【ものづくり】第7回高機能プラスチック展2018:自動車部品の最新材料

生分解ポリマー、樹脂ウインドコート、自己修復樹脂、ピアノブラック加工、CFRP高速成形、液晶統合インパネなど

2018/12/14

要約

  高機能素材WEEK2018(会期:2018年12月5日(水)~12月7日(金)、会場:幕張メッセ)は、リード エグジビション ジャパン株式会社の主催。金属、セラミックス、接合、液晶、レーザー、プラスチック、フィルム、塗料、8つの素材の展示会が同時開催され940社が出展した。セミナーも多く開催され、エンジニアが多く来場する展示会として、盛大に開催された。

  本稿では、そのうち170社が出展した「第7回高機能プラスチック展」を中心に自動車産業で有効な最新レベルの技術を取材した。

  同時に開催された展示会は第5回高機能金属展、第3回高機能セラミックス展、第2回接着・接合EXPO、第28回ファインテックジャパン、第18回光・レーザー技術展、第9回高機能フィルム展、第1回コーティングジャパン(高機能 塗料展)。

第7回高機能プラスチック展登録所 第7回高機能プラスチック展会場風景
第7回高機能プラスチック展
登録所
第7回高機能プラスチック展
会場風景

 

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高機能樹脂:生分解ポリマー、樹脂ウィンドコート、自己修復樹脂

  自動車産業の課題である「環境対応」や「お客様満足度の向上」「軽量化」で使用できる高機能樹脂を取材した。

 

(出展会社概要)

会社名 展示品 特徴
日本曹達㈱
(東京都千代田区)
開発中:ナイロン4・生分解性ポリマー 次世代樹脂
モメンティブ・パーフォーマンス・
マテリアルズ・ジャパン合同会社
(旧GE東芝シリコ-ン㈱)
(本社:東京都港区、
  工場:群馬県太田市)
量産:PC樹脂リアウィンド
自動車用耐候性ハードコート
SilFORT AS4700
耐擦傷性
長期紫外線防御性
量産:PC樹脂エンブレム
ヘッドランプ用ハードコート
SilFORT UVHC3000
UV硬化型
長期紫外線防御性
耐擦傷性
亜細亜工業㈱
(本社工場:東京都荒川区、
工場研究所:埼玉県久喜市)
自己修復性樹脂
「傷がついてもそのうち消える機能」
耐擦傷性

 

ナイロン4・生分解性ポリマー(日本曹達)

  ナイロンの優れた機械特性、熱特性をそのままに、高い生分解性をもつポリマー。植物繊維強化プラスチックなどの商品でなく、バイオマス原料から合成し、活性汚泥や海水で水や二酸化炭素に戻る次世代プラスチック。成形に苦労しているため、まだ形になっていないが時代を変える技術革新商品。

開発中: ナイロン4・生分解性ポリマー 展示パネル:生分解性ポリマー「ナイロン4」
ナイロン4・生分解性ポリマー

展示パネル:ナイロン4の特徴
展示パネル

 

自動車用耐候性ハードコートSilFORT(モメンティブ)

  モメンティブ社では自動車用対候性ハードコートの開発は30年以上継続している。ヘッドランプの他、軽量化の進展で一部ではサイドウィンドの樹脂化が進んでいる。

 SilFORTシリーズでは、ヘッドランプ用とリアウィンド用の2種類をラインアップしている。いずれもポリカーボネート樹脂PCを相手材に開発されている。ポリカーボネート樹脂PCの弱点は傷がつきやすいことと、紫外線に弱いこと。PC材料自体の改善が進んでいないため、市中ではひび割れや黄化したヘッドランプの車も多い。そのため、ハードコートなどでの紫外線対策が必要になっている。

量産: PC樹脂リアウィンド・ハードコート 量産:PC樹脂エンブレム・ハードコート
PC樹脂リアウィンドウ・ハードコート PC樹脂エンブレム・ハードコート
ハードコート: SilFORT AS4700
相手材質:ポリカーボネートPC
ハードコート: SilFORT UVHC3000
相手材質:ポリカーボネートPC
実績例:GMモデル向け 実績例:Smart、Daimler、ホンダモデル向け
実績例 実績例
Corvette Targaのルーフ
2007 Cadillac Escaladeのピラー
1998~ Smart Fortwo、Smart Roadsterのサイドウィンドウ
2000 Mercedes-Benz C-class Coupeのリアスポイラー
2004 Smart Forfourのパノラマルーフ
2006 ホンダ シビックのリアスポイラー

 

自己修復性樹脂(亜細亜工業)

  自己修復性樹脂は「傷がついてもそのうち消える機能」。ハードコートは被膜を硬くすることで傷をつきにくくするが、衝撃に対して脆く、一度生じた傷は元に戻ることはなく割れやすい。一方、自己修復性樹脂は「傷がついても消えれば良い」という考え方で設計されたゴム弾性を備えた硬化被膜。熱硬化とUV硬化の2種類があり、通常の自己修復性樹脂のほか、耐スチールウール性を向上させた耐擦傷性タイプ、滑性を向上させた高滑性タイプとそれぞれ特性が異なる3タイプで、計6種類をラインアップしている。

量産:自己修復性樹脂 展示パネル:自己修復性樹脂
自己修復性樹脂
左:自己修復性樹脂なし
中:自己修復性樹脂
右:耐擦傷自己修復性樹脂
自己修復性樹脂
展示パネル:耐擦傷性自己修復性樹脂
展示パネル:高滑性自己修復性樹脂
熱硬化とUV硬化の2種類
 UV硬化型ウレタンアクレート樹脂
 熱硬化型アクリルウレタン樹脂


低コスト加飾内装パーツ・原着樹脂成形:ピアノブラック加工、木目加工

(出展会社概要)

会社名 展示品 特徴
旭電器工業㈱
(三重県津市)
量産:自動車内装樹脂部品
 ピアノブラック高光沢、木目調
ウェルドレス
コーティングレス
フィルムレス

 

原着ピアノブラック光沢成形
原着ピアノブラック光沢成形:フィルム不要、低コスト
展示パネル:「スッピンでべっぴん」原着成形加工の加飾技術

内装樹脂パーツ(旭電器工業)

  「スッピンでべっぴん」のキャッチフレーズのとおり、コーティング加工やフィルム加工などを追加せずに射出成形のみでピアノブラックや木目模様などの加飾光沢成形を実現したコスト競争力のある製品。高光沢加工は金型の微細加工技術と磨き技術を組み合わせて、芸術品のような出来栄えを実現している。

 

量産:自動車内装樹脂パーツ 原着模様調(木目加工)
自動車内装樹脂パーツ 原着模様調
原着ピアノブラック光沢成形品 二層成形で模様を作成、再現性もある


CFRP高速成形:熱硬化3分硬化剤、熱硬化CFRP5分成形、熱可塑CFRTP高周波3分成形

  自動車の軽量化に関わる炭素繊維強化樹脂CFRPの展示も多くあり取材した。生産性改良で登場した熱可塑性CFRTPも短炭素繊維と射出成形の組み合わせでは適用範囲に限界がきている。最近は従来の工法に戻り長繊維の織布との組み合わせに移行してきている。熱間強度の高い熱硬化性CFRPの成形時間も、昔は加熱炉を使用するオートクレープ工法で3時間かかっていたが、熱プレス工法の開発と硬化剤の改良で5分以下まで短縮されてきており、熱可塑性CFRTPとの生産性の差もなくなってきている。熱硬化性樹脂への回帰の可能性もでてきた。

 

(出展会社概要)

会社名 展示品 特徴
三菱ガス化学㈱
(東京都千代田区)
量産:熱硬化CFRP用3分硬化剤 熱プレス法
HP-RTM法を想定
3分成形
サカイ産業㈱
(静岡県島田市)
試作:熱硬化CFRPホイール
        炭素繊維織布内製~一貫生産
熱プレス法
5分成形
浅井産業㈱
(東京都港区)
㈱キャップ
(静岡県森町)
試作:熱可塑CFRTPクロスメンバー
<低コスト化手法>
材料費:高価含浸プリプレグ不使用
        熱可塑性樹脂フィルムを使用
ハイサイクル:高周波加熱(TAM法)
高周波熱プレス法
3分成形

プリプレグ:樹脂含浸された半硬化の連続繊維
炭素繊維織布:炭素繊維の織物
HP-RTM (High Pressure Resin Transfer Molding):熱硬化CFRP用工法。コスト面での弱点の成形時間を短縮する熱プレス法。RTM法は20分、HP-RTM法は5分を切るようになってきた。
TAM法:熱可塑CFRP用工法。金型を高周波加熱し短時間で金型温度を上下する。金型を樹脂の融点よりも高い温度にすることが特徴。高価なプリプレグが不要になる。

 

繊維強化プラスチックFRPの分類

  熱硬化性樹脂は、主剤と硬化剤の混合や加熱などによる化学反応によって硬化する。CFRP成形では、強度や寸法精度等は熱硬化性樹脂が勝り、生産性やリサイクル性は熱可塑性樹脂が優れている。

強化繊維 使用樹脂 繊維長 代表的加工法 強度 生産性
FRP CFRP
炭素繊維強化
熱硬化CFRP 織布 オートクレープ ×3時間
熱プレス 〇5分
短繊維 射出成形(熱硬化ノズル)
熱可塑CFRP=CFRTP 織布 熱プレス 〇3分
長繊維 プレス LFT-D工法 ◎1分
短繊維 射出成形 × ◎30秒
GFRPガラス繊維強化

注:CFRP (Carbon Fiber Reinforced Plastics 炭素繊維強化樹脂):ゴルフクラブのシャフトが代表例。炭素繊維を重ねて樹脂で固めた複合材料。軽量で鉄並みの強度がある。加熱すると硬化する熱硬化性樹脂と加熱すると溶ける熱可塑性樹脂がある。
CFRTP (Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastics 炭素繊維強化熱可塑性樹脂):加熱すると溶ける熱可塑性樹脂を使用する場合の略称。

 

試作:ステアリング
ステアリング
材質:熱硬化性CFRTP
工法:ハイサイクル熱プレス(HP-RTM法) 成形時間3分
展示パネル:ハイサイクル成形、CFRP用エポキシ硬化剤

ハイサイクル成形・熱硬化性CFRP用エポキシ硬化剤(三菱ガス化学)

  展示品は熱プレスを使用した熱硬化性CFRP用のハイサイクルHP-RTM法などを前提にした、速硬化性でかつ低粘度のエポキシ樹脂硬化剤。湯流れ性と硬化スピードのバランスをとるのが難しかったという。炭素繊維への含浸性に優れ、ハイサイクルRTM法では従来5分だったが本剤を使用することで3分を目指すことができる。

 

熱硬化性CFRPカーボンホイール(サカイ産業)

  サカイ産業は大正7年創業、100年企業の織物メーカー。"織る"、"編む"、"撚る"といった基礎技術を備え、工業用繊維における特殊な高機能繊維を得意としている。繊維強化プラスチックFRPビジネスでは、基材となる織物の開発から行い、あらゆる成形法に対応できる設備を有し、一貫生産を行っている。

  展示品は炭素繊維織布を使用した熱硬化性CFRP。自動車用ホイールとプレス成形サンプル。プレス成形サンプルは、織布の基礎技術もあり、深絞りや、アンダーカット形状にも対応できている。成形時間は従来20分かかっていたが、5分と速い。樹脂を繊維の補強材に含浸させシート状にし、オス・メス一対の高精度気密型金属型を用いて高温高圧で硬化させている。

 

試作:自動車ホイール 試作:プレスサンプル
自動車ホイール プレスサンプル
材質:熱硬化性CFRP
工法:TAM高周波熱プレス
左:深絞り、右:アンダーカット形状
材質:熱硬化性CFRP
工法:TAM高周波熱プレス

 

熱可塑性CFRTP クロスメンバー・高周波TAM成形法(浅井産業/キャップ)

  キャップ(浅井産業が販売商社)の工法は、炭素繊維織布と熱可塑性フィルムの積層ホットスタンプ成形。急速加熱と急速冷却が可能な金型で熱プレスを行い、最短3分で成形が完了する。金型は高周波電流を用いた直接通電加熱方式(特許第5107417)。これをTAM(Thermo Assisted Molding)成形法と呼んでいる。金型を樹脂の融点よりも高い温度にすることが特徴。高価な含浸プリプレグを使用せず、安価な熱可塑性フィルムと炭素繊維織布を使用するため、素材コストが半減できる。

試作:自動車用クロスメンバー 試作:カバー
自動車クロスメンバー カバー
材質:熱可塑性CFRTP
工法:熱プレス(樹脂フィルム+TAM法)
 特徴1:熱可塑性樹脂フィルムを使用した積層式
 特徴2:TAM(Thermo Assisted Molding) 成形法により、金型に直接高周波電流を通電し加熱
展示パネル:熱可塑性樹脂と炭素繊維織布のホットスタンピング成形
材質:熱可塑性CFRTP
工法:熱プレス(樹脂フィルム+TAM法)

展示パネル:成形時の温度調整方法


液晶関連技術

  コネクテッドカー時代に向けた統合インパネソリューションを提案。駐車しているときなどは、メーター画面もエンターテインメント画面などに全面切り替えられるのがメリット。

 

(出展会社概要)

会社名 展示品 特徴
シャープ㈱
(大阪府堺市)
統合インストルメントパネル
(安全、エンターテインメント、各種機能)
液晶:額縁レスFFD
四角くない
液晶高精密ワイド大画面表示

FFD(Free Form Display、フリーフォームディスプレイ)四角くない液晶

 

試作:車載統合インパネ
自動車 統合インパネ
展示パネル:車載統合インパネ

高精密ワイド大画面・車載統合インパネ(シャープ)

  車載用の液晶ディスプレイはカーナビゲーション用として普及してきたが、近年はナビゲーション用にはとどまらず、統合化されたインパネ表示まですべてを液晶ディスプレイで表示するという検討が進んでいる。

 シャープのFFD液晶は、従来液晶には欠かせなかった額縁がなく、メーターに合わせて丸くカットしたり、自由に曲面加工したりできるため、デザインの自由度が大幅に向上する。

 


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キーワード
ものづくり、高機能素材、複合材、プラスチック、樹脂、CFRP、CFRTP、成形、加飾、熱硬化性、熱可塑性

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