2020 AV/ADAS 安全基準と規制の現状

2020/05/15

要約

本レポートについて

  本レポートは、MarkLinesのポータルユーザー向けにVSI Labs(VSI)によって作成された。VSIは、アクティブ・セーフティと自動運転を支えるテクノロジーを対象に、深い洞察と分析を行い業界に発信するテクノロジー調査会社である。

目次

  • はじめに
  • ADAS関連の規制
  • レベル3-レベル5のAV関連の規制
    ・国連欧州経済委員会(UNECE)と欧州
    ・日本
    ・中国
    ・韓国
    ・米国連邦政府(USDOT / NHTSA / FMVSS)
    ・米国の州
  • AV安全基準:AVの安全レベルの検証および検証テスト
  • おわりに

 

略語

 ADAS:Advanced Driver Assistance System 先進運転支援システム
 AV:Autonomous Vehicle 自動運転車
 USDOT:U.S. Department of Transportation 米国運輸省
 NHTSA:National Highway Traffic Safety Administration 米国運輸省道路交通安全局
 FMVSS:Federal Motor Vehicle Safety Standards 連邦自動車安全基準

 

VSI Labs


VSI Labs レポート:
CES 2020:ADAS対AVに対する新たな期待 (2020年2月)
2019年の自動運転業界を振り返って (2020年1月)
米国西部自動走行プロジェクト(Automated Drive West) (2019年10月)
Teslaの無線(Over-the-Air)ソフトウェア・アップデートの分析 (2019年8月)

 



はじめに

  VSIは2018年末に欧州と米国での自動運転車(以下、AVと記述)関連の規制に関するサマリー資料を公開した。しかし、今日に至るまで、欧州で販売されるレベル3(またはそれ以上のAV)のシステムを認証するための要件に関する法的枠組みはまだ完成していない。自動運転規制の進展に不満が高まっている中、自動車メーカーは認証制度の枠組みが整うのをまだ待っている状態で、AVシステムの規制・認証制度は対応できている状態とは言えない。

  たとえば、Audiは2018年後半に発売されたA8フラッグシップセダンに向けて、"Eye-Off"(ハンズフリー操縦)の条件付きレベル3自動運転機能を最初に開発した。しかし、この"トラフィック・ジャム・パイロットシステム"は、規制当局による販売がまだ承認されていない。Daimlerは2020年に許可が下り次第すぐにレベル3の自律性を提供できるMercedes-Benz Sクラスのリリースの準備が出来ている。BMWは2021年に高度な自動運転機能が搭載されると予想されるiNEXT EVをデビューさせる予定。

  規制が確立する事は、AVが量産開発されるために最も重要な要素の1つである。 AVの性能と安全性に対処するための現在の規制の枠組みは、国内および国際的な法律、規制、業界で受け入れられている標準の複雑なしがらみを表している。

  このテクノロジーブリーフでは、地域ごとのADAS/AV安全関連規制の現状と、それらの業界のニーズに対する妥当性と非妥当性について説明する。

 



ADAS関連の規制

  欧州は、10年ぶりの大きなアップデートとして「2019 General Safety Regulation」で交通安全規制の大きな前進を遂げた。2019年3月の欧州議会との合意に続き、欧州理事会は2019年11月に自動車の一般的な安全性と車両の乗員および歩行者、自転車等の無防備な道路利用者の保護に関する規則を採択した。この規則は、一般的な安全規則(EC)661/2009および歩行者の安全規則(EC)78/2009が含まれる自動車の安全性に関する既存の規則を改定するもの。今回初めて、歩行者や自転車などの道路利用者の特定の懸念に取り組んでいる。

  米国とは対照的に、欧州はメーカーが自社の自動車がEUの規制に適合しているか否かを証明するために、各国政府の指定を受けた外部テスト機関が審査しているタイプアプルーバル・システム(型式認可制度)を採用している。これはメーカーが提供する新しい車両のサンプルを評価する独立系テスト機関を介して行われ、最低限の規制、技術、および安全要件を満たしていることを確認する。欧州での車両の販売を認可するには、タイプアプルーバルが必要となる。

  欧州の適用日程では、2022年5月以降に販売される「新型車」を対象として、また2024年5月以降に販売される「すべての新規登録車両」を対象として、これらの新しい安全規制への適合を求めている。これは、車両の安全機能における多大な変化である。

  2022年半ば以降、EU市場に投入されるすべての新しい自動車(トラック、バス、バン、SUVを含む)には、次の高度な安全システムを装備する必要がある。

  • インテリジェント・スピードアシスト(法定速度を超過した場合に自動的にブレーキをかけるか速度を落とす機能)
  • アルコール・インターロック設置の促進
  • ドライバー・アテンション・アラートシステム(DAA:ドライバー状態監視システム)
  • ドライバー・アラート・コントロールシステム(ドライバー状態監視システム)
  • 緊急停止シグナル(急ブレーキ時やブレーキ・アシストが作動するような減速度でブレーキをかけた場合にストップ・ランプが自動的に点滅する機能)
  • リバース・トラフィック・ディテクションシステム(視界の悪い駐車場からバックで出庫する際などに、動いている車等を検知すると警告する機能)
  • イベントデータレコーダー
  • 正確なタイヤ空気圧モニタリング

  乗用車には補足的な高度安全対策が必要であり、これらには以下が含まれる:

  • 緊急自動ブレーキシステム(AEB)
  • レーンキーピング支援システム
  • 歩行者や自転車などの無防備な道路利用者との衝突による怪我を軽減できる拡大された頭部衝撃保護ゾーン(フード、Aピラー等の車両前部の構造基準強化)

  欧州の自動車安全は規制ではないが、高度な安全システムを提供するよう市場に圧力をかけるのに非常に効果的なEuroNCAPによって強く推進されている。一方で、欧州の新しい「規制」は重要な前進であり、米国の規制当局よりもはるかに大胆で包括的な措置を講じている。

  米国は以前から安全システムの採用を推進する方向に市場の力が作用するため、米国のNCAPプログラムは欧州に比べて影響が少ないと思われる。NCAPプログラムは、FMVSS規制などのような、政府機関が連邦規制を確実に遵守する様に求める強制力を持ったツールではない。

  2016年、NHTSAは、インシュアランス・インスティチュート・フォー・ハイウェイ・セーフティ(IIHS)と協力して、2022年までに米国で販売している主要自動車メーカー20社全ての自動車に低速での緊急自動ブレーキ(AEB)を標準装備とするように求めた。NHTSAによると、2019年に、Tesla、Volvo、Audi、Mercedesの4メーカーが合意に基づいて自主的採用をすでに完了しており、予定より3年早く進んでいると報告された。 2018年9月1日から2019年8月31日までのレポート期間中に、12社のメーカーが新型乗用車の75%以上にAEBを装備した。

  2017年1月19日、NHTSAはNCAPで予定している変更に関する通知を発表した。これらの変更には、(1)以前に提供された情報または資料の変更、(2)計画されたNCAPの変更に対応する技術基盤に関する新たな情報、および(3)新たな5段階性能評価システムに関する議論、が含まれる。

  AEBに関しては、2019年2月の国連フォーラムで、日本とEUを始め40カ国(米国、中国を含まない)が、早ければ2020年から新型乗用車および小型商用車に対してAEBの装備を求めることで同意した。(60 kph/42 mph以下の低速走行が対象)。米国、中国、インドは、新しい規制を採用した国連フォーラムのメンバーだが、これらの国々は、自動車に関しては各国の規制が国連の規則よりも優先されるとして、交渉には参加していなかった。

 



レベル3-レベル5のAV関連の規制

国連欧州経済委員会(UNECE)と欧州:

  AVのパフォーマンスと安全性のフレームワークに取り組む中核となるのは、国連の自動車基準調和世界フォーラム(World Forum for Harmonization of Vehicle Regulation)である。

  フォーラムは、SAE規格のレベル3、4、および5の自動車両には、「ドライバー制御代行システム」、「ドライバー状態監視システム」(レベル3の場合、運転責任がドライバーと共有される)、および「イベントデータレコーダー」(衝突事故において法的責任を確立するために運転していたのは、人間かシステムなのかを示すため)が必要であることを主張している。

  自動運転システム(ADS: Automated Driving System)の項目について、実施日は規定されていない。代わりに、欧州委員会は自動運転車両に関連する「実施規則」を採用する権限を与えられており、次のようないくつかの重要な項目の作成が2020年に達成されると思われる。

  • SAE規格レベル3/4のレーンキーピングシステムの機能要件
  • 新しい国連規則としてのSAE規格レベル3/4のレーンキーピングシステムのテストおよび評価方法
  • SAE規格レベル3/4のレーンキーピングシステムのための自動運転車両データストレージシステム(DSSAD: Data Storage System for Automated Driving)の必要条件
  • イベントデータレコーダー要件

  VSIは、このワーキンググループの活動を綿密に追跡しており、2019年9月当初の優先事項において遅延があることを発見した。それでも、VSIは、業界が少なくとも60 km/h未満、車線変更なし、高速道路のみという条件下でのL3自動レーンキーピングシステム(ALKS)の機能要件とテスト/認証に関するガイドラインを2020年内に完成すると信じている。

作業優先度表
作業優先度表
自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)自動/自律運転車両に関連する作業優先度
(2019年9月現在、出典:UNECE)


  一方、欧州には「免除手順」があり、EU加盟国は個別に、ADS搭載車両を認可するために暫定的な安全性評価を実施できる。(これは、レベル3のADSをドイツで市場に出すためにドイツで行われた。)

  2018年のVSIラウンドアップの中で述べたように、欧州のいくつかの国はすでにAVに適応するように既存の安全規制の変更を開始している。 2017年、ドイツのAV法案は、既存のドイツの道路交通法を修正し、高度に完全に自動化された車両が公道を使用するための要件を定義した。さらに、自動運転モードをアクティブにする際のドライバーの権利と義務についても取り上げた。ドライバーは、合法的に自動運転モードを使用した場合、責任を回避することができる。自動運転車両には、事故時にドライバーまたはシステムが制御していたかどうかを識別するためのデータレコーダーを装備する必要がある。

  同様に、英国政府は、2018年に自動運転車両および電気自動車法を策定した。これは、自動運転車両によって引き起こされた損傷または事故に対して誰が責任を負うのかを明記している。

 

日本:

  日本は道路交通法を改正し、2020年4月1日から施行された。以下の4つの改正がある:

  • 高速道路合流車線の最大速度に関する規制
  • レベル3の使用条件と違反ペナルティの設定
  • 運転データ記録装置と自動運転システムのメンテナンスの義務化(同時に違反ペナルティも設定)
  • 自動運転モードでスマートフォン、コンピューター作業、本を読んだり、食事をしたり、電子メールをチェックすることは、合法として分類されるが、自動システムが故障した場合に備えて、ハンドオーバーメカニズムの設置を義務化

  レベル3以上のより高いレベルの自動運転に関して、次の2つの法律が改訂された:

  • 道路交通法 改訂版は2020年5月23日までに施行される
    • 自動運転装置の定義
    • 自動運転中のドライバーの義務
    • オペレーションステータス記録装置の要件化による責任の所在の明確化
  • 道路輸送車両法
    • 安全基準への自動運転機器の追加 - 国土交通省(国土交通省)が定めるAVサービス運用のための機器・条件のセキュリティ基準
    • 自動運転システムのメンテナンスの安全性 - 自動車技術機構が検査作業を行う
    • 許認可システム - 国土交通省はオペレーターが自動運転操作装置に変更を加えたい場合に許可を与える

 

中国:

  国家開発改革委員会(NDRC)と情報技術産業省(MIIT)が最近発表した開発計画によると、中国は最近、条件付き自動運転機能(SAE規格レベル3)を備えた車両の大量生産を達成するという当初の目標を2020年から2025年に延期した。2018年1月にNDRCによってリリースされたドラフトバージョンによると、北京では、中国で販売された新車の半分以上が2020年末までに自動運転機能を備えるべきであるという目標を設定していた。

 

韓国:

  韓国の国土交通省(MOLIT)は、レベル3自動運転車両の安全基準を発表した。新しい基準は、発表の日から6カ月後の2020年7月6日に施行される。

  新しい基準では、レベル3の自動運転システムがレーンキーピング機能を提供し、ドライバーが一定の期間、目を離すことができるとしている。新しい基準の主な内容には、ドライバー・アベイラビリティ・レコグニション・システム(DARS)とオート・レーン・キーピング・システム(ALKS)の安全性、移行要求、緊急時の操縦、最小リスクの操縦、およびフォールバック(障害時の低レベルのシステムへの移行)システムが含まれる。ALKSの最高速度は、システムの検出範囲と、同じ車線の前方車両までの最小距離によって異なる。車両には、システムが故障した場合でも安全を確保するために、システムの冗長化などのフォールバック計画が必要となる。レベル3システムは、歩行者や自転車が禁止されている道路でのみ許可される。

 

米国連邦政府(USDOT / NHTSA / FMVSS):

  AV業界では、3つの運輸当局のAVポリシー文書の発行を待望していた。CES 2020において、USDOTは、これまでの取り組みに基づいて構築されたAV 4.0「自動運転車両開発での共同作業を知らせる統一姿勢の現状」を発表した。AV 4.0は、「AVテクノロジーの安全な開発と統合において直接、間接の公平性を有する」数十の関連する政府機関に範囲を拡大する。NHTSAの広範な作業には、車両安全評価、機能安全性評価、およびロボタクシー導入を想定した、乗員保護を目的とする車両の設計変更とシートの研究が含まれる。

  AV 4.0のコアメッセージは、USDOTの「10のAV原則」に含まれ、3つの重点領域にわたる:(1)安全性とセキュリティの優先順位付け、(2)イノベーションの促進、(3)一貫した規制アプローチの確保。AV 4.0は、政府の立場を確認し、その活動を公衆に知らせるための重要な文書であるが、以前の文書ほどの影響を業界に与えることはない。これはAV業界が成熟しつつあり、ポリシーと原則のレベルで述べるべき事の多くが、すでに述べられているためである。AV 3.0は、特に包括的な文書であった。

  特筆すべきことは、今が正式なガイダンスや新しい規制の観点から行動する時だと言うことである。ごく最近、NHTSAは多数の連邦自動車安全基準(FMVSS)を近代化し、従来の手動制御なしで設計された自動運転システム(ADS)を装備した車両の乗員保護基準のあいまいさを明確にする提案を出した。詳細な情報を含む135ページの文書は、NHTSAの告示にリンクされている。NHTSAは、運転操作のための装置がないといった、ADS搭載車両で予想される従来とは異なるインテリアデザインへの不必要な障壁を取り除きたいと述べている。現在、60以上のFMVSSがあり、乗員の衝突保護、防火、電気系統の安全策、衝突回避、歩行者の安全など、幅広い安全問題に対処するための性能要件を確立している。

  現在市場に出回るAVは、現在のFMVSS規制の下では合法であり、免除は必要としない。ただし、自動車メーカーが、現在の規制に適合しない機能を持つAVを販売したい場合は、免除が必要になる。たとえば、非常にまれなケースとして、USDOTおよびNHTSAが、配送用の自動運転車メーカーであるNuro社のR2に対する規制の免除を承認したが、こういったケースは他にはほとんどない。Nuro社はヒューストンでR2の公道試験を数週間のうちに開始すると見られる。Nuro R2は、25 mph以上で運転するようには設計されていない。これによりR2が走行できる道路が制限され、USDOT/NHTSAがFMVSSの免除をより簡単に許可できるようになる。一方、GM-Cruiseは、その無人のBoltデザインについてNHTSAに免除を申請するまで数年待っている。

  次の2つの状況で免除が要求される。

  • ステアリングホイール、ブレーキペダル、ウインカーなど、ドライバーの手足が届くところにある運転装置がない車両を販売する場合。現在走行中の車には、これらの機能が備わっている必要がありますが、完全に自動化された車の場合、これらの制御装置は不要となる。免除によって提供される機会無くして、自動車産業は、自動化技術があったとしても、従来の車両を大幅に超える車両を上市することができない。
  • 現在の法律と矛盾する新しい設計と構成の開発をする場合。免除プロセスにより、設計と代替構造に必要な柔軟性がもたらされる。自動車メーカーは、従来の車両と同じ設計でAVを開発することで、このステップを回避できるが、それは同時にイノベーションを抑制し、規制の障害により運輸部門の変化のペースを遅らせる事に繋がる。

 

米国の州:

  米国の特徴は、NHTSAを通じて連邦政府が車両の安全を確保する責任を負う一方で、州政府は公道での車両の安全な運用を確保する責任を負うことである。

  2014年9月、カリフォルニアの道路でメーカーが自動運転車(ドライバー乗車)をテストする方法を規定する最初の一連の規制が施行された。カリフォルニア州のデパートメント・オブ・モータービークル(DMV)は、2018年4月に「無人運転」および「公共交通機関向けの運用」のための自動運転車両テストの申請の承認を開した。

  一部の規制では、「無人運転」と「公共交通機関向けの運用」のテストについて、下記の必要性を強調している。

  • リモートオペレータとのコミュニケーションリンク
  • 車両の所有者またはオペレーターの情報を表示または執行官に伝達するプロセス
  • AVはすべてのFMVSSおよびCVC Div.12(車両の装備品に関するカリフォルニア州法)に準拠、またはNHTSAが免除を承認している事
  • レベル4または5の自動運転システムの基準に適合している事
  • DMVへの自動運転解除ケースの年次報告
  • 一般乗客から乗車料金や他の報酬を請求しない事(注:例外的にWaymoはアリゾナでのWaymo Oneの乗車に対して料金を請求している)

  現在66社がカリフォルニア州DMVの許可を取得しているが、公道で真剣なAVテストを実施している企業は半分以下にとどまる。一方、カリフォルニア州のAVテストプログラムの最初の規則では、特定の車両をテストまたは運用から除外した。カリフォルニアのDMV自動運転(AV)テストプログラムでは、小型の配送車両またはモータートラックをテスト目的で使用できるようになった。ルールに基づく試験および商用配送の許可を受けることができるのは、ミニバン、ピックアップトラック、ユーティリティバン、およびステップバンを含む、10,000ポンド未満のクラス1および2のトラックだけである。

  公道でAVをテストするためのカリフォルニア州DMV許可とは別に、カリフォルニア公益事業委員会(PUC)は、一般大衆に公共交通手段を提供することができる許可を発行する。今のところ、GM-Cruise Automation、Zoox、Waymo、Pony.ai、Aurora、AutoXが、この許可を持っている。カリフォルニア州は、AV公道テストで最も進歩的かつ包括的な法律を制定している。AV試験に関する米国の他の主要な州の法律のステータスについては、以前のVSIテクノロジーレポートをご参照ください。

 



AV安全基準:AVの安全レベルの検証および検証テスト

  国際基準も現在の規制の枠組みにおいて重要な役割を果たしている。しかし、自動車に適用できる現在の枠組みの範囲は、今日の自動運転車両に導入されている多くの高度な技術に対応できるほど急速に進化していない。

  ADASおよび自律走行システムの安全性レベルの検証および検証テストは、まだ初期段階にある。国会議員、規制当局、OEM、保険会社、AV開発者、および一般市民はすべて、公道で無人運転を許可される前にAVが本当に安全であることを確認するべきと考えている。これまでのところ、安全テストと検証の処理方法については、(包括的な)合意は形成されていない。

  「規制」は、法律の施行または実施方法に関する詳細な指示であり、「規則」または「行政法」と呼ばれることもある。規制は、法の強制力によって担保されており、強制適用力を持っています。

  一方で「標準(基準)」は、製品、サービス、およびシステムの仕様(ガイドラインまたは要件)を提供することにより、物事が機能するようにさせるものであり、一貫して使用すると、品質、安全性、効率が保証される。それらは、関連する基準についての詳細を提供する参照ドキュメントの形式を取る場合がある。

  規則の制定に合意は必要としない。標準と技術規制の違いは、コンプライアンスの問題である。標準への適合は自発的だが、技術的な規制は本質的に義務的である。以下に、最近制定されたいくつかのAV安全基準をあげる。

  • IEEEは、IntelのResponsibility-Sensitive Safety(RSS)フレームワークに基づいてAVテスト標準を作成した。IEEE 規格 2846の目的は、AVが意思決定するためのパラメーター化された正式なモデルを定義することである。これにより、業界や政府は、AVが安全に運転され、安全性と実用性のバランスをとるという意味の定義を共有することができる。IntelのRSSフレームワークに基づくモデルは、SAE規格のレベル3~レベル5のAVの計画および意思決定機能に適用される。
  • UL 4600は、仕様ではなくAVの「安全ケースを構築する」ためのガイド、またはISO26262機能安全のような開発プロセスに対する規定されたガイダンス(考え方)であり、2020年第1四半期までに、ANSI規格になる。
  • SAE 地上車両規格 J3018_201909:この規格は、公道のミックストラフィック環境で動作する車両のプロトタイプ自動運転システムのテストを目的としている。この規格は、J3018_201503フォームから大幅に改訂され、公道でのプロトタイプの自動化車両のテストで蓄積された現場経験に基づいた教訓を取り入れている。レベル3~5の自動運転システムで構成されるプロトタイプ条件で運用される車両を対象としているが、生産車レベルの車両、クローズドコーステスト、シミュレーションテスト、コンポーネントレベルのテスト、またはドライバーのリアルタイムでの車両性能の監視を必要とするレベル1または2の「アシスト運転」のテストは対象外となる。
  • AVSC(Automated Vehicle Safety Consortium):このグループは、将来のため高度に自動化された車両をテストおよび展開するための標準とベストプラクティスを共同で開発することに焦点を当てている。2019年4月に開始されたSAE Industry Technologies ConsortiaのプログラムであるAVSC。メンバーには、VW、Daimler、Ford、General Motors、ホンダ、Lyft、トヨタ、およびUberが含まれる。
  • 「Safety First for Automated Driving」(SaFAD)は、安全なAVを開発するための包括的なエンジニアリング原則を説明する157ページの「ホワイトペーパー」をリリースした。11の参加企業は、Aptiv、Continental、Audi、BMW、Daimler、Fiat Chrysler、Volkswagen、Intel、Infineon、HERE、Baidu。この「ホワイトペーパー」では、エンジニアがAV開発プロセス全体で検討する必要のある「設計上の安全性」のルールと12の指針となる設計原則について説明している。その12の原則に基づいて、「設計上の安全性」とバイリデーションとベリフィケーション(V&V)プロセスの全体的な構成を考案している。12の原則を支える安全設計の2つの主要な柱とV&Vに加えて、付録Bでは、ディープニューラルネットワーク(DNN)安全開発のフレームワークを提案している。自動運転における安全第一がAVの安全性と開発に関する最も具体的で包括的なガイドラインと言える。ASILレーティング、ISO 26262、ISO 21448、セーフティ・オブ・インテンデッド・ファンクショナリティ(SOTIF)、NHTSA、州、連邦、および国連の法律などの評価のような、既存の安全性ガイドラインと規制を考慮に入れている。

 



おわりに

  技術は、規制当局が追いつくよりも速く変化するため、通常、規制はイノベーションに遅れをとる。ただし、自動車OEM、サプライヤー、およびAVテクノロジーのリーダーは、テストと検証の両方で標準とベストプラクティスを構築するためのパートナーシップを形成しており、そしてシステムと車両がいかに安全であるかにより、立法プロセスに影響を与える。各国の立法府の間には、異なるスタイル、アプローチ、および動機があるものの、最終目標として共通しているのは、道路上でより安全な車を実現することである。


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キーワード
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