Ford(上)新CEOのもと得意分野への重点投資とVW提携による事業効率化を進める
北米は豊富なブランド資産を活かしたラインアップ強化とEV導入の戦略を明確化
2020/11/13
- 要約
- 元米トヨタのFarley氏がCEOに就任、成長戦略の明確化と企業変革の加速化を打ち出す
- VWとの提携により、EVと商用車の分野で商品ラインアップの強化を進める
- 米国の販売状況:セダン生産から完全撤退、大型ピックアップトラックへの依存がさらに高まる
- 北米の商品戦略:ピックアップトラック、オフロード・タイプの新型車を続々と投入し、ライトトラック拡充を進める
- EV導入計画:SUV、ピックアップ、商用バンなど主力セグメントのコアユーザーを狙う
要約
Mustang Mach-E(出典:Ford) |
Fordは、2019年初頭に発表した「Creating Tomorrow, Together」の新指針のもと、収益性と成長性の高いTruck/Utilityのグローバル・ラインアップ拡充、電動車/自動運転/モビリティサービスの開発に取り組むと共に、低採算地域/事業の合理化計画を示し実行に移してきた。2019年7月にはVWとの広範な提携を発表し、これを軸とする欧州事業の効率化方針が示された。
2020年6月にはVWとの提携拡大についての合意が発表され、10月には新CEOを始めとする新たな経営体制の誕生に合わせて、計画の具体化や実行加速化への取り組みが確認された。
販売台数の約半分、収益の殆どを依存する北米市場では、収益性の高いライトトラックへの更なる資源シフト、オフロード車追加などラインアップ拡充を進めると共に、電気自動車(EV)では最量販車のF-150や知名度の高いMustangなどブランド資産を活かし、コアユーザーへ訴える戦略を明確に打ち出し実行に移しつつある。
しかしながらFordは、2019年度にはグローバル販売と収益が大幅に悪化(世界販売で対前年10%減、純利益が年金関連費用負担22億ドル反映後99%減の4,700万ドル)し、2020年はコロナ禍の影響による前期の大幅な落ち込みからは業績回復を示しているものの、短命な経営トップが続いたこともあり、成長力や収益性に対する市場からの懸念は払しょくできていない。新CEOの体制下で、急変する業界や競争環境へ対応して計画実行や変革のスピードをどこまで上げられるかが注目される。
本編では2019年後半からのFordに関する動きや発表された戦略、商品を整理するレポートの前編として、企業戦略と米国の商品戦略に焦点を当てて報告する。後編では、他地域の状況や戦略、企業業績、並びにグローバル生産台数予測について報告する予定。
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