む。
昭芝製作所

プレス部品生産を2013年12月に開始

昭芝製作所は、2013年にSANSHO MEXICANA, S.A.de C.V. (Aguascalientes州)を設立。同年12月にレンタル工場でエアバッグやシートフレームなどのプレス部品を生産開始し、日系部品一次サプライヤーを中心に供給する。5年後に売上高10億円を目指す。(2013年6月報道)
富士機工

A/Tシフター生産の新会社を設立

富士機工は、自動車用A/T シフター等を製造するFUJIKIKO MEXICO, S. A. DE C. V. (Aguascalientes州)を2013年9月に設立。資本金は260万ドル。生産開始は2015年春の予定。日産を中心に現地の日系メーカーに売り込む。
横浜ゴム

エアコンホースを現地企業で委託生産し、2014年夏から納入

横浜ゴムは、米国子会社YH Americaがメキシコで自動車用エアコンホースの生産を開始する。メキシコ進出の日系自動車メーカーに2014年夏から納入を開始する計画。投資負担が少ない現地生産請負企業への生産委託方式。米国ビッグスリーとの取引拡大も狙う。生産はAguascalientes市近郊で行われる。

 



米国との国境沿いの州への新規進出

 

企業名 活動内容
新日鉄住金

溶融亜鉛めっき鋼板の合弁工場が2013年に稼働

新日鉄の現地合弁会社TENIGAL S.de R.L. de C.V.(Nuevo Leon州)の新工場が2013年8月に生産を開始。工場は日本国内と同等の最新鋭設備を備え、外板・高張力鋼板を含む高級・高品質の自動車用(合金化)溶融亜鉛めっき鋼板を製造。年産能力は40万トン。メキシコの日系自動車メーカー等に供給。新工場への出資比率は、新日鉄住金49%、Ternium 51%。
豊田合成

自動車用ゴムホースの生産会社設立、2015年の生産開始

豊田合成は、Toyoda Gosei Rubber Mexico, S.A. de C.V.(Tamaulipas州)を2013年7月に設立。新工場は建屋を賃借して設備を導入。2015年2月にフューエルホースやウォータホースを生産開始予定。北米地域のコスト競争力を高めるために、米Kentucky工場の生産品目の一部を移管するもの。トヨタの北米工場に納入する。中期的にはメキシコの他の自動車メーカー工場からの受注も図る。
樋口製作所

エアバッグ部品の新工場設立

樋口製作所は、Higuchi Manufacturing Mexico S. DE R.L. DE C.V. (Coahuila州)を設立し、プレス加工工場を建設する。2014年8月にエアバッグを膨らませるためのガス発生装置の火薬を入れるケースやシートベルトの収納ケースなどの安全部品を生産開始する。中南米地域で、大手メーカーからの受注が増えるとみて投資を決定。

 

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>