タイ:EVに政府補助金・税優遇措置、中国メーカーが安価なEV投入

半導体不足・ウクライナ戦争の長期化で2022年生産台数は175万台の見通し

2022/12/09

要約

Good Cat GT
長城汽車のプレミアムクーペEV「ORA Grand Cat(欧拉閃電猫)」
2022年12月のタイ国際モーターエキスポに出展

 タイ政府は2030年までに国内の自動車生産に占める電気自動車(EV)の割合を30%に引き上げ、ASEANのEV生産ハブとなることを目指している。2022年1-10月のタイにおけるEV販売台数は前年同期の1,721台から7,552台に増加。2022年には中国の長城汽車やBYDがEVの新型車を投入したほか、東風小康や哪吒汽車が33万~55万バーツと格安のEVを投入。Mercedes-Benz、BMW、Volvo Carは高級EVを投入し、トヨタもブランド初のEV専用車であるbZ4Xを発売した。

 タイ政府はEV普及のため、2022年9月からEV向け補助金プログラムを開始。対象となるEVには1台当たり7万~15万バーツの補助金が支給されている。また、物品税、道路税、輸入関税等のEV向け税優遇策も講じている。

 EV普及の鍵となるバッテリーの生産や充電設備の整備についても優遇措置を策定している。タイ投資委員会(BOI)はEV用バッテリーの材料の輸入関税低減や充電ステーションの法人税免除を実施。それを受けてバッテリー生産をめぐる動きが増え、SAIC Motor-CPは新たにEV用バッテリー工場を建設。タイ石炭大手のBanpu、バス運行会社のCherdchai、電池メーカーのDurapowerは共同で電気バス向けのバッテリー工場を建設する。

 EV用充電設備の整備については、タイのEnergy Absolute、タイ石油公社のPTTなど多様な事業者が充電ステーションや充電器の設置を行っている。

 2021年のタイの生産台数は前年比18.1%増の168.6万台、国内販売は前年比3.7%減の77.5万台、輸出は30.4%増の95.9万台。新型コロナウイルス感染抑制のためのロックダウンや世界的な半導体不足が影響したが、政府の消費振興策や12月に開催されたタイ国際モーターエキスポなどにより、2021年の販売はタイ工業連盟(FTI)の目標である75万台を上回った。2022年1-10月の生産は前年同期比12.4%増の153.5万台、国内販売は15.4%増の76.9万台、輸出は5.5%増の80.1万台。新型車の発売、感染症対策のためのロックダウンのさらなる緩和、海外観光客受け入れの再開、海外企業の投資拡大、政府の消費支援策などにより販売・生産ともに増加した。

 FTIは2022年8月に2022年通年の生産台数見通しを、年初に予測した180万台から175万台に下方修正した。このうち国内販売向けを80万台から85万台に上方修正、輸出向けを100万台から90万台に下方修正した。生産見通しを引き下げた要因としては、ウクライナ戦争の長期化、4-5月の上海ロックダウン、ミャンマーでの自動車輸入禁止政策、半導体不足等である。

 

関連レポート:
ASEAN自動車市場(2022年第3四半期)(2022年11月)
世界の二輪車生産と販売:中国、インド、ASEANの概況(2022年8月)
ASEAN:カーボンニュートラル達成に向けEVの普及・生産を促進(2022年7月)
トヨタのBEV戦略:2030年にBEV 350万台、うちレクサス100万台を計画(2022年5月)
バンコク国際モーターショー2022 (2):Keep Moving Forward Together(2022年4月)
バンコク国際モーターショー2022 (1):Keep Moving Forward Together(2022年4月)
BYD:2021年の乗用車販売は75%増の73万台、自主開発のNEV技術を確立し量産へ(2022年3月)
長城汽車: グローバル化ハイテクモビリティ企業を目指し、2025年までに年販400万台へ(2021年11月)
タイ:EV生産ハブへ加速化、バッテリー生産も拡大(2021年11月)

 

このレポートは有料会員限定です。 残り 8 章
無料会員登録により、期間限定で続きをお読みいただけます。