メキシコ:中国製車が輸入の3割、販売の2割に
「ニアショアリング」が投資拡大を促すが、地政学的な影響懸念も
2024/06/14
- 要約
- ニアショアリングを背景に投資が拡大、米中対立による不確実性が高まる
- 2023年の生産・輸出状況:北米、国内の経済好調を背景に14%増、2年連続の伸長
- 2023年の販売・輸入実績:販売は24%増、中国からの輸入車が市場の2割に
- 中国メーカー:輸入、現地生産とも急増、メキシコ販売は対前年2.8倍に
- Tesla:メキシコ工場建設に向けたメキシコ関連当局の許可を取得、稼働開始遅れの懸念も
- Renault日産グループ:米国での販売増に支えられ、生産が58%増加、国内販売も好調
- GM:EVの生産を開始、国内販売は中国からの輸入車が65%に急増
- VW:生産台数は3年連続の増加、EV生産の準備を進める
- Stellantis:北米初の量産EVとなる大型バンをメキシコで生産開始
- Ford:大幅増産を継続、EV「マスタング・マッハE(Mustang Mach-E)」も伸長
- 現代・起亜:新型コンパクトセダンの生産開始、EV生産を検討
- トヨタ:新型「タコマ(Tacoma)」の生産開始、販売ではHV比率拡大を図る
- マツダ:米国での「CX-30」販売好調が生産増に貢献
- ホンダ:北米初のEVモデルの生産をGM工場で開始、国内販売は縮小が続く
- GlobalData生産予測:メキシコのライトビークル生産は2027年にかけて微増、380万台水準にとどまる見通し
要約
![]() |
安徽江淮汽車(JAC)がメキシコで生産するSUV、Seiシリーズ(出所:JAC) |
メキシコでの自動車生産・販売は、最大顧客である米国市場の需要拡大とそれを受けたメキシコ経済の活況により拡大を続けている。さらに、昨今のグローバルな地政学的リスクやサプライチェーン制約の懸念を背景とする「ニアショアリング(より消費地に近い所で生産を行う)」の動きによって米国に隣接するメキシコの生産拠点としての優位性が高まり、自動車関連の投資計画が立て続けに発表されている。
メキシコでの生産車は約9割が北米を中心とする輸出向けで、一方で国内販売は中国や南米、インドなどからの小型車の輸入により需要に対応する構造がより明確になっている。2023年の輸入車の台数は90.4万台で総販売台数の66.4%を占める。このうち中国からの輸入は前年比53.2%増の26.6万台で、輸入車全体に占めるシェアは凡そ3割(29.4%)となっている。
2023年のメキシコ国内の自動車販売台数は前年比24.4%増の136.1万台。上海汽車、奇瑞汽車、安徽江淮汽車(JAC)など、中国ブランド車の販売台数は前年比61.5%増の13.5万台で、市場シェアは約1割(9.9%)となっている。さらに、GM、Fordなどのメーカーが中国で製造する輸入車を加えると、中国ブランド車・中国製車のメキシコ市場でのシェアは凡そ2割(19.5%)に達する。
2023年は、グローバルな拡大を目指す中国自動車産業のメキシコでの存在感が一層顕著になっており、米国OEMによる中国子会社からの輸入販売や中国ブランド車の輸入が増加しているのに加え、多くの中国メーカーがメキシコへの生産投資に意欲を示す。
一方で、大統領選を控えた米国が中国メーカーの北米進出やサプライチェーンでの台頭に懸念を示し、米中対立の動向が大きな不安定要素となるなど、メキシコの自動車産業を取り巻く環境の変化は激しい。
本レポートでは、前回レポート(2023年4月掲載)のアップデート版として、メキシコの自動車産業、市場の最近の状況を俯瞰すると共に、主要OEMを中心に業界各社の動向と発表された計画を整理し、報告する。
関連レポート:
中国部品メーカーのメキシコ事業動向(2024年5月)
Ford:2030年までに全車種にHVを導入、一部のEV投入計画を延期(2024年5月)
Stellantis(1):2030年までにBEV75車種を投入、欧州のBEV販売比率を100%へ(2024年1月)
GM(1):2025年に北米で年間100万台のEV生産を目指す(2023年9月)
Tesla:生産増強を進め、グローバルな量販メーカーへの飛躍を目指す(2023年6月)
米国インフレ抑制法:EV/PHEV/FCEV購入支援策(2023年6月)
中国自動車メーカーの海外進出動向:上汽、奇瑞、東風、長安(2023年6月)
中国自動車メーカーの海外進出動向:BYD、吉利、長城、NIO、小鵬(2023年3月)
メキシコ:「ニアショアリング」とEVシフトにより各社が投資計画を発表(2023年4月)
無料会員登録により、期間限定で続きをお読みいただけます。