タイ:EV生産ハブへ加速化、バッテリー生産も拡大

電動車の市場投入が増加、コロナ感染の抑制と半導体不足の緩和で生産回復へ

2021/11/10

要約

Civic sedan
長城汽車のEV、ORA Good Cat(バンコク国際モーターショー2021に出展)
2021年10月末にタイで発売、先行販売開始から48時間以内に6,000台を受注

  タイ政府は2021年3月、タイをEV生産ハブとする目標の達成時期を5年早めて2035年とする新たな目標を発表。また、2030年までに国内の自動車生産に占めるEVの割合目標を従来の30%から50%に引き上げる。2025年までのEV(乗用車・ピックアップ、二輪車、バス・トラックを含む)の累計生産台数目標を105.1万台、2030年までに622.4万台、2035年までに1,841.3万台と設定した。

  政府は、EV普及の鍵となる充電設備やバッテリーの生産についても計画を策定している。2021年5月に開催された国家電気自動車政策委員会は、充電設備の設置目標やバッテリーの生産目標を設定した。バッテリーの生産能力拡大の動きでは、2021年にタイのEnergy Absoluteとタイ石油公社(PTT)傘下の電力大手Global Power Synergyがバッテリー工場を開設。米国のEVLOMOもタイにおけるバッテリー工場の建設計画を発表した。

  各自動車メーカーは次々に電動化モデルを投入しているが、商用車部門では新規参入企業も見られる。タイの改造車・部品メーカーのThai Rung Union Carは電動三輪タクシーの新型車を発売。Energy AbsoluteはEV組立工場を建設し、電気バスを生産している。

  2020年のタイの生産台数は前年比29.1%減の143万台、国内販売は前年比20.2%減の80.4万台、輸出は30.2%減の73.6万台。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年は生産・販売・輸出とも大幅に減少した。2021年1-9月の生産は前年同期比25.9%増の121万台、国内販売は0.8%減の61.7万台、輸出は29.9%増の67.7万台。国内販売は景気低迷、半導体をはじめとする部品納入遅れによる車両供給不足、7月中旬から8月にかけて再度ロックダウンが実施されたこと等から回復が遅れているが、アジア・オセアニア・欧州・北米への輸出は好調で生産台数を押し上げた。

  タイ工業連盟(FTI)は2021年7月に2021年通年の生産を155-160万台、販売を75万台、輸出を80-85万台と予測していたが、同年10月、新型コロナウイルス感染が抑制され、半導体供給不足が緩和しているため、生産が160万台を上回る可能性もあるとした。ただし、感染状況と半導体供給については予測できない動きが発生する可能性もあり、今後も状況を注視するとしている。


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