中国自動車メーカーの海外進出動向:BYD、吉利、長城、NIO、小鵬
BYDは販売網をグローバルに展開、長城は新たにブラジル参入、新興メーカーは欧州に注力
2023/03/31
- 要約
- BYD:海外事業を積極的に拡大し、販売網の構築を加速、生産拠点の建設に投資
- Geely:吉利ブランドが海外で72.4%増、Lynk & Coブランドは欧州でサブスクを開始
- 長城汽車:ブラジルでDaimlerの工場を買収、タイを中心に東南アジアへの進出を加速
- 蔚来汽車(NIO):欧州市場戦略を発表、充電インフラ構築に注力
- 小鵬汽車(Xpeng):欧州本部をオランダに設立、販売網を構築
要約
![]() |
中国自動車工業協会(CAAM)の発表によると、2022年の中国自動車メーカーの輸出台数は前年比54.4%増の311.1万台。うち乗用車の輸出は前年比56.7%増の252.9万台、商用車の輸出は前年比44.9%増の58.2万台となった。NEVの輸出は、前年比2.2倍の67.9万台。なお、乗用車輸出台数のトップは上汽集団で、2022年は前年比48.5%増の82.4万台、2位は奇瑞集団で前年比69.0%増の45.0万台、3位はTesla上海で前年比65.9%増の27.1万台。
中国政府の資料によると、2022年以降の中国の自動車輸出台数の平均価格は1.9万ドルに達し、うちEVのみでは平均価格は2.6万ドルである。仕向地はベルギー、英国、メキシコ向けなどをはじめとする欧米が主要市場となっている。中国自動車メーカーは輸出に代わり現地生産へ切り替えたり、従来のディーラーでの店頭販売から「サブスクリプション」方式を採用するなど様々な展開をしている。
BYDは2021年にノルウェー向けに「唐(Tang) EV」の輸出を開始し、欧州市場参入への足掛かりとした。すでにノルウェー、デンマーク、スウェーデン、オランダ、ベルギー、ドイツなどの国々に複数モデルを展開している。東南アジアでは、タイで完成車工場及びバッテリー工場を建設し、EVモデルを生産。また、同工場で生産したモデルを周辺の東南アジア地域に展開する予定である。加えて日本、インド、マレーシアなどにおける販売網の構築を加速させている。
吉利汽車集団は2021年6月に発表した「智能吉利2025」戦略のもとでグローバル化を推進するとしている。2025年に海外販売60万台を目指す。東欧、中東、東南アジア、アフリカ、南米など「一帯一路」沿いの国に重点を置き、600店超の海外販売網を構築し、欧州、アジア太平洋地域のNEV市場に参入する。
長城汽車は近年海外展開を拡大しており、積極的に生産拠点を建設している。すでにロシアのトゥーラ工場の他に2020年にはGMのタイ・ラヨーン工場を買収。同工場は長城汽車のEV生産と輸出の中核拠点という位置づけである。現在タイ、ラオス、ブルネイ、マレーシアなどの地域に事業を展開しており、今後はベトナム、フィリピン、シンガポールなど東南アジア諸国での事業を拡大する予定。米州では、2022年1月にDaimlerのブラジル工場を買収し、ブラジル市場戦略を発表した。今後はブラジル工場を通じて南米全体へと市場拡大を図る計画である。
本レポートでは大手民営自動車メーカーであるBYD、吉利汽車、長城汽車及び新興EVメーカーの蔚来汽車(NIO)、小鵬汽車(Xpeng)の最近のグローバル市場における動向をまとめた。
関連レポート:
タイ国際モーターエキスポ 2022 (1):今こそ未来に触れる時(2022年12月)
吉利汽車(Geely) (下):電気自動車ブランドを新設、商用車事業を強化(2022年10月)
中国新興EVメーカー(1):生産拡大とカーボンニュートラルを推進(2022年6月)
BYD:2021年の乗用車販売は75%増の73万台、自主開発のNEV技術を確立し量産へ(2022年3月)
長城汽車: グローバル化ハイテクモビリティ企業を目指し、2025年までに年販400万台(2021年11月)
中国自動車メーカーの海外進出:上海汽車、長城汽車(2021年6月)
無料会員登録により、期間限定で続きをお読みいただけます。