中国:新エネルギー車(NEV)クレジット改定

2021年1月から改定のCAFC/NEVクレジットが発表、2019年度のクレジットポイントはTeslaが上位に浮上

2020/09/08

要約

新エネルギー車販売台数

 2017年9月に公布された「乗用車企業平均燃費と新エネルギー車のクレジット同時管理方法」の修正意見募集稿が2019年7月に発表され、2020年6月に工業情報化部、財政部、商務部、税関総署、市場監督管理総局の5省庁より2021年1月から施行となる「乗用車企業平均燃費と新エネルギー車のクレジット同時管理方法」改定の決定が公布された。主な変更点は、新エネルギー車(以下、NEV)以外に低燃費乗用車への優遇措置やクレジットの繰り越し範囲やNEVクレジットの計算方法の変更などが挙げられる。

 また、6月下旬には2019年度の各社のクレジット状況が発表された。電動車を多く導入する「比亜迪(BYD)汽車有限公司」が平均燃費とNEVともに高ポイントを獲得してトップ。外資では、輸入のTesla車を扱う「特斯拉(Tesla)北京有限公司」が多くのクレジットポイントを獲得した。

 本レポートでは、2020年6月発表された「乗用車企業平均燃費と新エネルギー車のクレジット制度同時管理方法」の改定の概略を報告するとともに「2019年度乗用車企業平均燃費とNEVクレジット算定状況表」を一覧表にまとめた。


関連レポート:

新エネルギー車産業発展計画:NEV産業の深化により、自動車強国へ加速(2020年2月)
NEVクレジット/企業平均燃費クレジットの2018年度企業ランキング(2019年7月)
中国のNEV提携相関図(2019年7月)
SAE China 2018(3):NEV産業とその関連政策(2019年1月)
NEV市場の電動化、インテリジェント化とドライブトレイン(2018年12月)
中国新エネルギー車(NEV)詳細(2017年12月)

 

 

 



「乗用車企業平均燃費と新エネルギー車のクレジット同時管理方法」の改定

 2017年9月27日に公布され2019年より施行された「乗用車企業平均燃費と新エネルギー車のクレジット同時管理方法」の改定についての決定が、工業情報化部、財政部、商務部、税関総署、市場監督管理総局の5省庁の連名で2020年6月15日に発表された。
 すでに、2019年7月上旬に工業情報化部(工信部)より「乗用車企業平均燃費と新エネルギー車のクレジット同時管理方法」修正案意見募集稿(以下、修正意見募集稿)は発表されていたが、今回発表された管理法は"改定の決定"ということで確定版といえよう。今回改定が発表された「乗用車企業平均燃費と新エネルギー車のクレジット同時管理方法」は2021年1月から施行される。
 2017年に公布された「乗用車企業平均燃費と新エネルギー車のクレジット同時管理方法」からの主な変更点は、NEV以外に低燃費乗用車への優遇措置や適用範囲に醇醚(アルコール・エーテル)燃料の乗用車を含めたこと、クレジットの繰り越し範囲の拡大やNEVクレジット計算方法の変更、小規模企業への優遇、関連会社間のクレジット譲渡規定の一部変更などが挙げられる。また、2021年以降のNEVクレジット比率も発表された。

 以下に、2017年版と今回改定された管理法の主な変更点をまとめた。



乗用車企業平均燃費(CAFC)クレジット

乗用車企業平均燃費(CAFC)クレジット
2017年版 改定版
導入時期 2018年 2021年1月~
対象企業 全ての乗用車生産(または輸入)企業 全ての乗用車生産(または輸入)企業 *1
対象車両 車両総重量3,500kg以下の乗用車 同左
達成目標値 2018年 6.0L/100km  年度比率120% 2021年 年度比率123% *2
2019年 5.5L/100km  年度比率110% 2022年 年度比率120% *2
2020年 5.0L/100km  年度比率100% 2023年 年度比率115% *2
CAFCクレジット
計算式
(乗用車企業平均燃費基準値-乗用車企業平均燃費実績値)×乗用車の生産または輸入台数 同左
・各企業に要求される基準値=各企業に要求される目標値×年度比率 同左
・各企業に求められる乗用車企業平均燃費基準値及び乗用車企業平均燃費実績値は、GB 27999-2014《乗用車燃料消耗量評値方法及指標》より算出。 ・各企業に求められる乗用車企業平均燃費基準値及び乗用車企業平均燃費実績値は、GB 27999-2019《乗用車燃料消耗量評値方法及指標》より算出。
・生産台数に輸出台数は含まない。  同左
・生産(輸入)台数2,000台未満の企業は上記算出方法と異なる。 ・生産(輸入)台数2,000台未満の企業は前述の算出方法と異なる。また、CAFCクレジット達成目標値が緩和される。
1)2016年~2020年にCAFCが前年比6%以上燃費が改善された場合は、平均燃費達成目標値を60%緩和、3%以上6%未満の場合は30%緩和する。
2)2021年~2023年にCAFCが前年比4%以上燃費が改善された場合は、平均燃費達成目標値を60%緩和、2%以上4%未満の場合は30%緩和する。
3)2024年以降については工信部より別途発表。
クレジットの扱い プラス分は、翌年へ繰り越し3年まで(2018年は80%、2019年は90%)、関連企業への譲渡が可能。 同左(関連会社に関する規定の一部修正*3)
マイナス分は、関連企業からの譲渡、自社のNEVクレジットでの補填、他社のNEVクレジット購入で相殺可能。 同左(関連会社に関する規定の一部修正*3)
- 2021年及び2021年以降は、CAFCの実績値と目標値が123%を超えない場合、その年に発生したNEVプラスクレジットの繰り越しが可能。1回毎の繰り越し率は50%。

*1.2,000台未満の企業は別扱い。
*2.2021年1月1日から施行のGB-27999-2019より。2025年には4.0L/100km前後が目標値。
*3.第二十二条の第一欵の関連企業は下記のいずれかに該当。
(1)国内乗用車生産企業とその他の国内乗用車生産企業の直接または間接での持ち株比率合計が25%を超える。
(2)国内乗用車生産企業の第三者が直接または間接での持ち株比率合計が25%を超える。
(3)海外の乗用車生産企業の認可を受けた輸入乗用車供給企業と海外の乗用車生産企業と直接または間接での持ち株比率が25%を超える国内乗用車生産企業、及び直接または間接で海外乗用車生産企業の持ち株比率合計が25%を超える国内乗用車生産企業。

(出典:「乗用車企業平均燃費消耗量与新能源汽車積并行管理方法」を元に作成)



新エネルギー(NEV)クレジット及び計算方法

新エネルギー車(NEV)クレジット
2017年版 改定版
導入時期 2019年 2021年1月~
対象企業 内燃機関の乗用車の生産または輸入が3万台以上の企業 同左
対象車両 車両総重量3,500kg以下の乗用車 同左
達成目標値 内燃機関の乗用車の生産(または輸入)台数に対して、
2019年に生産台数の10%
2020年に生産台数の12%
-
-
内燃機関の乗用車の生産(または輸入)台数に対して、
2020年に生産台数の12%
2021年に生産台数の14%
2022年に生産台数の16%
2023年に生産台数の18%
低燃費乗用車への対応 -

・伝統的(従来の)エネルギー乗用車の適用範囲にアルコール・エーテル(醇醚)燃料の乗用車を含める。

・伝統的エネルギー乗用車のうち低燃費乗用車の生産台数または輸入台数についてNEVクレジットの達成目標値に優遇を与える。
1)低燃費乗用車の生産台数また輸入台数に対して、
2021年は0.5倍、2022年は0.3倍、2023年は0.2倍とする。
2)2024年以降に関しては、工信部より別途公布。

クレジットの扱い -

NEVクレジットは自由取引が可能だが、3年を超えての繰り越しはできない。
1)2019年のNEVクレジットは、1年のみ同額で繰り越しが可能。
2)2020年のNEVクレジットは、1回毎の繰り越し率は50%。
NEVのみを生産または輸入する乗用車企業が創出したNEVプラスクレジットの繰り越し率は50%。

- 2021年及び2021年以降は、CAFCの実績値と目標値が123%を超えない場合、その年に発生したNEVプラスクレジットの繰り越しが可能。1回毎の繰り越し率は50%。
マイナス分は、他社からのクレジットの購入が可能。 マイナス分は、NEVプラスクレジットを用いて0(ゼロ)にする。
2019年度未達の場合は、2020年の余剰クレジットで補填が可能。 2019年度未達の場合は、2020年の余剰クレジットで補填が可能。
2021年に発生したプラスクレジットを使用して、2020年のマイナスクレジットを補填することが可能。
- 工信部は、自動車産業の発展状況に基づき補填期間の延長及び2020年のプラスクレジットの繰り越し率を調整することができる。

(出典:「乗用車企業平均燃費消耗量与新能源汽車積并行管理方法」を元に作成)



EV

クレジット×航続距離調整係数×エネルギー密度調整係数*1×電費調整係数*2

30分で最高車速100km/hに達しなければならない。

1台当たりの
NEVクレジット計算式/付与クレジット
航続距離(R)調整係数
EVモード航続距離(R)<100km 0 R<100km 0
100km≦R<150km 1 100km≦R<150km 0.7
R≧150km 0.0056×EVモード航続距離(km)+0.4
上限は3.4
150km≦R<200km 0.8
200km≦R<300km 0.9
300km≦R 1
PHV ・GB/T32694《挿電式混合動力電動乗用車技術要件》を満たす必要がある。
1.電力保持モードテストの燃料消費量(電気エネルギーを変換した燃料消費量を除く)とGB19578《乗用車燃料消費量限値》に対応する個々の車両の燃料消費量制限値は70%未満とする。
2.消費電力モードテストの電気消費量は、従来のBEV乗用車の電気消費量目標値の135%未満とする。
1.6 左記の1及び2の指標を同時に満たすことができないモデルは標準車型クレジットの0.5倍として計算する。また、クレジットの使用範囲は自社のみ。
FCV 航続距離300km以上、燃料電池システム定格出力は駆動モーターの定格出力の30%以上且つ10kW以上とする。 0.08×燃料電池システム定格出力(kW)
上限は6
燃料電池システム定格出力:10kW以上は1倍、それ以外は0.5倍のクレジットとして計算する。また、クレジットの使用範囲は自社のみ。

注)2021年1月1日以前に承認されGB/T32694-2016《挿電式混合動力電動乗用車技術要件》を満たしているPHV乗用車は、2023年1月1日以前のモデルに対して1.6クレジットを獲得できる。具体的なクレジット倍数はPHV乗用車の要件に従って履行される。乗用車企業のNEVクレジット実績値の計算時に、会計年度に同一車種のNEV乗用車のクレジットが複数ある場合は、乗用車企業のNEV乗用車ポイントの実績値を算定する際に異なるポイントに応じて分けて計算。

*1.エネルギー密度(D)調整係数
D<90Wh/kg 0
90Wh/kg≦D<105Wh/kg 0.8
105Wh/kg≦D<125Wh/kg 0.9
125≦D 1

*2.電費調整係数=モデル電費目標値/モデル電費実績値
m:車両重量
Y:100km走行時の消費電力(kWh)目標値
m≦1,000kgの場合 Y=0.0112×m+0.4
1,000kg<m≦1,600kgの場合 Y=0.0078×m+3.8
1,600kg<mの場合 Y=0.0048×m+8.6

注)電費調整係数は1.5を超えない。

  (出典:「乗用車企業平均燃費消耗量与新能源汽車積并行管理方法」を元に作成)

 

 



2019年クレジット獲得状況:BYDが昨年に続き独走、Teslaが好調

 2020年6月下旬に政府より発表された「2019年度乗用車企業平均燃費とNEVクレジット算定状況表」によると、2019年度の国内乗用車生産企業119社が生産する乗用車の完成車平均質量は1,461kgで、平均燃費(実績値)は5.53L/100kmとなった。一方、輸入乗用車を供給する企業25社の輸入乗用車の平均質量は1,905kgで、平均燃費(実績値)は6.58L/100kmとなった。

 平均燃費クレジットの目標値に未達となった企業は86社で2018年度から11社増えた。平均燃費クレジットポイントが最も高かった企業は、陝西省西安市に工場を構える比亜迪(BYD)汽車有限公司(旧社名:西安秦川汽車)。第2位は比亜迪(BYD)汽車工業有限公司で、両社のポイントを合計すると1,608,129 ポイント。外資では、輸入車企業としてTeslaモデルを扱う特斯拉(Tesla)北京有限公司(以下、Tesla北京)で313,463ポイント。2019年に独資で上海ギガファクトリー建設に着工し、2020年初頭から中国国産のModel 3の出荷を開始した特斯拉(Tesla)上海有限公司は5,608ポイントを獲得している。

 一方、NEVクレジットで高ポイントを獲得した企業のうち上位10社のほとんどは中国企業が占める。外資で唯一トップ10入りしたのはTesla北京。2019年度の乗用車輸入台数は46,996台と多くはないが、NEVクレジット取引き可能分は年産12.5万台の安徽江淮(JAC)汽車集団股份有限公司よりも約8,000ポイント多い271,282ポイント。Tesla北京は、平均すると1台当たり約5.8ポイントのNEVクレジットを獲得していることになる。

 MarkLinesでは「2019年度乗用車企業平均燃費とNEVクレジット算定状況表」に基づき、2019年度分のみのケース(繰り越しポイントは含まず。)でクレジットのNet値をグラフ化した。

 Net値を見ると、2018年度と同様に二極化しており上位のほとんどが中国メーカーとなっている。1位と2位は昨年同様に平均燃費クレジットとNEVクレジットともにプラスを積み上げた比亜迪(BYD)汽車有限公司と比亜迪(BYD)汽車工業有限公司。吉利(Geely)グループは、浙江豪情汽車制造有限公司がトップ10入りしている。外資では、輸入車を扱う特斯拉(Tesla)北京有限公司が平均燃費クレジットもNEVクレジットも高かった。外資合弁企業では、天津一汽トヨタ汽車有限公司(以下、天津一汽トヨタ)がNEVクレジットは0ポイントとなったが、平均燃費クレジットは268,164ポイント。プラスの平均燃費クレジットポイントは関連会社へ譲渡が可能である。つまり、四川一汽トヨタ汽車有限公司の平均燃費クレジットのマイナスを天津一汽トヨタのプラス分で補填できる。

 2020年7月には農村部への振興戦略の一つとしてNEV推進活動が発表された。対象期間は2020年7月から2020年12月となっており中国メーカーの小型電動車(政府より規定される)に対して優遇措置が図られる。

 


(グラフを2回クリックすると拡大します。なお、印刷時には、クリックし拡大後に適宜調整し出力をお願いいたします。)

 

 

 

 



2018年度と2019年度のクレジット比較一覧表

  以下に「2018年度乗用車企業平均燃費とNEVクレジット算定状況表」(2019年6月28日発表)及び「2019年度乗用車企業平均燃費とNEVクレジット算定状況表」(2020年6月30日発表)のうちクレジットを中心に一覧表にまとめた。

(印刷方法:下図表画像クリック後、遷移先にて100%表示にしたうえで印刷を行うことができます。)

注)青色は中国国内乗用車メーカー、オレンジ色は乗用車輸入企業

「2018年度乗用車企業平均燃費とNEVクレジット算定状況表」(2019年6月28日発表)及び「2019年度乗用車企業平均燃費とNEVクレジット算定状況表」(2020年6月30日発表)をもとにMarkLinesが作成。


------------------
キーワード
中国、新エネルギー車、NEV、電動車、EV、PHV、HV、燃料電池車、FCV、低燃費車、VW、Daimler、BMW、Nissan、日産、トヨタ、Toyota、ホンダ、Honda、現代汽車、Hyundai、GM、Ford、吉利、Geely、上汽GM五菱、BYD、Tesla、第一汽車、東風汽車、上海汽車、北京汽車、広州汽車、長安汽車

<自動車産業ポータル マークラインズ>