欧米Tier1サプライヤー:電動化関連の事業動向 (1)
各社とも電動化アプリケーションのポートフォリオを拡大
2020/08/17
要約
![]() |
Boschの48Vハイブリッドソリューション |
気候変動に対する社会の関心の高まりと、排出基準の厳格化や電気自動車(EV)優遇策といった政府主導の動きにより、電動車の開発と導入が加速すると共に、電動車に対する消費者の需要も増している。長期的に見て電動車の販売は拡大すると思われる。
2019年、世界の乗用車におけるプラグインハイブリッド車(PHV)とバッテリーEV(BEV)の販売台数は210万台を超え、過去最高だった2018年の200万台を6%上回った。自動車市場が低迷した国もあり、米国と中国ではEV補助金が減額されたにもかかわらず、これらの販売は増加した。PHVとBEVの販売は2015年以降毎年平均47%成長している。
電動車の需要増に伴い、サプライヤーは電動車向け製品の開発と生産を強化して対応してきた。Bosch、ZF、Magnaといった大手サプライヤーは、各車両セグメントにおけるさまざまなパワートレインに向けた幅広い製品とシステムの供給を目指しているため、製品ポートフォリオ拡大に重点を置く戦略を採用している。ポートフォリオ拡大により、サプライヤーは提携、協業、買収が容易となり、eモビリティをさらに推進できる。最近の最も大きな動きは2020年1月に合意されたBorgWarnerによるDelphi Technologiesの買収である。
本レポートは2018年7月から2020年6月までの、欧州と北米の大手サプライヤーによるeモビリティ関連の活動を示した2編のレポートのうちの前半で、特にBosch、ZF、Magna、Valeo、BorgWarnerに焦点を当てている。
関連レポート:
欧米Tier1サプライヤー:電動化関連の事業動向 (2) (2020年8月)
48Vパワートレインを搭載する電動自動車 (2020年6月)
CES 2020: 電動車と電動化技術 (2020年2月)
欧米Tier1サプライヤー:欧州・中国を中心とする電動化関連の事業動向 (2019年12月)
東京モーターショー2019:サプライヤー各社の電動化関連展示 (2) (2019年11月)
IAA 2019:燃料電池技術の展示取材 (2019年10月)
IAA 2019:欧州サプライヤーのフランクフルト・モーターショー展示取材 (2019年10月)
欧米Tier1サプライヤー:欧州を中心とする電動化関連の事業動向 (2018年7月)
Bosch:ポートフォリオを拡大し、2025年までにeモビリティの売上50億ユーロを目指す
Boschのeモビリティ戦略はポートフォリオ拡大に焦点を当てている。対象となるのは48Vマイルドハイブリッドシステムから完全電動ドライブに至るアプリケーション向けの、電動アクスル、モーター、インバーター、パワーエレクトロニクス、充電器、バッテリーといった製品とシステムである。ポートフォリオは電動自転車から商用車に至る幅広い車両セグメントをカバーする。さまざまなシステム、アプリケーション、セグメントを拡大することで、Boschは自社同様に幅広いポートフォリオを持つ企業と提携関係を結ぶことができる。
eモビリティ分野におけるBoschの財務コミットメントと収益を見ると、同社におけるこの分野の重要性がよりはっきりする。かつてBoschは、2013年から2020年にかけてeモビリティを含む新成長分野に約30億ユーロを投資すると発表していた。2020年12月31日に終わる会計年度では約5億ユーロをeモビリティに投資するとみられる。
2018年、Boschのeモビリティ関連の受注は30件だった。また、2018年初めから2019年9月までに約130億ユーロに相当するeモビリティ案件を受注した。これには乗用車と小型商用車の電動ドライブに関する一連のプロジェクトも含まれている。Boschではeモビリティの売上を2025年までに50億ユーロに引き上げることを目指している。
分野 | 活動内容 |
---|---|
投資・買収 | 電気モーターの合弁企業EM-motiveを買収 Boschは欧州で大きな成功を収めている電気モーターメーカーEM-motiveの買収を発表した。EM-motiveはBoschとDaimlerの合弁会社として2011年に設立され、約45万基の電気モーターを生産してきた。同社は効率的な電気モーター生産に早期参入を図るために設立された。(2019年1月24日付プレスリリースより) |
ハンガリーの自動車用電子機器工場を拡張 ハンガリー投資促進公社(HIPA)はBoschがハンガリー・ハトヴァン(Hatvan)の自動車用電子機器生産工場に3,000万ユーロ超を投資すると発表した。生産能力の増強が目的で、電動ステアリング制御ユニットなどハイブリッド車(HV)やEVで使われる次世代製品を生産する。(2019年2月28日付HIPAプレスリリースより) |
|
中国・無錫の新しい水素燃料電池開発センター Boschは2019年11月、中国の無錫に新しい水素燃料電池開発センターを建設すると発表した。水素燃料電池車用パワートレイン製品の研究、開発、試作を行う。バッテリースタックから燃料電池システムに至る部品開発のための包括的な設備を備える。2020年末完成、2021年小ロット生産開始を目指す。(2019年11月30日付プレスリリースより) |
|
協力・合弁 | Nikola「Two Alpha」トラック用燃料電池ドライブをNikolaと共同開発 Boschと米Nikola MotorはNikolaの重量級電気トラック「Two Alpha」用燃料電池ドライブを共同開発したと発表した。両社はNikola「Two」用シャシーも共同開発した。この技術・システム手法は燃料電池トラックのNikola「One」やNikola「Tre」など他のNikola製品にも適用できる。(2019年4月17日付プレスリリースより) |
スウェーデンPowerCellと協力 BoschはスウェーデンのPowerCellとPowerCell「S3」燃料電池スタックの開発、生産、販売に関する契約を結んだ。契約には「S3」の共同開発および「S3」を自動車用途に生産販売する独占権をBoschに与えるライセンスが含まれる。現行の「S3」の出力範囲は30kWから125kW。高分子電解質膜技術に基づいており水素のみで動作する。(2019年4月29日プレスリリースより) |
|
ピニンファリーナと高性能EVプラットフォームを共同開発 ピニンファリーナはBoschおよび独Bentelerとの戦略的提携により高性能EVプラットフォームを開発すると発表した。3社は将来のピニンファリーナのモデルを支えるプラットフォームに向けた最高の技術コンセプトと市場可能性を評価する。ピニンファリーナは注目を集めている電動ハイパーカー「バッティスタ(Battista)」に続き、一連の高性能で高級EVを投入する戦略を先頃確認した。(2019年9月9日付プレスリリースより) |
|
「Battery-in-the-cloud」サービスで華人運通と協力 華人運通(Human Horizons)はBoschと「Battery-in-the-cloud」サービスで協力を深める契約を結んだ。この技術はバッテリーをクラウド上で管理することでバッテリーの寿命を延ばし、性能とサービスを向上させるものである。このサービスによりバッテリー寿命が最大20%、充電速度も最大20%向上すると見込まれる。早期故障検出や予知保全の基盤を強化することもできる。(2020年2月24日付プレスリリースより) |
|
BentelerとEV用ローリングシャシープラットフォームを共同開発 Boschは独Bentelerと2019年4月に提携しEV用ローリングシャシープラットフォームを開発している。ローリングシャシーにはアクスル、電動パワートレイン、ブレーキ、ステアリング、熱管理システムがあらかじめ組み込まれている。BentelerはBoschが提供する様々なシステムをシャシーに機械的に統合する作業を担当する。ローリングシャシーは将来的に自動運転機能を取り込む。(2019年4月16日付プレスリリースより) |
|
新技術 | SiC半導体とマイクロチップ Boschはパワーエレクトロニクス用の新しい炭化ケイ素(SiC)マイクロチップを開発した。SiC半導体は導電率が高く、熱損失エネルギーを最大50%低減する。省エネ分は効率的なパワーエレクトロニクスと電気モーターのエネルギーに充てられるため、バッテリー航続距離が約6%向上する。またパワートレイン用の高価な冷却システムの必要性も減る。(2019年10月8日付プレスリリースより) |
充電インフラの展開 Boschは欧州16ヵ国15万ヵ所の充電ポイントを持つ欧州有数の大規模充電ネットワークにドライバーがアクセスできる充電サービスを展開している。Boschはオペレーターと契約を結び、充電場所に接続するためにローミング等の手法で使うことでネットワークを構築している。充電サービスにアクセスするにはスマートフォンアプリから一度サインインすればよい。Boschはナビゲーションと充電の統合ソリューションも展開している。(2020年6月15日付プレスリリースより) |
|
展示会 | セミトレーラーに組込可能な電動アクスル Boschは独Hannoverで開催されるIAA国際商用車ショー2018において、セミトレーラーに組込可能なeアクスルを出展すると発表した。同社はインバーターと車両制御ユニットを供給する。独立したモーター発電機は完全な電気モーター、すなわちローター、ステーター、レゾルバなどを含むアクティブコンポーネントとしてアクスルに組み込める。他にバッテリーシステムが必要。Boschはこの技術を新しいトレーラー向けや後付け用のソリューションとして提供する。(2018年8月28日付プレスリリースより) |
キャンピングカー・モーターハウス用48Vシステム BoschとドイツのキャンピングカーメーカーKnaus Tabbertは国際レジャー用車両展(Caravan Salon) 2019でキャンピングカー用スマート48Vシステムを発表した。48VシステムはBoschが提供する電動アクスル、センサー、リチウムイオンバッテリーで構成される。発電機を備えているため、走行中に回生ブレーキを介してバッテリーを充電できる。貯蔵エネルギーはキャンピングカーの室内電源や車両動力源として利用できる。(2019年4月29日付プレスリリースより) |
|
東京モーターショー2019に出展した電動化システム Boschは東京モーターショー2019で電動エアコンプレッサー(EAC)などさまざまな燃料電池システムを出展した。EACは燃料電池スタックの正極に酸素を送り効率を改善する。48Vマイルドハイブリッドシステムも展示された。(2019年10月11日付プレスリリースより) |
![]() |
![]() |
Nikola「Two」燃料電池セミトラック(出典:Nikola) | Bentelerと共同開発したローリングシャシー電気プラットフォーム |
ZF:eモビリティに対し技術的に中立な立場を強調
ZFの次世代モビリティ戦略の一環として、同社はeモビリティに対して技術的に中立な立場を取っている。すなわち特定の技術や電動パワートレインの種類には片寄らない。ZFでは、インフラや地理的条件が整えば、長期的には純粋な電動ドライブトレインが乗用車のパワートレインの主流になると考えている。一方で、プラグインハイブリッド車(PHV)もeモビリティが広く受け入れられる上で不可欠だと見ている。
ZFの最近の受注を見ると、ハイブリッド技術とシステムの需要が急増している。これに対応するため、ZFは2019年から2022年にかけてハイブリッド技術、特にハイブリッドトランスミッションに焦点を当てた研究開発に30億ユーロ以上を投じる投資プログラムを策定した。ZFはIAA国際商用車ショー2018で、2019年から2023年までの5年間でeモビリティと自動運転に120億ユーロ以上を投じると発表している。
分野 | 活動内容 |
---|---|
投資・買収 | エンジニアリングサービスプロバイダーASAPの株式取得 ZFはドイツ・バイエルン州ガイマースハイム(Gaimersheim)のエンジニアリングサービスプロバイダーASAP Holdingの株式の35%を取得する。ASAPはeモビリティ、自動運転、コネクテッドカーを中心としたエンジニアリングサービスを提供する。ZFは自動運転とeモビリティへの追加リソースを確保する戦略を追求し、顧客の要求により的確に応える。(2019年10月19日付プレスリリースより) |
ドイツ・フリードリヒスハーフェンに新試験センター ZFは2019年2月、ドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州フリードリヒスハーフェン(Friedrichshafen)に電気、ハイブリッド、内燃エンジンのための新試験センターを開設した。電気ドライブとハイブリッドドライブに電力を供給するためにバッテリーシミュレーターが使われ、動力源にかかわらず車両電源全体を試験でシミュレーションできる。(2019年2月27日付プレスリリースより) |
|
協力・合弁 | EVパワーモジュールでDanfoss Silicon Powerと提携 ZFとデンマークのDanfoss Silicon Powerはシリコンと炭化ケイ素(SiC)モジュールに関する新たな戦略的提携を発表した。この提携により、パワーモジュールとインバーター間のインターフェイスにおけるエンジニアリングとコストメリットを活用して、電動ドライブラインの効率を改善する。両社は共同で研究開発を行い、同時にDanfossはシリコンを応用したパワーモジュールを供給する。(2019年11月14日プレスリリースより) |
臥龍電気との合弁会社 ZFと臥竜電気駆動集団(Wolong Electric Group)は合弁会社「臥竜采埃孚汽車電機(Wolong ZF Automotive E-Motors)」設立の契約を締結した。さまざまな駆動システム用の電気モーターと関連部品を生産する。合弁会社の本社は浙江省紹興市上虞区に置く。(2019年11月19日付プレスリリースより) |
|
e.GOの電気自動車「カーゴ・ムーバー」 ドイツの新興企業e.GO MobileとZFの合弁会社であるe.GO MOOVEはe.GO「カーゴ・ムーバー(Cargo Mover)」電気商用車を発表した。「カーゴ・ムーバー」は配送サービスと職人向けに設計されており、低床と箱型設計により標準より広い室内空間と簡便なアクセス性を提供する。電動ドライブに加えコンパクトな燃料電池レンジエクステンダーも採用する。e.GO MOOVEは2020年に「M2ピープル・ムーバー(People Mover)」と「N1ウォークイン・ムーバー(Walk-in Mover)」により「ムーバー(Moover)」シリーズを完成させる。(2019年12月13日付e.GOプレスリリースより) |
|
電動ドライブラインでVisICと提携 ZFとイスラエルのVisIC Technolotiesは次世代の高性能高効率電動ドライブラインを開発するための提携を発表した。この提携でVisICの「D3GaN」窒化ガリウム半導体技術に基づく両社の開発活動を強化する。提携では400Vドライブラインへの応用に焦点を当てる。(2020年5月14日付プレスリリースより) |
|
受注 | 2階建て燃料電池バス用「Axtrax」電動アクスル 英バスメーカーAlexandaer Dennis(ADL)の2階建てバスにZFの「AxTrax AVE」電動ドライブアクスルが採用された。ADLのバスは水素を使って電力を生成し、電動ポータルアクスル内の電動ホイールハブモーター2基を駆動する。ZFは「AxTrax AVE」に加え、インバーター、電子制御ユニット、制御ソフトも提供する。(2019年1月15日付プレスリリースより) |
「CeTrax」電動ドライブの生産開始 ZFの公共交通用電動ドライブ第2弾となる「CeTrax」電動セントラルドライブの量産が2020年第3四半期に始まる。このドライブはドイツのフリードリヒスハーフェンで生産される。バス用に設計された「CeTrax」は従来のドライブラインレイアウトの車両にも導入できる。また「CeTrax」はバッテリー、トロリーシステム、スーパーコンデンサーで作動し、燃料電池の構成としても利用できる。ポーランドのSolarisが生産する「Urbino 15 LE」電気バスは「CeTrax」ドライブを採用する。(2020年5月18日付プレスリリースより) |
|
電気バス用「AxTrax」電動アクスル ロンドンのバス運行会社Tower Transitが発注した英国のバスメーカーOptareの「Metrodecker」電気バス37台には、ZFの「AxTrax AVE」電動ポータルアクスルが採用されている。この電動アクスルはハイブリッド、燃料電池、バッテリーといったさまざまなドライブ構成で使用できる。薄型設計なのでバスメーカーの客室設計の自由度が増す。なお、ZFは2020年までにロサンゼルス、シアトル、ボストン、ミネアポリスで使われる電気バス100台のための「AxTrax AVE」アクスルを2018年に供給した。(2020年5月25日および2018年9月17日付プレスリリースより) |
|
展示会 | IAA2018に「Innovation Van」を出展 ZFはIAA国際商用車ショー2018に「Innovation Van」を出展し、インテリジェントネットワーク、自動運転、完全電動ドライブが将来の小包配送サービスをどのようにサポートするかを実演した。ZFはすでにシャトル車両用新型「CeTrax」電動セントラルドライブの量産を受注している。(2019年9月19日付プレスリリースより) |
IAA2019における「EVplus」バッテリー電動コンセプトカー IAA国際商用車ショー2019で発表されたZFの「EVplus」コンセプトカーは実環境で電動航続距離が100kmを超える。「EVplus」は量産型中型セダンにZFの8速プラグインハイブリッドトランスミッションを組み合わせ、35kWhの強力なバッテリーを搭載する。電気モーターは連続で65kW、最大95kWを出力できる。(2019年9月10日付プレスリリースより) |
![]() |
![]() |
e.GOの「カーゴ・ムーバー」EV(出典:e.GO MOOVE) | 小型商用車用「CeTrax lite」電動セントラルドライブ |
Magna:2030年までのハイブリッド車の成長を予測しポートフォリオを拡大
2018年のドイツ銀行グローバル自動車産業会議で、Magnaは電動化と自動運転技術の分野に対する投資を拡大すると発表した。Magnaは将来的には完全EVが市場シェアを握ると考えているが、自動車全体の中で内燃エンジンを搭載する車両の割合は2025年に94%、2030年でも87%を占めると予測している。Magnaはこの予測を基に、2030年までハイブリッド車の力強い成長が続くと見ている。
Magnaの電動化車両に対する戦略は、モジュラー式でスケーラブルなパワートレインに焦点を当てており、マイルドハイブリッド、マイクロハイブリッド、高電圧ハイブリッド、完全EVを含むさまざまなパワートレインをカバーする。同社は燃料電池と水素貯蔵システムに関する様々な研究プロジェクトにも関与している。
分野 | 活動内容 |
---|---|
協力・合弁 | EV開発の合弁会社 2019年1月15日、Magnaと北汽新能源(Beijing Electric Vehicle)の合弁会社である麦格納衛藍[鎮江](Magna Blue Sky Technology [Zhenjian])は江蘇省鎮江で開所式を行い、麦格納衛藍の新エネルギー車試験センター建設に着手した。麦格納衛藍は北汽新能源のハイエンドブランドARCFOXのEVを開発する。最初のモデルは2020年に量産開始予定。(2019年1月16日付けプレスリリースより) |
燃料電池ハイブリッド車をAVLと共同開発 オーストリアのエンジニアリング会社AVLは4月16日、電気自動車(EV)の重要技術開発を目指すKeytech4EVプロジェクトの一環として、デモ車両用のハイブリッド燃料電池とバッテリー駆動システムを開発したと発表した。AVLが率いるKeytech4EVプロジェクトには、Magnaなどのサプライヤー、各研究機関、IESTA(Institute for Advanced Energy Systems & Transport Applications)が参加している。フル装備の中型デモカーの燃費はガソリン車の2.5L/100kmに相当し、CO2排出量はゼロ、航続距離は500km以上。(2020年4月23日付プレスリリースより) |
|
中国で合弁会社が「e-Drive」システムを生産 Magnaと華域汽車(Huayu Motors)の合弁会社である華域麦格納電動駆動系統(Huayu Magna Electric Drive System)は、2019年10月に中国初の「e-Drive」システムアセンブリ生産開始を祝った。このシステムは、モーター、電気制御、減速機を統合したもので、高効率、軽量、低騒音である。華域麦格納はこのシステムをまずVWに提供し、VWとAudiのSUVの3モデルで使用される。(2019年10月18日付上汽集団WeChat公式アカウントより) |
|
米エネルギー省、先進電気モーター技術開発に助成金 Magnaは次世代推進システム用の先進電気モーター技術を開発するための助成金を米国エネルギー省(DOE)から受け取った。開発プロジェクトにはイリノイ工科大学とウィスコンシン大学マディソン校も参加する。プロジェクトの目的は自動車グレードの非永久磁石電気モーターの開発で、最大出力125kWを維持しつつコストを半減し出力密度を現行品の8倍にする。このモーター技術は「e-Drive」システムの一部としてトランスミッション、インバーターと組み合わされる。(2019年10月30日付プレスリリースより) |
|
新技術 | EV・HV用マルチマテリアル・バッテリーフレーム Magnaは業界初となるマルチマテリアル(複数材料)バッテリーフレームを開発した。このバッテリーフレームは先進複合材料と金属で構成され、EVやハイブリッド車(HV)のバッテリーハウジング要件を満たしている。 |
展示会 | 冬季試験走行路における試作EV「e2」 Magnaは電動化コンセプト全体を1つに体現した「e2」試作車を冬季試験トラックで初公開した。「e2」はハイブリッド・デュアルクラッチギアボックスと、さまざまな出力レンジで動作可能なトルクベクタリング機能が付いた電動リアアクスルを備える。これにより単一アーキテクチャで10種類のパワートレイン構成の実証と比較ができる。(2019年2月27日付プレスリリースより) |
「e4」デモカー 「e4」デモカーはMagnaのバッテリーEV用の「e-Drive」システムに焦点を当てた。現行生産モデルより約120km長い航続距離を提供し、前後アクスルに一体型永久磁石同期モーターの「e-Drive」システムを採用した。フロントシステムは機械式ディファレンシャル、リアはツインクラッチ・ベクタリングシステムである。「e-Drive」システムにはギアボックス、インバーター、インバーターソフトウェア、車両制御システムも含まれる。(2020年2月26日付プレスリリースより) |
![]() |
![]() |
Magna「e-Drive」システム | 冬季試験中のMagna「e4」デモカー(資料:Magna) |
Valeo:技術プラットフォーム開発の蓄積により、パワートレイン電動化の主導権を確立
Valeoは2019年のUniversal Registration Document(EU規則で規定された企業情報)で、同社がパワートレイン電動化における主導的地位を確立できたのは、2017年から2019年にかけて製品ポートフォリオを拡大する12の技術プラットフォーム開発に5億ユーロを投資したことによるものだと述べた。電動化に関わるプラットフォームは以下の通り:
- 高電圧(60V超)のeマシンとeアクスル
- 高電圧インバーター
- 高電圧車載充電器
- 48V eマシンとeアクスル
- 48V DC/DCコンバーター
- EVバッテリー冷却システム
- EV室内熱システム
- EV用ヒートポンプ
Valeoは全体として幅広いeモビリティポートフォリオを有するが、その取り組みのほとんどは高電圧システムと48Vソリューションに集中している。特に48Vシステムはさまざまな用途に使える上、高電圧システムより価格が手頃だと見ている。
Valeoは12の技術プラットフォームで自動車電動化の主導権を維持することを目指す。これらのプラットフォームは2022年までに26億ユーロの売上を生むと期待されている。2019年から2022年に欧州自動車メーカーが発売する60V超のEVの3分の2はValeoの高電圧システムを採用している。高電圧システムの売上は2022年までに14億ユーロ、2024年までに20億ユーロに達すると見られる。
2019年末時点でValeoの48V eマシンとeアクスルプラットフォームは75億ユーロの受注を獲得した。30万基以上のeマシンが2019年末までに出荷され、2020年から2022年にかけて620万基の追加ユニットが15種類の車両モデルに提供されるとみられる。Valeoでは2022年までに48V eマシンとeアクスルの市場シェアが40%を超え、売上は11億ユーロを超すと見ている。
分野 | 活動内容 |
---|---|
投資・買収 | Valeo、フランス政府のコロナ復興政策を活用 Valeoはフランス政府が発表したコロナ復興策に基づき、48V電気モーターの生産ライン数を増強してフランスにおける地位を強化する。フランス政府は年間1億5,000万ユーロのイノベーション基金を設立して、Valeoがフランスで将来技術を開発し国内の足場を強化できるようにする。(2020年5月26日付プレスリリースより) |
協力・合弁 | Silicon MobilityとGMG-EHLプロジェクトで協力 フランスのモビリティ技術企業Silicon Mobilityは、パワートレイン電動化に関するValeoの支援を受けたGMG-EHL(EV・HV電気モーター用統合マイクロコントローラー)プロジェクトの成功を発表した。このプロジェクトによりリアルタイムな機能安全性をもたらす、半導体ベースの独自ソリューションOLEA FPCU(フィールドプログラム可能制御ユニット)の設計と工業化が可能になった。Silicon MobilityのOLEAソリューションはエネルギー効率改善、CO2排出低減、機能安全性強化をもたらし、マイルドハイブリッド車の電子システム制御のコストを低減する。(2019年5月16日付プレスリリースより) |
展示会 | 上海モーターショー2019における電動化技術 Valeoは上海モーターショー2019で48V低電圧の完全電動アーバンカーの試作車を発表した。完全に機能する2人乗り試作車は、最高速度100km/h、航続距離150kmで、どの電源コンセントでも充電できる。また、車両の充電と電力グリッドへの電力供給が双方向で可能なリバーシブル充電器も披露した。全天候オールシーズン対応のEV用熱管理・快適性ソリューションも展示した。(2019年4月14日付プレスリリースより) |
![]() |
![]() |
完全電動48Vアーバンカーのプロトタイプ | EV用熱管理システム |
BorgWarner:Delphi Technologiesを買収、eモビリティポートフォリオを強化
BorgWarnerの戦略は、あらゆる車両推進タイプでエネルギー効率向上を図ることに重点を置いている。BorgWarnerのポートフォリオは48V、高電圧、ハイブリッド、完全電気アプリケーションに向けたシステムと製品を網羅している。車両のハイブリッド化と電動化は共に戦略の中心領域である。BorgWarnerは電気システムと内燃エンジン双方に向けた部品とシステムを販売できるため、特にハイブリッド駆動システムが成長の鍵だと見ている。BorgWarnerは2020年、個別部品よりも電気モジュールに重点を置いた販売を加速、拡大し始めた。
BorgWarnerが専門知識を有するトランスミッション、電気モーター、P2ハイブリッドモジュール、電動コンプレッサーなどの技術により、同社はクリーンでエネルギー効率に優れた推進システムソリューション開発における主導的な位置を占めている。この地位をさらに強化するために同社は2020年1月、約33億ドルでDelphi Technologiesの買収契約を結んだ。この買収によりパワーエレクトロニクス製品と電動推進システムにおけるBorgWarnerの地位が強化される。
分野 | 活動内容 |
---|---|
投資・買収 | 中国・武漢に新工場 BorgWarnerは2018年8月、中国・武漢の蔡甸に新工場を開設した。新工場は生産、エンジニアリング、品質、販売、物流、財務機能を統合した包括的組織である。工場では駆動モーター、P2ハイブリッドモーター、コントローラー一体型48Vスターターモーター、スターター、オルタネーターなどの部品を生産する。(2018年8月29日付プレスリリースより) |
Delphi Technologiesの買収 BorgWarnerは2020年1月28日、Delphi Technologiesを全株買取により約33億ドルで買収する契約を締結した。この買収によりBorgWarnerのパワーエレクトロニクス製品のポートフォリオが強化され、その機能と規模が拡大し、電動推進システムにおける主導権を握ることになる。Delphiの株主は2020年6月の買収を承認した。(2020年1月28日付プレスリリースより) |
|
モーターとパワーエレクトロニクスの開発・試験センターを新設 BorgWarnerは2020年5月、インディアナ州ノーブルズビル(Noblesville)に新技術センターを開設した。乗用車・商用車用の電気モーターとパワーエレクトロニクスの試作品を開発、組立、試験、検証する。技術センターは生産の全領域に対応したインフラを備えているため、センターで生産プロセスを変更して生産工場に引き継ぐことができる。(2020年5月14日付プレスリリースより) |
|
新技術 | 「eBooster」とモーター発電ユニットの複合推進システム BorgWarnerは「eBooster」電動コンプレッサーとベルト駆動式モーター発電ユニットのスマートな組み合わせを、大型ピックアップトラックのデモカーに搭載して披露した。既存の推進システムに簡単に組み込める費用対効果の高い組み合わせにより、48V電動化の理想的なソリューションを提供する。エンジンのダウンサイジング、ダウンスピーディング、ブレーキエネルギー回生などを組み合わせた低速エンジントルクの向上により燃費が大幅に改善した。(2018年10月25日付プレスリリースより) |
ハイブリッド車用高電圧ヘアピン電気モーター BorgWarnerの高電圧ヘアピン電気モーター「HVH 146」は、2020年初めに小型ハイブリッド乗用車向けの生産が始まる。「HVH 146」は内部永久磁石電気モーターでP0ハイブリッド車のベルト駆動組込に最適であり、高張力ベルトシステムを介してエンジン前部に取り付けられる。モーターはブレーキ作動時や惰性走行時にバッテリーパックを充電できる。最大出力35kW、最大トルク65Nm。BorgWarnerの「HVH 410」電気モーターは2019年に欧州のプラグインハイブリッド電気トラック向けに投入される。出力130kW、トルク1,050Nmの「HVH 410」はインライン5気筒エンジンと並行して作動する。モーターはブレーキ作動時と下り坂惰性走行時にバッテリーパックを充電できる。「HVH 410」は完全ハウジングモーターとしても、ローター・ステーター・アセンブリとしても利用できる。(2019年12月5日と2019年2月20日のプレスリリースより) |
|
高電圧クーラントヒーター BorgWarnerの室内とバッテリー加熱用新型高電圧クーラーヒーターは、2021年に欧州、北米、アジアで次世代EVとHVに搭載されて登場する。新しい高効率厚膜素子システムは、車両から内燃エンジンが減りつつある中で開発された。BorgWarnerはバッテリーの熱管理もしくは室内暖房に用いるシングルプレートデバイスと、両方の機能を同時に管理し、伝熱表面積が最大80%広いデュアルプレートデバイスを開発した。(2020年3月3日付プレスリリースより) |
|
受注 | 蔚来汽車「ES8」電気SUV向け高電圧室内ヒーター BorgWarnerは蔚来汽車(NIO)の「ES8」電気SUV用に先進的な高電圧PTC(正温度計数)室内暖房技術を提供している。PTC室内暖房技術は二重絶縁保護構造を持つため絶縁耐力が高い。また、デュアルゾーン機能により精密な暖房制御が可能となる他、高い熱効率によりエネルギー消費が低減し航続距離が延びる。(2018年8月28日月プレスリリースより) |
長城汽車「C30」EV用電動ドライブモジュール(eDM) BorgWarneは2018年型長城汽車「C30」EVと長城汽車の欧拉(ORA)ブランド向けに高性能電動ドライブモジュール(eDM)を供給している。「C30」は中国製EVとして初めてBorgWanerのeDMを搭載した。電気モーターと「eGearDrive」トランスミッションを組み合わせた設計で、重量、コストが低減し、省スペースな上に実装が容易である。(2018年9月17日付プレスリリースより) |
|
中国OEM向けP2ドライブモジュールと電子油圧制御ユニット BorgWarnerは中国の主要OEM2社に向けたオンアクシス型P2ドライブモジュールと電子油圧制御ユニットを供給するサプライヤーとして選定された。2件の契約によりBorgWarnerは2023年までに18案件でP2ハイブリッドトランスミッションを提供する。P2オンアクシスハイブリッドモジュールは内燃エンジンとトランスミッションの間に置かれる電気モーター付きドライブ部品で、低コストのハイブリッド化を可能にする。(2018年9月17日付プレスリリースより) |
|
威馬汽車「EX5」BEV用電気ドライブモジュール(eDM) BorgWarnerはスマートシティの交通モデル確立に向け、中国の威馬汽車 (WM Motor) と3年間の戦略的提携契約を結んだ。BorgWarnerは先進的電気推進技術と効率的な電気アプリケーションシステムを威馬汽車に提供する。契約には威馬汽車の「EX5」電気SUV用の高性能電動ドライブモジュール(eDM)も含まれる。(2018年9月25日付プレスリリースより) |
|
欧州OEM向け電動ターボチャージャー BorgWanerは欧州主要OEMとの契約を確保し、「eTurbo」システムを2022年生産開始予定の乗用車に供給する。「eTrubo」は、シャフトに直結されてモーター兼発電機として機能する電気モーターを備えた、機械式ターボチャージャーで構成されている。この統合ソリューションにより、優れた応答を示す電動ブーストアシストが可能となり、定常状態のトルクを改善すると共に過渡ブースト応答が200%以上向上した。「eTurbo」は余剰な排気エネルギーを電気エネルギーに変換することもできる。(2020年1月23日付プレスリリースより) |
|
展示会 | 冬季試験における電動化ソリューション BorgWarnerは、2019年2月25日から3月8日までスウェーデン・アリエプローグ(Arjeplog)で毎年開催されるArctic Drive Winter Testで、雪に覆われた地形と凍結した湖の上における、最新のパワートレインおよび革新的推進技術を披露する。P2モジュール、「eBooster」電気駆動コンプレッサー、高電圧ヘアピン電気モーターなどの先進的48Vソリューションが披露される。(2019年2月21日付プレスリリースより) |
「人とくるまのテクノロジー展」における電動化製品 BorgWarnerは数々の電動化ソリューションを、横浜で開催される「人とくるまのテクノロジー展」に出展。炭化ケイ素技術を用いて効率的に充電する車載バッテリー充電器やeモビリティ用「eAxle」統合ドライブモジュール(iDM)、「eBooster」電動コンプレッサーを展示する。「eAxle」は特注電気モーター、パワーエレクトロニクスモジュール、ギアボックスで構成される。48V EV用に開発された「eBooster」は、ターボチャージャーが引き継ぐまで必要に応じてブーストを提供し、低速時のブーストを改善してターボラグをほぼ解消する。高効率でエネルギー回収機能を持つ集積電子回路付モーター発電機も展示する。(2019年5月8日付プレスリリースより) |
|
EV・HEV駆動システム技術展2020における電動化システム BorgWarnerは東京で開催されたオートモーティブワールド2020のEV・HEV駆動システム技術展でEV用の一連の技術を出展。Romeo Power Technologyとの合弁会社のバッテリーパックが展示される。BorgWarnerの統合ドライブモジュールは、パワーエレクトロニクスを電気モーターおよびトランスミッション技術と組み合わせた完全統合システムである。オン・オフ・アクシスP2ハイブリッドモジュールは、モーターとトランスミッションを変更せずに、内燃エンジン車をハイブリッド用途に変換する柔軟性を提供する。また、集積パワーエレクトロニクスおよびタービンと同じシングルシャフトに取り付けられたモーター発電機からなるターボチャージャー「eTurbo」も展示される。(2019年12月12日付プレスリリースより) |
|
インドAuto Expo 2020における電動化システム BorgWarnerはインドのAutoExpo 2020で革新的な「eTurbo」を出展した。同社は最新のバッテリーパック、バッテリー、室内ヒーターなどのEV向け製品も展示した。(2020年1月14日付プレスリリースより) |
![]() |
![]() |
Romeo Power Technologyと共同開発したバッテリーパック | 「HVH 410」電気モーター |
------------------
キーワード
Bosch、ZF、Magna、Valeo、BorgWarner、電動化、電動車、EV、サプライヤー、熱管理、燃料電池、48V、HV
<自動車産業ポータル マークラインズ>