【ものづくり】オートモーティブワールド2020:高強度プラスチック

第10回クルマの軽量化技術展ほか:CFRP/GFRP成形品・加工技術など、金属代替、軽量化に対応

2020/02/03

要約

東京ビッグサイト西展示場 入場口
クルマの軽量化技術展 会場風景

  第12回 オートモーティブワールド(クルマの先端技術展)は2020年1月15日~1月17日に東京ビッグサイトで開催され、主催者によると出展企業数は1,017社、来場者数は38,992名となった。

  オートモーティブワールドは6つの展示会で構成されていたが、本稿では主にクルマの軽量化技術展および自動車部品&加工EXPOで注目されたプラスチック関連の展示について、樹脂材料や加工技術を中心に紹介する。

  クルマの軽量化に対応するため、金属代替として強化材を高含量にした高強度・高剛性のプラスチック成形品に関する技術が多く見られた。加工メーカーもそれぞれ独自の成形技術を紹介し、優れた成形品を披露していた。

 

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ユニプレス:大型バッテリーケースの樹脂化

  展示品の大型バッテリーケースはGF強化PP(ガラス繊維ポリプロピレン)シートのプレス成形品。裏面にアルミ板を貼付し、電磁波シールドとしている。大型・低コスト・高剛性のシートをプレス成形した部品で、スチールを樹脂化することで軽量化を実現、高剛性、高衝撃性に優れる。

製品技術

  • 大型製品の低圧成形が可能(低投資)
  • 繊維強化材(GF)のプレス成形が可能
  • 成形後の残存繊維長の確保が可能

大型バッテリーケース 樹脂製バッテリーケース
大型バッテリーケース 展示パネル:樹脂製バッテリーケース(大型・低コスト・高剛性COVER部品)

(執筆者撮影、以下同様)



積水化成品工業:CFRPなど複合材料の発泡製品

CFRPなど複合材料の発泡製品
CFRPなど複合材料の発泡製品
上)ST-LAYER 下)エラスティル

  2種類の発泡成形品を展示。「ST-LAYER」はCFRP複合発泡成形体。発泡体にCFRPを積層した構造体で、高強度で軽量性に優れ、自由度の高い形状設計が可能。「エラスティル」はTPE(熱可塑性エラストマー)の発泡体で、ゴムのような弾力性と軽量性を兼ね備えている。グリップ性が高く、熱成形が可能。

 



日立化成:高強度樹脂ギア

  アラミド系繊維強化熱硬化性樹脂を加工した高強度樹脂ギアを展示。騒音・振動低減・軽量化が可能。エンジン内のバランスシャフトギア等に使用できる。

特徴

  • 噛み合い音・歯打ち音の低減
  • バックラッシュの許容範囲拡大
  • 組付け調整の簡素化

高強度樹脂ギア 展示パネル:高強度樹脂ギア
高強度樹脂ギア 展示パネル:高強度樹脂ギア


日本ユピカ:熱硬化性樹脂「CBZ」

  「CBZ」は炭素繊維をはじめとする様々な繊維との密着性に優れた熱硬化性樹脂。CBZを用いた炭素繊維強化樹脂(CFRP)は機械物性に優れ、液状エポキシ樹脂を用いた場合よりも薄く設計することが可能。使用材料の削減により軽量化に貢献する。

特徴・利点

  • エポキシ樹脂用にサイジングされた炭素繊維への高い密着性
  • ガラス、アラミド繊維等に対し高い密着性
  • 曲げ、圧縮、層間せん断強さに優れるCFRPの提供
  • 低吸水性
  • 耐吸湿、耐オイル、耐ガソリン性
  • 優れた含浸性

CBZ使用のCFRP成形品 CBZ
CBZ使用のCFRP成形品 展示パネル:CFRP用熱硬化性樹脂「CBZ」


住友化学:LCP系繊維強化コンパウンド

  LCP(液晶ポリマー)の繊維強化グレードとして、高剛性のLCP/CF(炭素繊維)コンパウンド、高衝撃吸収のLCP/GF(ガラス繊維)コンパウンドの2種類を紹介。前者はプラスチックの中で最高レベルの剛性を持ち、金属より軽量でマグネシウムを凌駕する剛性を持つ。後者はプレス成形品と同等の衝撃強度と剛性、金属同等の衝撃強度を持つ。

LCP系繊維強化コンパウンドの成形品 LCP系繊維強化コンパウンド
LCP系繊維強化コンパウンドの成形品 展示パネル:LCP系繊維強化コンパウンド


サンワトレーディング:PET系複合サンドイッチパネル

PET系複合サンドイッチパネル
PET系複合サンドイッチパネル

  コア材はPET(ポリエチレンテレフタレート)の発泡体であるAIREX T92、スキン材は連続繊維GF(ガラス繊維)/PP(ポリプロピレン)。熱プレス成形が可能。一体成形ができ、軽量且つ高剛性であることが利点としてあげられる。

  その他、各種C(G)GRPハイブリッド成形による高剛性・高強度の各種製品を展示していた。

 



JFEケミカル:スタンパブルシート

  スタンパブルシートは、ガラス繊維とPP(ポリプロピレン)を主原料とするシート状のプレス用成形基材。

特徴

  • 抄紙技術により高比重のガラス繊維を低比重の熱可塑性樹脂へ均一に分散
  • 複数の材料の組み合わせが可能
  • 使用現場で発泡成形するため、輸送容量が小さく、コスト圧縮が可能
  • 発泡材の添加量で膨張時の厚み調整が可能

スタンパブルシート プラスチック成形材
スタンパブルシート 展示パネル:プラスチック成形材(スタンパブルシート)


ニッキトライシステム:CNT樹脂コンポジット「Calabion」

  CNT(カーボンナノチューブ)を使用してガラス繊維+樹脂の問題点を解決する提案。ガラス粉塵の発生、リサイクル不可(ガラス入り材料は今後、使用規制が見込まれる)という問題の改善策として、CNTを使う炭素+樹脂に代替することで、導電性や耐熱性も向上する。

CNTを使う炭素+樹脂の提案 Calabion
CNTを使う炭素+樹脂の提案 展示パネル:CNT樹脂コンポジット「Calabion」


北川精機:複合材積層によるCFRTP成形品

CFRTPサイドインパクトバー試作品
CFRTPサイドインパクトバー試作品
複合材積層による成形品

  CFRTP製ドアのサイドインパクトバー試作品を展示。同社と広島県立総合技術研究所の共同研究の成果として紹介。大型で積層構成の自由度が高いCFRTP(炭素繊維強化熱可塑性プラスチック)の成形が可能で、一方向連続繊維積層板の量産技術を開発した。

 



タカギセイコー:高速スタンピング成形法によるC(G)FRP製バンパービーム

  熱可塑性樹脂の複合材料(C(G)FRP)シートを高速スタンピング成形法で加工したバンパービームを展示。

成形法の特徴

  • 射出成形と同等の成形サイクルで大量生産が可能
  • 複数の織物強化繊維材等の組み合わせで製品強度を確保
  • 全自動システム化により安定した品質での生産を実現

C(G)FRP製バンパービーム 高速スタンピング成形法
C(G)FRP製バンパービーム 展示パネル:高速スタンピング成形法


IHI:CFRTP成形システム

  独自のCFRTP(炭素繊維強化熱可塑性プラスチック)成形システムによる成形品と原料シートを紹介。

成形システムの特長

  • 成形システム全体を一括提供
  • 航空機エンジン向けCFRP部品の量産製造技術を応用
  • 肉厚偏差のある成形が可能
  • 成形サイクルの短縮

CFRTPシートと成形品 熱可塑型成形システム
CFRTPシートと成形品 展示パネル:熱可塑型成形システム


福井ファイバーテック:FRP引抜成形

  引き抜き成形によりガラス繊維のロービングやガラス繊維マットを樹脂に加えて強化した成形品を紹介。展示品はPA6(ポリアミド6)にガラス繊維を体積ベースで65~70%(重量ベース80%~)を含有している高強度・高剛性な部材。強化材はガラス繊維、炭素繊維など、マトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂どちらでも良い。

引き抜き成形 引き抜き成形による繊維強化部材
引き抜き成形による繊維強化部材 展示パネル:引き抜き成形


二幸技研:ナイロン注型

  PA6(ポリアミド6)のガラスビーズ強化品を成形したエンジンカバーを展示。シリコーン型に適したナイロン6(PA6)モノマー材料、成形装置を開発、真空注型でナイロン製品を製作する独自のナイロン注型システムを確立した。

成形法の特長

  • 金型不要
  • 金型による射出成形に比べ、低コスト、短納期
  • 高性能:耐熱性、耐衝撃性、気密性、耐薬品性、耐摩耗性に優れる

エンジンカバー ナイロン注型
エンジンカバー ナイロン注型による成形品 展示パネル:ナイロン注型


エコネコル:高充填高速溶融

  フィラーと樹脂の混合溶融加工技術を紹介。

特徴

  • 高充填高速溶融:混合比率は従来比を超え、木粉85%や炭素繊維70%含有可能
  • CO2排出量削減、未活用資源の有効利用、産業廃棄物の削減などが期待される。
  • ヒーター加熱、相溶化剤が不要な方法のため、原料の物性劣化が少なく、複数回のリサイクルにも適する。

高充填高速溶融による加工品 高充填高速溶融
高充填高速溶融による加工品 展示パネル:高充填高速溶融


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