米国市場:バイデン政権がEV推進・半導体強化の計画を発表
半導体不足により米国市場の在庫は180万台割れ、販売への影響も懸念
2021/07/12
- 要約
- バイデン大統領のEV化促進計画
- インフラ整備へ2兆ドルを投資する計画を発表、議会との交渉が続く
- サプライチェーンの見直し:半導体の米国内生産強化を目指す
- 半導体供給不足の背景
- 米国市場の在庫が180万台を割り込み、在庫確保がディーラーの最大の関心事
- LMC Automotive販売予測:米国の2024年ライトビークル販売は1,694万台
要約
本レポートは、2021年半ば時点の米国市場について、バイデン大統領の就任後の動きと、半導体不足の問題の影響と見通しについて報告する。
米国の新車販売台数(1~6月) (出典:MarkLines月次販売台数データより作成) |
バイデン大統領は、就任した日から相次いで多くの大統領令に署名している。自動車業界関連では、燃費規制の見直しを指示、また連邦政府の各機関が使用する約64.5万台の車両を米国で米国人によって生産されたEVに置き換え、自動車産業に新たな100万人の雇用を生み出すと発表した。
3月31日にはインフラ整備に約2兆ドルを投資する方針を発表。その一環として消費者のEV購入支援に1,000億ドル、全米に50万基の充電ステーションを設置する150億ドルなどEV化促進に総額1,740億ドルの投資を計画する計画であった。しかし巨額の投資計画であり、6月23日には内容を絞って総額1.2兆ドルとしたインフラ整備計画で暫定合意したものの、最終決着に向けた調整にはなお時間がかかる模様。
また、米国議会上院は6月8日、総額2,500億ドルのU.S. Innovation and Competition Actを可決した。AI、バッテリー、半導体など幅広い先端技術の開発と製造で中国に対抗する超党派の提案で、うち520億ドルは半導体の研究、開発、製造の支援に充当する。
2021年初には、半導体不足の問題は2021年下期に解消に向かうと考えられたが、現在では短期的な解決は困難で2022年以降まで続くと見られている。北米のOEM各社の完成車工場は、半導体不足のため生産休止を繰り返しており、2021年初めから5月半ばまでに、北米で予定していた約100万台の完成車の生産が停止された。
一方、米国での新車販売台数は新型コロナウイルス蔓延の影響に対応する米国政府の手厚い支援策と、ワクチン接種の拡大に伴う経済活動再開により、3月から急回復し、3月のSAAR(季節調整済み年率換算販売)は1,800万台、4月は1,854万台、5月は1,709万台となった。
その結果、米国での新車在庫は1月1日の300万台から6月1日には178万台に減少した。販売店は旺盛な需要と在庫不足を背景に、かつてないほど収益をあげているが、在庫の確保が最優先の関心事になっているという。また米国の複数の大手販売店は、現在の傾向が続くと第3四半期にかけて在庫不足が販売の大きな障害になると懸念している。
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