Ford:2030年までに全車種にHVを導入、一部のEV投入計画を延期

CATLとSK Onとの電池合弁工場建設の規模を縮小、4社とリチウム供給契約締結

2024/05/29

要約

 Fordは従来、2023年までに電気自動車(EV)を年間60万台、2026年までに年間200万台生産することを目標に掲げていた。しかし、2023年第2四半期決算報告後、EV販売が予想を下回り、内燃エンジン車やハイブリッド車(HV)の需要は予想よりも長く、強いものになる可能性があるとして、電動化戦略を調整すると表明した。2023年までに年間60万台のEVを生産するという目標は、2024年に後ろ倒しで達成する計画を立て、EVの生産能力200万台達成時期については柔軟に考えている。

 2024年4月4日、Fordは米国とカナダにおける新たなEVとHVの投入計画を発表した。同計画によると、2030年までに内燃エンジン車で展開する全車種でHVを導入する。EVについては、新型3列シートEVや新型電動ピックアップトラックなど、一部のEVの発売を1~2年延期する。新型小型・低価格EVの開発は継続する。

 今後の新型EVモデル投入計画では、2024年にコンパクトMPV/バンのEVバージョンE-Tourneo/E-Transit Courier、BセグメントクロスオーバーSUV PumaのEVバージョン Puma Gen-E、VWのMEBプラットフォームを採用した第1号モデルの新型ミッドサイズクロスオーバー電気SUV Explorer EVを発売する。2025年には、VWのMEBプラットフォームを使用する第2号モデルとして、新型スポーツ電気クロスオーバーを投入する計画。

 FordはSK OnやCATLなど大手電池メーカーと提携し、EV用バッテリー工場を建設しているが、EV普及ぺースの鈍化に伴い、規模の縮小や建設延期を検討している。また、FordはEV用バッテリーの材料の確保にも取り組んでいる。SK Onと共同で正極材工場を建設するほか、リチウムについては4社と供給契約を結んでいる。

 商用車事業部門Ford Proは、フルサイズピックアップトラック F-Series Super Dutyやフルサイズバン Transitの需要増により、2023年のEBITが前年より40億ドル多い72.2億ドルとなり、好調が続いている。ルーマニアとトルコの工場ではバン/MPVのEVバージョンの生産を控え、生産能力を増強している。

2024年型F-150 Lightning(フルサイズ電気ピックアップトラック)(写真:Ford) E-Transit Custom(中型電気バン)(写真:Ford)
2024年型F-150 Lightning(フルサイズ電気ピックアップトラック)(写真:Ford) E-Transit Custom(中型電気バン)(写真:Ford)

 

関連レポート:
WCX 2024(2)持続可能性の向上と自動車業界の展望(2024年5月)
米国の電動モビリティ(2024年1月)
米国市場:BEV販売比率7.5%、カリフォルニア州は20%超(2023年11月)
IAA Mobility 2023:欧州メーカーのEV(2)(2023年10月)
米国インフレ抑制法:EV/PHEV/FCEV購入支援策(2023年6月)
Ford(下):米国では2023年にピックアップRangerとF-Series Super Dutyを投入(2023年5月)
Ford(上):事業戦略「Ford+」の目標達成に向け電動化戦略を加速(2023年4月)

フォード F-150 Lightning 分解調査レポート:
ADAS(2023年5月)
ボディ、フレーム、サスペンション、ブレーキ(2023年3月)
電動パワートレイン(2023年2月)

 

このレポートは有料会員限定です。 残り 7 章
無料会員登録により、期間限定で続きをお読みいただけます。