Tesla:生産増強を進め、グローバルな量販メーカーへの飛躍を目指す

2022年の生産は47%増の137万台、拡販と利益率のバランスに苦慮

2023/06/09

要約

Cybertruck
2023年内の発売を目指し、走行テストを行うサイバートラック(Cybertruck)(出典:Tesla)

 Teslaは2023年3月に世界で5番目となる生産工場(Gigafactory)をメキシコに建設することを発表した。グローバルな生産規模は一貫して拡大を続け、2022年には生産実績は対前年47%増の137万台となり、急成長するEV市場のなかでトップメーカーの地位を堅持している。

 同社はメキシコ工場を皮切りにコストを半減する新たな生産方式を導入するとしており、ピックアップトラック、追加量販モデルなど商品ラインアップの拡大、新興市場への参入の準備を進め、実行に移している。併せて、需要動向に合わせた価格調整を立て続けに実施し、これまで控えていた広告宣伝の開始を示唆するなど、積極的な拡販への意欲を示し、顧客や市場を絞ったプレミアム・ブランドから、グローバルな量販メーカーへ飛躍する方針を明確にしている。

 また、車載バッテリーを成長の鍵と位置付け、高効率の4680型を自社開発し量産移行を進めると共に、米国内の生産増強投資、大手OEMでは初となるリチウム精製施設の建設などサプライチェーンの拡充と安定確保を進める。充電器の生産強化と充電インフラの拡大にも取り組む。

 運転支援システムFSD(Full Self-Driving)搭載車から収集、蓄積した走行データはすでに1.5億マイルに達しており、AI学習を通してFSDの更なる性能向上につなげる。

 決算報告の実績は、2022年に売上高が815億ドル(前年比51%増)、営業利益が137億ドル(同109%増)と大幅に増加して共に過去最高を更新した。しかしながら、2023年第1四半期(1~3月)実績報告では、年初に実施した主力車種の大幅値下げが影響して利益が一転して減少し、営業マージンが前年同期から大幅に低下(19.2%⇒11.4%)する結果となった。

 Teslaが先達として圧倒的な優位性を持っていたEVが普及期に入り、市場環境の影響や大手OEMや新興メーカーからの脅威が強まる中で、その高い収益性を維持しながら野心的な拡販目標に向けて成長を続けられるのか、Teslaは大きな節目を迎えている。

 末尾にLMC AutomotiveによるTeslaの中長期販売予測を掲載する。

 

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