OEM各社の米国投資動向

SUVの需要拡大、サステナビリティ、モビリティ、自動運転に対応

2017/12/22

要約

 トランプ大統領は、2016年の選挙戦から大統領就任後の1年を通して、GM、トヨタ、Fordなどのメーカーがメキシコから車を輸入していることを批判し続けてきた。 大統領選挙後、初めての自動車ショーとなった2017年デトロイト・モーターショーでは、多くのメーカーが過去から将来にかけての米国投資活動をさかんに強調した。これはトランプ大統領のレトリックへ応えているようにも映るが、その詳細を読み解くと、これらの投資行動は、むしろ米国市場や自動車業界の状況変化に対応するものであろうことが見て取れる。

 本稿では、2017年にOEM各社から発表された米国における投資活動の概要と、LMC Automotive社によるメーカー別米国生産予測を報告する。

BMW US Manufacturing Plant.
BMWの米国工場 (BMW資料)

関連レポート:
GM:Opel売却などグローバル事業を再構築、北米・中国に経営資源を集中 (2017年9月)
トヨタの米国事業:ToyotaブランドはTNGA車、LexusはGA-L車を本格投入
(2017年9月)
現代自動車:高級車ブランド"Genesis"とエコカー"Ioniq"シリーズを投入 (2017年4月)
米国市場分析:SUVの割合が40%へ (2017年3月)



北米OEM:GM、Ford、FCA

 米国企業としてのルーツをもつGM、Ford、FCAの3社は、いずれも米国内に製造拠点のネットワークを築き上げており、米国自動車産業のキープレーヤーとみなされている。このことは、3社がコンスタントに生産設備に関する内容を数多く発表していることにも表れている。例えば、2017年デトロイト・モーターショーに先立ち、3社とも少なくとも7億ドルの米国投資を発表していた。

Ford's Flat Rock Assembly Plant.
FordのFlat Rock完成車工場 (Ford資料)
北米OEM
会社名 2017年に発表した投資プロジェクト
General Motors 米国での製造事業に10億ドルを投資
2017年1月、GMは新型車、先進技術、および各種コンポーネントのプロジェクトを対象に、合わせて10億ドルを米国製造事業に投資すると発表した。国外のIT関連業務を社内調達に切り替えることと併せ、7,000人の雇用創出に繋がる。この投資総額には、テネシー州Spring Hill工場でのオーストラリア向け輸出用Holden Acadiaの組み立て生産に向けた投資2,700万ドルと、今後のエンジン製造に備えたミシガン州Bay Cityパワートレイン工場のカム粗加工ラインへの投資2,000万ドルが含まれている。
ミシガン州で900人の雇用追加・維持
2017年3月、GMはミシガン州の下記3拠点における900人の雇用追加・維持を発表した:
  • Romulusパワートレイン工場:2017年型Chevrolet Camaro ZL1等向けの10速オートマチック・トランスミッションを増産するため、220人を新たに採用。 
  • Flint工場:Chevrolet Silverado HDおよびGMC Sierra HDの生産支援のため、Lansing Delta Township工場の再編で生じた人員180人を再雇用
  • Lansing Delta Township:新型Chevrolet Traverse、並びにBuick Enclaveの生産のため、500人の雇用を維持
テキサス州Arlingtonサプライヤーパークに850人を追加雇用
2017年6月、GMはテキサス州Arlington工場での生産をサポートするためにサプライヤーパークを建設し、2018年に稼働させると発表した。 同工場はChevrolet Tahoe、Chevrolet Suburban、GMC Yukon、GMC Yukon XL、ならびにCadillac Escaladeを組み立てている。 2017年11月現在、Arlington工場では競争力強化のため14億ドルを投じた拡大工事が進行中。
Ford Motor ミシガン州Flat Rock工場へ9億ドルを投資
2017年1月、Fordはミシガン州のFlat Rock工場を拡張するために7億ドルを投資し、700人の新規雇用を創出すると発表した。MustangとLincoln Continentalの生産のほか、電気自動車と自動運転車の生産準備に充てられる。2017年12月のAutomotive News報道によると、Fordは同工場にさらに2億ドルを投資して150人の雇用を追加する予定。この追加投資により、Flat Rock工場ではバッテリー電気自動車から事業の主軸を移し、ライドシェアや配送事業を手がける大口ユーザーへ向けたハイブリッド自動運転車を2021年までに開発し、生産することを目指す。
ミシガン州の3拠点へ12億ドルを投資
2017年3月、FordはトラックとSUVの生産能力を増強し、さらに新モビリティ開発への移行を促進するため、ミシガン州の下記3つの施設に12億ドルを投資すると発表した。
  • Michigan工場 (Wayne):2018年からの新型Ford Ranger生産、2020年からの新型Ford Bronco生産立ち上げに備え、設備改修に8億5,000万ドルを投資。
  • Romeoエンジン工場:1億5,000万ドルを投資し、130人の雇用創出・維持とともに、今後立ち上がる新型Ford RangerやFord Bronco向けを含むエンジン部品の生産能力を拡大。
  • Flat Rock組立工場:ミシガン州での先進データセンター設立へ2億ドルを投資。データセンターはFordの同種の設備としては2つ目となるもので、同社の製造、事業オペレーション、ならびにモビリティサービスをサポートすることになる。同社のデータセンター第1号はDearbornの本社内にある。
ミシガン州Livoniaトランスミッション工場へ3億5,000万ドルを投資
2017年5月、Fordはミシガン州のLivoniaトランスミッション工場へ3億5,000万ドルの投資を行い計800人の雇用創出、あるいは維持をすると発表。この投資は前輪駆動車向け新型トランスミッションの生産に充てられる。この新型トランスミッションは2017年型F-150 Raptor搭載の10速トランスミッションとソフトウェア、デザイン要素、製造工程を共有している。
ケンタッキー州Louisvilleトラック工場へ9億ドルを投資
2017年6月、Fordはケンタッキー州Louisvilleトラック工場に9億ドルを投資し、1,000人の雇用を維持すると発表した。新型Ford ExpeditionとLincoln Navigatorの生産に向けた設備刷新に充てる予定。
American Center for Mobilityに500万ドルを拠出
2017年9月、Fordはミシガン州Ypsilanti TownshipにあるAmerican Center for Mobilityに500万ドルを拠出し、コネクテッド、自動運転、およびモビリティ技術のためのテスト環境の整備を支援していくと発表した。
Fiat Chrysler ミシガン州、オハイオ州の製造設備へ10億ドルを投資
FCAは2017年1月、2016年1月に始まった事業刷新計画の第2段階の一部となる総額10億ドルに及ぶ投資を発表した。この計画は、トラックやSUVへの需要シフトに対応して同社の生産能力を見直し、米国内事業を再編することを目的としている。この投資は新型Jeep Wagoneer、並びにGrand Wagoneerを生産する予定のミシガン州Warrenトラック工場の改修と近代化に充てられ、2,000人の雇用創出を実現する。このほか、オハイオ州Toledo工場での新規車種Jeepピックアップの立ち上げに向けた同工場南棟の設備改修と刷新が含まれている。

出所:各社プレスリリース、Automotive News

 



アジアOEM:トヨタ、ホンダ、現代・起亜、スバル

 トヨタやホンダなど、アジアの大手自動車メーカーは、米国の製造業として大きな存在感を示しており、他のアジアOEMと比較して米国への年間投資額も大きい。これはアジア系各社による2017年の発表にも反映されており、今後5年間で100億ドルを投資するトヨタのコミットもその1つである。しかし、米国での生産規模が比較的小さい他のOEMも巨額の投資計画を発表している。例えば、現代・起亜は5年間に31億ドルを米国に投資するとし、スバルはAscent SUVの立ち上げに向けた1億4,000万ドルの投資計画を公表している。

Toyota Motor Manufacturing Kentucky.
Toyota Motor Manufacturing Kentucky (トヨタ資料)
アジアOEM
会社名 2017年に発表した投資プロジェクト
トヨタ 5年間で100億ドルを米国に投資
2017年1月、トヨタの豊田章男CEOは今後5年間に100億ドルを投資すると発表した。 これは同社が過去5年間に行った投資額と一致するもの。この合計額にはテキサス州Planoのトヨタの北米新本社への10億ドルの投資が含まれている。北米トヨタの最高経営責任者(CEO)であるJim Lentz氏は、より燃費効率の高い車の開発に投資が振り向けられると述べている。
インディアナ州Princeton工場へ6億ドルを投資
2017年1月、トヨタはインディアナ州Princetonの工場に6億ドルを投資し400人の雇用を創出すると発表した。この投資はHighlander増産のための工場設備の改修、新しい設備の追加、高度技術の導入に充てられる。当プロジェクトは2019年秋に開始される予定で、Highlanderの生産能力について年間4万台の上乗せを図る。
ケンタッキー州Georgetown工場に13億3,000万ドルを投資
2017年4月、トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ケンタッキーのGeorgetown工場に13億3,000万ドルの投資を行うと発表した。この投資により、北米の工場で初めてトヨタ新グローバル・アーキテクチャ(TNGA)による車両生産が可能となる。さらに工場の設備改良、新たな塗装ラインの建設にも充てられる。
ミシシッピ州Blue Springs工場のビジター&トレーニングセンターに1,000万ドルを投資
トヨタは2017年4月、ミシシッピ州Blue Springs工場にビジター&トレーニングセンターを設立するため1,000万ドルを投資すると発表した。
American Center for Mobilityに500万ドルを拠出
2017年7月、北米トヨタとトヨタ・リサーチ・インスティテュートは、ミシガン州Ypsilanti TownshipにあるAmerican Center for Mobilityに500万ドルを拠出し、コネクテッド、自動運転、およびモビリティ技術のテスト環境を整備すると発表した。
5工場に3億7,380万ドルを投資
2017年9月、トヨタ初となる米国製ハイブリッドパワートレイン生産のために、下記の製造5拠点に合計3億7,380万ドルの投資を行うと発表した。
  • トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ケンタッキー (Georgetown):1億2,096万ドルを投資して2.5Lエンジンの生産能力を増強
  • テネシー州のBodine Aluminum Jackson:ハイブリッド・トランスアクスル・ケースとハウジング、2.5Lエンジンブロックの生産に1,450万ドルを投資
  • トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ウェストバージニア (Buffalo) :1億1,530万ドルを投資してハイブリッド・トランスアクスルの生産に対応
  • トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・アラバマ (Huntsville):1億600万ドルを投じ、TNGA車両向けエンジンの生産に対応するため工場全体をアップグレード。
  • Bodine Aluminum ミズーリ州Troy工場:1,705万ドルを投資して、2.5Lエンジン用シリンダーヘッドを増産
ホンダ ジョージア州Tallapoosaとオハイオ州Russells Point両工場へ1億5,000万ドルを投資
ホンダは2017年3月、前輪駆動車用の新型10速オートマチック・トランスミッション生産のために約1億5,000万ドルを投資すると発表した。ジョージア州TallapoosaにあるHonda Precision Parts of Georgiaに1億ドルを投資して新たな組立ライン設置と工程改良を行うほか、オハイオ州Russells PointのHonda Transmission Mfg of Americaへ4,900万ドルを投資して新設備の導入と生産能力の増強を行う。新型10速トランスミッションは2018年型Odysseyの上級グレード車種に搭載されている。
アラバマ州Lincoln工場に8,500万ドルを投資
2017年3月、アラバマ州Lincolnのホンダ・マニュファクチャリング・オブ・アラバマで段階的に進めているプロジェクトの第1フェーズとして、8,500万ドルの投資計画を発表した。製造のフレキシビリティとロジスティクス効率の向上に加え、将来のテクノロジーへの布石を打つもの。一部の組立ラインの建屋拡張が含まれており、これは2018年に完成予定。現在、ホンダ・マニュファクチャリング・オブ・アラバマではOdyssey、Pilot、Ridgeline、ならびにAcura MDXの各モデルが生産されている。
オハイオ州East Liberty工場に新設する風洞設備に1億2,400万ドルを投資
ホンダは2017年4月、多機能の空力音響風洞設備に1億2,400万ドルを投資すると発表した。この風洞設備はEast Libertyにある交通研究センターの試験施設内に設置される。量産モデルとレースカー両方のテストに使用され、最高時速192マイル(約309キロ)までの風速を再現することができる。
オハイオ州の2工場に2億6,700万ドルを投資
2017年9月、2018年型Accordの生産増強のため、オハイオ州の2工場に2億6,700万ドルを投資すると発表した。Marysville工場には、溶接部門への投資1億6,500万ドルを含め、新技術や新工程の導入に2億2,000万ドルが投資される予定。またAnnaエンジン工場では、Accordの1.5Lおよび2.0Lターボエンジンの生産に4,700万ドルが充てられる。この投資により300人の追加雇用が見込まれている。
現代・起亜 米国に5年間で31億ドルを投資
2017年1月のBloombergの報道によると、現代自動車と起亜自動車の親会社である現代自グループは2022年までに31億ドルを米国に投資すると発表した。この発表は、同グループが前回公表した米国での投資額に50%増加されるもの。今回の投資は自動運転や代替燃料といった先進技術、現行設備の改良、新型車開発、アラバマ州Montgomery工場の拡張など様々な目的に使われ、さらには米国での新たな工場建設に投じられる可能性もある。
American Center for Mobilityに500万ドルを拠出
現代自の米テクニカルセンターは2017年10月、ミシガン州Ypsilanti TownshipにあるAmerican Center for Mobilityと長期的なパートナーシップを結び、コネクテッド、自動運転、およびモビリティ技術のテスト環境の整備をサポートするために500万ドルを拠出すると発表した。
スバル インディアナ州Lafayette工場に1億4,000万ドルを投資
2017年12月、スバル・オブ・インディアナ・オートモティブに1億4,000万ドル以上を投資し、ロサンゼルス・オートショーで公開されたSubaru Ascent SUVの生産に向けた新たな生産機械と設備を導入すると発表した。これにより、200人の雇用を創出、2018年には工場の生産能力が約40万台となる。

出所:各社プレスリリース、Bloomberg、Reuters

 



欧州OEM:Daimler、BMW、Volvo

 米国内で車両製造を行っている欧州の主要OEMは、他地域の自動車メーカーと異なり、いずれも米国内の製造拠点は1カ所である。Daimlerはアラバマ州Tuscaloosa、BMWはサウスカロライナ州Spartanburg、VWはテネシー州Chattanoogaに製造拠点を置いている。 2017年11月現在、Volvoはサウスカロライナ州Charlestonに製造拠点を建設中で、2018年に生産を開始する予定。

Mercedes-Benz U.S. International.
Mercedes-Benz U.S. International (Daimler資料)
欧州OEM
会社名 2017年に発表した投資プロジェクト
Daimler アラバマ州Tuscaloosa工場に10億ドルを投資
2017年9月、Mercedes-Benzはアラバマ州Tuscaloosaの生産施設を拡張するために10億ドルを投資すると発表した。その大部分はMercedes-Benz EQブランドのSUV製造に充てられる予定。一部は近隣にバッテリー工場を建設するために使われる見込みで、同社のバッテリー生産ネットワークで5番目の施設となる。この投資により、600人の新規雇用を創出すると期待されている。Tuscaloosa工場でのEQ SUVの生産は2020年に始まる予定。
BMW 2018-2021年にサウスカロライナ州Spartanburg工場に6億ドルを投資
2017年6月、2018年から2021年にかけてサウスカロライナ州のSpartanburg工場に6億ドルを投資すると発表した。将来のBMW Xモデル用の製造インフラ増強に充てられる予定。同工場では現在、新型BMW X7の生産準備を進めている。
Volvo サウスカロライナ州Charlestonの新工場建設に6億ドルを追加投資
2017年9月、サウスカロライナ州Charlestonで建設中の工場で、S60に加え2021年からXC90の生産も追加すると発表した。Volvoが工場建設に投じた当初の5億ドルに加えて、約6億ドルを追加投資する予定。これにより1,900人の採用が必要になり、合計で3,900人の雇用が創出される見込み。同工場でのS60の生産開始は2018年秋の予定で、XC90が追加されることで年間生産能力は15万台となる見通し。

出所:各社プレスリリース

 欧州の大手OEMはそれぞれ米国内に乗用車製造拠点を1カ所しか持っていないため、投資発表は間隔をあけた不規則なものになりがちである。例えばBMWはSpartanburg工場への6億ドルの投資発表に先立ち、2014年に10億ドルの投資を発表している。Daimlerも2017年の投資実行前に、SUV増産に向けた13億ドルの投資を2015年に行っている。Volvoの組立工場建設に関する発表は、2015年と2017年に行われている。

Announced investments in U.S. from European OEMs
欧州OEMが公表した米国での投資計画
*BMWの総額には2017年に発表されたサウスカロライナ州Spartanburgへの4年にわたる投資6億ドルを含む。


OEM合弁・提携による投資:GM・ホンダ、トヨタ・マツダ

 2017年には、米国での製造事業に関する大手OEM間の合意が2件発表された。最初の合意は燃料電池システムを製造するためのGMとホンダの合弁会社設立に関するもの。また2件目はトヨタとマツダの合意で、2021年から年間30万台の車両を生産する新工場建設を始め、複数の目標を掲げている。

OEM合弁事業への投資
会社名 2017年に発表した投資プロジェクト
GM・ホンダ GMとホンダ、燃料電池システムの製造で合弁会社を設立
2017年1月、GMとホンダは先進的な水素燃料電池システムを量産する合弁会社、Fuel Cell System Manufacturing, LLCの設立を発表した。合弁事業への投資額は合計8,500万ドルで、両社が同等額を出資する。この合弁会社はミシガン州BrownstownにあるGMのバッテリーパック製造拠点内に設置される。約100人の新規雇用を創出し、2020年の生産開始が見込まれている。
トヨタ・マツダ トヨタとマツダが業務提携に合意
2017年8月、トヨタとマツダは事業提携ならびに資本提携に関する合意に署名した。同提携は以下の5点を主要な目的としている:
  1. 米国で自動車を生産する合弁会社を設立。2021年の操業開始を目標に16億ドルを投資して工場を建設する。年間約30万台を生産する予定で、最大4,000人の雇用を創出する。マツダは北米市場向けのクロスオーバー車、トヨタはCorollaの生産を計画。
  2. 電気自動車向け技術の共同開発
  3. コネクテッド技術の共同開発
  4. 先進安全技術に関する共同研究
  5. 商品補完の拡充

出所:各社プレスリリース

 



米国OEMの投資はSUV、クロスオーバー、先進技術へシフト

 2017年に発表された投資の多くは、SUVやクロスオーバーの生産サポートや増産に向けられており、これは米国市場での需要の変化を反映している。例えばFCAはJeep WagoneerとGrand Wagoneerを復活させ、新たにJeepピックアップトラックを生産するために製造拠点を改修すると発表している。GMのArlington組立工場に新設されるサプライヤーパークは同工場での生産をサポートするものだが、現時点で生産車種はSUVとクロスオーバーである。BMWのSpartanburg工場への6億ドルの投資は、SUVのX Seriesとクロスオーバー車種に向けられるもの。トヨタとスバルは両社ともインディアナ州の工場に投資し、それぞれのSUVであるHighlanderの増産、Ascentの生産準備を行う。グローバルメーカーによるクロスオーバーおよびユーティリティ・ビークルの生産に向けた投資が拡大していることは、これらのセグメントがいかに重要かを示している。

BMW X7 Concept iPerformance Subaru Ascent. Source: Subaru
BMW X7 Concept iPerformance Subaru Ascent (スバル資料)


 2017年に発表された投資計画では、サステナビリティ向上に繋がる技術へ投資する動きも共通のテーマとして見られた。Fordはライドシェアや配送事業を手がける大口ユーザー向けハイブリッド自動運転車を開発するため、Flat Rock組立工場に合計9億ドルとなる2件の投資を発表している。DaimlerによるTuscaloosa工場への10億ドルの投資は、Mercedes-Benz EQブランドの電動SUVの生産に充てられる。トヨタは米国におけるハイブリッドパワートレイン生産立ち上げに向けて約4億ドルを投資する。2017年1月に発表されたGMとホンダの合弁会社は水素燃料電池システムの開発と生産を目的として設立された。

 このほか目立った投資対象分野として、自動運転とコネクテッド技術がある。 前述のように、FordによるFlat Rock組立工場への投資は、2021年の生産開始を目指すハイブリッド自動運転車の生産準備を目的としたものである。Ford、トヨタ、現代・起亜の各社は、American Center for Mobilityへの拠出を発表している。ここでは自動運転とコネクテッド技術のテスト環境整備が進められる。さらに現代・起亜による31億ドルの投資は、その一部が自動運転とAIの研究に充てられる予定。

 2017年は米国での乗用車販売の減速が予想されたにもかかわらず、数多くのメーカーが生産施設を新設するための投資を発表している。Volvoはサウスカロライナ州Charlestonで建設中の工場に6億ドルの追加投資を行うと発表した。トヨタとマツダの事業提携では合弁工場の建設に16億ドルを投じるとしている。現代・起亜の31億ドルの投資計画は、同社が米国で新たに車両生産工場を建設する可能性を含んでいる。

 全体的に見ると、過去3年間の米国投資総額には目立った傾向と言えるものはなかったが、2017年は2016年に比べて投資関連の発表件数が増加し、投資総額も増大した。さらにマツダとトヨタの提携合意を含めると、2017年に米国への投資を発表したメーカーは11社にのぼり、2016年の5社から大きく増えている。



LMC Automotive生産予測:米国の生産台数は2017年に減少し、2020年にやや持ち直す

(LMC Automotive、2017年10月)

LMC-USProdForecast
U.S. yearly light vehicle production forecast. Source: LMC Automotive, "Global Automotive Production Forecast (October 2017)"

 LMC Automotiveの生産予測(2017年10月)によると、米国のライトビークル生産台数は2017年から2019年にかけて約1,120万台の水準で推移し、2020年には1,140万台程度まで回復する見込み。

 2017年の米国生産は6.3%減の1,120万台となる見込み。主な減少要因は自動車需要の減速であるが、別の要因としてSUVとクロスオーバーへの生産シフトを背景とする生産車種切り替えのための工場操業休止や在庫調整が挙げられる。FCAの生産は2017年に約32.8万台減少すると見込まれるが、これは需要の減少と、Sterling Heights組立工場が新型Ram1500に備えた改修のため年間を通して休止していたことによる。Dodge Dartを生産していたFCAのBelvidere工場はJeep Cherokeeの生産準備のため、4月まで操業停止となっていた。同モデルは5月に生産開始となった。スバルはImpreza生産が通年で貢献すること、Outbackへの需要が高いことなどから、25.4%の生産増加が見込まれている。VWグループは、2月にChattanooga工場で生産開始されたAtlasが約59,000台の台数増をもたらし、39.1%の生産増加となる見通し。

 2018年の米国生産は0.4%減少すると予測。北米の販売台数は微増と見込まれるものの、ここでも新型車への切り替えが影響する。特にFordはFocusの生産をミシガン州の組立工場から中国へシフトし、10月にはRanger生産のためC-Maxの生産を停止する。これにより同工場は切り替え期間中の4カ月間、操業停止となる。 最大の増産が期待されているのはFCAで、Jeep WranglerとRam 1500の新型車、ならびに改良型Jeep Cherokeeの投入効果が見込まれる。

 2020年の生産台数は2017年に対し1.4%増の1,140万台と予想している。特にTesla、Volvo、現代による生産能力の増強や各種モデルの現地生産化が貢献し、北米での需要減退を補うと期待されている。

米国のライトビークル生産予測

(単位:台)

SALES
GROUP
GLOBAL
MAKE
2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
Total  11,412,176 11,812,061 11,997,434 11,241,685 11,202,108 11,121,710 11,396,121
Ford Group  Ford 2,218,173 2,410,614 2,335,040 2,357,221 2,158,659 2,081,403 2,156,411
Lincoln 54,019 59,928 71,382 98,351 85,672 93,074 128,226
Ford Group sub-total 2,272,192 2,470,542 2,406,422 2,455,572 2,244,331 2,174,477 2,284,637
General Motors Group    Chevrolet 1,473,568 1,490,596 1,663,486 1,427,252 1,387,689 1,285,123 1,351,555
GMC 362,041 423,910 445,766 467,648 387,268 390,226 443,846
Cadillac 100,507 88,339 168,903 170,921 154,072 190,006 216,256
Buick 164,310 139,092 131,041 63,728 77,910 86,124 76,743
General Motors Group sub-total 2,100,426 2,141,937 2,409,196 2,129,549 2,006,939 1,951,479 2,088,400
Fiat Chrysler Automobiles    Jeep 1,064,906 1,075,280 1,014,326 759,811 917,714 814,885 921,341
Ram 315,900 329,931 340,867 344,366 429,105 417,799 413,755
Chrysler 159,054 180,083 42,805 0 0 0 0
Dodge 176,271 172,399 108,433 73,932 73,536 48,879 0
Fiat Chrysler Automobiles sub-total 1,716,131 1,757,693 1,506,431 1,178,109 1,420,355 1,281,563 1,335,096
Honda Group  Honda 1,076,047 1,062,159 1,099,794 1,060,186 1,135,322 1,149,136 1,101,336
Acura 192,683 207,480 190,225 173,507 157,660 164,357 164,210
Honda Group sub-total 1,268,730 1,269,639 1,290,019 1,233,693 1,292,982 1,313,493 1,265,546
Toyota Group  Toyota 1,335,556 1,332,166 1,338,729 1,234,301 1,235,913 1,182,749 1,135,416
Lexus 0 4,088 43,588 41,086 39,550 45,259 42,655
Toyota Group sub-total 1,335,556 1,336,254 1,382,317 1,275,387 1,275,463 1,228,008 1,178,071
Renault-Nissan-Mitsubishi   Nissan 898,672 899,896 954,750 887,213 870,858 879,511 878,122
Infiniti 48,047 50,730 52,570 56,169 47,273 45,392 58,042
Mitsubishi 69,178 50,155 0 0 0 0 0
Renault-Nissan-Mitsubishi sub-total 1,015,897 1,000,781 1,007,320 943,382 918,131 924,903 936,164
Hyundai Group  Hyundai 507,145 496,725 485,323 448,518 409,480 417,208 427,559
Kia 259,487 252,280 262,695 262,122 255,468 271,111 245,877
Hyundai Group sub-total 766,632 749,005 748,018 710,640 664,948 688,319 673,436
Subaru Corporation Subaru 188,921 225,999 296,863 372,175 402,168 423,845 437,965
BMW Group BMW 350,754 400,904 411,171 377,209 364,262 391,626 385,981
Daimler Group Mercedes-Benz 244,601 322,743 362,341 331,214 327,204 330,577 333,361
Tesla Motors Tesla 34,708 49,408 83,921 103,895 151,210 187,194 232,189
Volkswagen Group Volkswagen 117,628 87,156 93,415 129,957 130,293 164,773 167,264
Geely Group Volvo 0 0 0 0 940 55,811 56,928
Other    Lucid 0 0 0 0 0 1,643 11,495
Workhorse 0 0 0 0 0 2,370 3,643
Karma 0 0 0 903 2,882 1,592 3,431
Rivian 0 0 0 0 0 37 2,514
Other sub-total 0 0 0 903 2,882 5,642 21,083

Source: LMC Automotive "Global Automotive Production Forecast (October 2017)"
(注) 1.データは、小型車(乗用車+車両総重量 6t以下の小型商用車)の数値。
2.本表の無断転載を禁じます。転載には LMC Automotive 社の許諾が必要になります。
モデル別やパワートレインタイプ別等のより詳細な予測データのご用命、お問い合わせはこちらのページへ

 

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