米国の燃費規制:バイデン次期政権が厳しい規制を制定し、EV化を推進

カリフォルニア州と自動車メーカー6社の合意をベースに新燃費規制を策定か

2021/01/08

要約

  本レポートは、ここ1~2年の米国での環境規制をめぐる動きの概要を報告する。バイデン次期大統領は、就任早々パリ協定に復帰すると宣言するなど、環境問題を重視する姿勢を強調している。自動車のCO2/CAFE(Corporate Average Fuel Economy)については、2012年にオバマ政権がMY 2025の燃費を46.7 mpgとする規制(以下2012年規制)を策定したが、トランプ政権がこの基準を大幅に緩和した(新規制をSAFE Vehicles Ruleと呼ぶ)。しかしバイデン次期政権はこれをより厳しい基準に戻し、同時に50万基の充電ステーションを設置するなど本格的なEV化を推進すると公約している。

  2019年9月にトランプ政権は2012年規制を緩和し、同時にカリフォルニア州が独自の燃費規制やZEV(Zero-emission vehicles)規制を制定する権限を停止すると発表した。同年11月にカリフォルニア州と他の22州はこの決定を不当として訴訟を起こしている。主要自動車メーカーは、政権側を支持するグループ(GM、FCA、トヨタなど)とカリフォルニア州を支持するグループ(ホンダ、Ford、BMW、VW/AudiおよびVolvo)に分かれた。

  このうちカリフォルニア州を支持するグループの6社は、カリフォルニア州と燃費規制について合意し、最終合意内容を2020年8月に発表した。2012年規制に多少の時間的余裕を持たせた内容で、トランプ政権が作成したSAFE Vehicles Ruleより厳しい。Fordやカリフォルニア州大気資源局(California Air Resources Board (CARB))は、この合意がバイデン政権下で制定する新しい連邦燃費基準の雛形(a good template)になると主張している。

  さらにカリフォルニア州は2020年9月に、2035年までに同州で販売するライトビークルを全てZEVとし、ガソリン・ディーゼル車の販売を禁止すると発表した。

 

ライトビークルの2012年規制、SAFE Vehicles Ruleとカリフォルニア州/6社の合意

規制 発表時期 年間燃費向上率 目標平均燃費 (CAFE)
2012年規制
(オバマ政権下)
2012年8月 MY 2021からMY2025の4年間に年平均4.7%向上させる 46.7 mpg (MY 2025)
SAFE Vehicles Rule
(トランプ政権下)
2020年3月 MY 2021からMY2026の5年間に年平均1.5%向上させる 40.4 mpg (MY 2026)
カリフォルニア州と
自動車メーカー6社の合意
2020年8月 MY 2021からMY2026の5年間に年平均3.7%向上させる (MY 2026で)
2012年規制と同等

出典:NHTSA/EPA(2020.3.31)、カリフォルニア州(2020.8.17)


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参照先:環境規制
燃費/CO2 - 米国 (連邦)
燃費/CO2 - 米国カリフォルニア州

 

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