ホンダ フィットハイブリッド 分解調査 (2)

エンジンとモーター内蔵7速デュアルクラッチトランスミッション

2013/12/18

要 約


2013年10月にシェフラージャパンが開催した
「新技術発表会」で展示された7速DCTのカットモデル。

*写真はクリックすると拡大されます。

 公益財団法人埼玉県産業振興公社 次世代自動車支援センター埼玉の主催で、ホンダ フィットハイブリッドの車両分解見学会が2013年11月に行われ、電池関連部品と電動サーボブレーキシステムについては下記レポートにて報告した。


前回のレポート:ホンダ フィットハイブリッドの分解調査 (1) (2013年12月掲載)


 本レポートは「ホンダ フィットハイブリッドの分解調査(2)」としてエンジンとモーター、7速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)で構成されるドライブユニットの機能に重点を置いて紹介する。

関連レポート ホンダ アコードHV分解 (上) (2014年2月掲載)
ホンダ アコードHV分解 (中) (2014年2月掲載)
:ホンダ アコードHV分解 (下) (2014年2月掲載)
トヨタ アクア 分解調査 (1) (2012年11月掲載)
トヨタ アクア 分解調査 (2) (2012年11月掲載)
日産リーフ 分解調査 その1(2012年2月掲載)
日産リーフ 分解調査 その2(2012年9月掲載)
日産リーフ 分解調査 その3(2012年11月掲載)



作業前のエンジンルーム

 

作業前のエンジンルーム 作業前のエンジンルーム
エンジンルームを上から見た写真。赤矢印は古河電池製の補機バッテリー。白矢印はContinental製のトランスミッションECUとケーヒン製のエンジンマネージメントシステム(EMS)。 エンジンルームを下から見た写真。中央銀色部分の左側がエンジン、右側がモーター内蔵DCTにあたる。中央左側にある青い部品はオイルフィルター。

 

 



ドライブユニットの取り外し

 

ドライブユニット
ドライブユニット ドライブユニット
取り出されたドライブユニット。左の写真が車両前方左側、右の写真が車両前方右側から見た写真。
左写真のドライブユニット右端にある黒く丸い部分がROKI製のサイドカバーで、中にはモーター、7速DCTが搭載されている。
右写真の中央に見える複数の小さい突起がある銀色の部品はアイシン精機製の電動ウォーターポンプ。その下にある高圧ケーブルが繋がっている部品はサンデン製のHVAC用電動コンプレッサー。電動ウォーターポンプの右横にある円柱形の部品(矢印)はミツバ製のスターターモーター。上部にある黒い部分が日信工業製のインテークマニホールド。
ドライブユニット ドライブユニット
取り出されたドライブユニットを車室側から見た写真。矢印が指す銀色のカバーの内側には触媒一体型のクールドEGR (排出ガス再循環)システムがある。 ドライブユニットを取り外した後のエンジンルームを下から見た写真。中央にある遮熱板にはエキゾーストパイプが収納されていた。その右側に見えるオレンジ色のケーブルはIPUとモーターを繋ぐ高圧ケーブル。右上に見える銀色の部品(矢印)は電動サーボブレーキシステムのタンデムモーターシリンダー。

 

エンジン
エンジン エンジン
モーター内蔵7速DCTが取り外されたエンジンを車両左側から見た写真。
写真の中央下にあるホイールはLuk(Schaeffler傘下)製のフライホイール(クラッチダンパー)。直径はおおよそ280mm。フライホイールの中にはエンジンの振動を抑制するためのダンパーが組み込まれている。フライホイールの横にある丸い穴(矢印)にはスターターモーターがあり、エンジンで発進する際はフライホイール外側のリングギヤを回転させることでエンジンを始動させる。
車両右側からエンジンを見た写真。カムシャフトを動かすチェーン式タイミングベルト(カムチェーン)が見える。先代フィットのエンジン「LDA」はSOHC (Single OverHead Camshaft)であったが、新型の「LEB」はDOHC (Double OverHead Camshaft)を採用。上の歯車と下の歯車の間にある黒い部位はカムチェーンテンショナー。

 

エンジン上部
エンジン上部 エンジン上部
シリンダーヘッドカバーが取り外されたエンジン上部の内部。白矢印の方向が車両前方。左写真の右側にある黒い部位(赤矢印)の中にフュエルインジェクターがある。
フィットHVは、吸気バルブの閉じるタイミングを遅らせることで圧縮比より膨張比を大きくするアトキンソンサイクルエンジン「LEB」を搭載している。同エンジンは吸気カムシャフトにVTEC (可変バルブタイミング・リフト機構)と電動VTC (連続可変バルブタイミング・コントロール機構)を採用し、燃費および馬力の向上を図っている。
VTECは広開角カムと狭開角カムという2種類のバルブの開きを作ることで、燃費および出力を向上させる。また、狭開角カムには1バルブ休止機構を採用し、エンジンの始動性を向上させている。吸気側のカムスプロケット(青矢印)を電動化した電動VTCはVTECと協調して、アトキンソンサイクルの効果を高めたり、運転状況に応じたバルブタイミングを最適に制御している。

 

VTEC油圧制御バルブ スターターモーター
VTEC油圧制御バルブ スターターモーター
ケーヒン製のVTEC油圧を制御するバルブの裏側。エンジンの吸気カムシャフトの外側にある。「ドライブユニット」の右上写真を参照。 ミツバ製のスターターモーター。サイズはおよそ横 200 X 縦 130 X 高さ 85 mm。HVは通常EV発進し、その駆動力でエンジンを始動できるが、EV発進できない場合に備えてスターターを装備している。

 

シリンダーヘッドカバー 電動コンプレッサー
シリンダーヘッドカバー 電動コンプレッサー
MAHLE製のシリンダーヘッドカバー。その上にある4つ並んでいる部品は日立オートモティブシステムズ製のイグニッションコイル。 新型より搭載を開始した電動コンプレッサーの内部。

 

パワートレインECU
パワートレインECU パワートレインECU
補機バッテリーの横に搭載されているエンジンマネージメントシステム(赤矢印)とトランスミッションECU(白矢印)。重量は1.65kg。 左写真にあるケーヒン製のエンジンマネージメントシステム(EMS)。サイズはおおよそ横 160 X 縦 120 X 奥行き 35 mm。
パワートレインECU パワートレインECU
左上写真にあるContinental製のトランスミッションECUで、左の写真が表側、右の写真が裏側。Luk(Schaeffler傘下)とホンダが共同開発したトランスミッション制御システムのソフトウエアが実装されている。サイズはおおよそ横 140 X 縦 170 X 奥行き 45 mm。

 

 



モーター内蔵7速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)

 

構成図 モーター発進の動力図
構成図 モーター発進の動力図

 

エンジン発進の動力図 エンジン2速駆動+モーター3速アシストの動力図
エンジン発進の動力図 エンジン2速駆動+モーター3速アシストの動力図

ホンダ広報資料よりマークラインズ作成

 

モーター内蔵7速DCT
モーター内蔵7速DCT モーター内蔵7速DCT
左の写真がモーター側、右の写真がエンジン側から見たモーター内蔵7速DCT。樹脂製のサイドカバー(左写真の黒い部位)は、留め具にアルミボルトを採用することで軽量化を図っている。その横にある穴(赤矢印)には電動ギアアクチュエーターが挿入されていた。
右写真の白矢印が指している部分の内部にファイナルドライブギヤ(兼ディファレンシャル機構)があり、中央の黒い部分(青矢印)が駆動シャフトと繋がり、前輪を駆動する。

 

デュアルクラッチ 電動ギアアクチュエーター
デュアルクラッチ 電動ギアアクチュエーター
取り外されたLuk(Schaeffler傘下)製のデュアルクラッチ。重量は15kg。直径は160mm、高さは130mm。写真のデュアルクラッチ上面はトランスミッション側。トランスミッション側にセカンダリー(偶数段)シャフト、エンジン側にメイン(奇数段)シャフトに繋がるクラッチがある。
モーターはメイン(奇数段)シャフトに繋がっており、EV走行の時はエンジンとの接続を切断する。
取り外されたLuk(Schaeffler傘下)製の電動ギアアクチュエーター。
搭載箇所は上記にある「モーター内蔵7速DCT」を参照。

 

モーター
モーター モーター
左の写真はサイドカバーを取り外した後のモーター。右の写真はサイドカバー内の銀色のカバーを外した後のモーター。モーターの中心部には角度センサー(モーターレゾルバ)が内蔵されている。
モーターの冷却はトランスミッションオイルを活用した油冷式で、巻線に同オイルを吹き付けることで冷却している。油冷化によりモーターの出力拡大とコンパクト化を実現している。

 

ステーター
ステーター ステーター
左の写真は取り外されたステーター。右の写真は平角巻線部分の拡大写真。ステーターのサイズは直径が270mm、高さが95mm、幅が60mm。巻線部分の長さは18mm。巻線の幅は2mm。ステーターの取り外し作業はマイナスドライバーを使用し、4人がかりでようやく取り外すことができた。

 

ローター/プラネタリギヤ
ローター/プラネタリギヤ ローター/プラネタリギヤ
取り外されたローター。左の写真はプラネタリギヤの横に、右の写真は水色のシートの上にある。重量は約4kg。直径はおよそ200mm。取り外した直後のローターを鉄製のテーブルに置いた際、片手では持ち上げることが出来ない程の磁力があった。
ローターの中心にはプラネタリギヤ(赤矢印)とメイン(奇数段)シャフトのサンギヤ(青矢印)がある。プラネタリギヤはDCTの1速として機能している。直径は110mm、高さは60mm。

 

7速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)
7速DCT 7速DCT
7速DCT 7速DCT
2つに分割された7速DCT。左上下の写真がモーター側、右上下の写真がエンジンおよびデュアルクラッチ側。
右写真の白矢印はディファレンシャル機構付きファイナルドライブギヤ、赤矢印はセカンダリー(偶数段)シャフト、青矢印はメイン(奇数段)シャフト、紫色の矢印はカウンターシャフト、緑色の矢印はリバースシャフトを指している。
セカンダリーシャフトの下にある銀色の部品(灰色の矢印)はパーキングブレーキポール。ファイナルドライブギヤの軸先には車速センサーがある。
シャフトをメイン(奇数段)とセカンダリー(偶数段)に分け、さらに1速をプラネタリギヤとすることで、トランスミッションのコンパクト化を実現し、フィットHVへの搭載を可能にした。

 

電動油圧クラッチアクチェーター
電動油圧クラッチアクチェーター 電動油圧クラッチアクチェーター
Delphi Automotive製の電動油圧クラッチアクチュエーター。内部にあるモーターでクラッチを制御している。右の写真は、シェフラージャパンが2013年10月に開催した「新技術発表会」で展示されていた7速DCTのカットモデルで、白いサークルが電動油圧クラッチアクチュエーター、赤いサークルが電動ギアアクチュエーターにあたる。
電動油圧クラッチアクチュエーターには、Luk(Schaeffler傘下)とホンダが共同開発したクラッチ制御システムのソフトウエアが実装されている。

 

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>