電動車(xEVs)とリチウムイオン電池の動向(その3)

リチウムイオン電池から全固体セラミック電池へ

2017/04/14

要約

 VWは、ディーゼルスキャンダルとグローバルに厳しくなる環境規制に対し「TOGETHER-STRATEGY 2025」を策定し、30車種以上のEVを2025年迄に投入すると2016年6月に発表している。同社目標によると2025年には2~3百万台(VW総販売台数の20~25%)のEVを販売するという。電気自動車専用のMEBプラットフォームを開発し、2020年から投入する。Daimlerも2022年までに20モデル(総販売台数の25%程度)のEV、PHEVを投入すると公表。BMWも総販売台数の15~25%を2025年までに電動車に変更する。米国ではTESLAをはじめ、GM、FORDもPHEV、EVを2020年までに10~13モデル投入すると公表している。

 電動車の世界的増加の潮流の中、バッテリーサプライヤーはリチウムイオン電池の増産と性能向上に凌ぎを削っている。
電動車(xEVs)とリチウムイオン電池の動向 その1その2

 電動車の普及の為には、リチウムイオン電池の低コスト化、エネルギー密度、パワー密度、急速充電能力のさらなる向上が2025年に向けて必要だと言われている。バッテリージャパン主催の二次電池展セミナーからの第三報として今回は次世代電池として期待されている全固体セラミック電池を紹介する。

(VW MEBプラットフォーム:VW資料) (全固体電池の出力密度とエネルギー密度:Nature Energy資料)
(VW MEBプラットフォーム:VW資料) (全固体電池の出力密度とエネルギー密度:Nature Energy資料)



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EV・PHEV増加:自動運転と親和性の高いEVに大きく舵を切る自動車メーカー

 VWはディーゼルスキャンダルとグローバルに厳しくなる環境規制に対応する為、2016年6月に「TOGETHER-STRATEGY 2025」を策定し、30車種以上のEVを2025年迄に投入すると公表した。同社の目標によると2025年には2~3百万台(VW総販売台数の20~25%)のEV販売となるという。電気自動車専用のMEB(Modular Electric Platform)を開発し、2020年から投入する。

 これはVWの歴史の中で最大の方向転換をした戦略である。その電動化に関する主なポイントは以下の通り。

  • 電動化に大きく舵を切る
  • 2025年までに30車種以上の新型電気自動車の投入
  • 電池技術、車のデジタル技術、自動運転技術を強みに育てる
  • 新しいモビリティビジネスの拡大
  • 将来プロジェクトへ2ケタのBillion Euroの開発投資を行う。投資はVWグループ全体の効率化と商品ポートフォリオの見直しにより捻出する
  • 2025年までに営業利益率目標を7~8%、ROCE(使用資本利益率)は15%以上を目標とする
(VW 「TOGETHER-STRATEGY 2025」から:ポイントは2025年までの電動化)
(VW 「TOGETHER-STRATEGY 2025」から:ポイントは2025年までの電動化)

 Daimlerも2022年までに20モデル(総販売台数の25%程度)のEV、PHEVを投入すると公表している。BMWも総販売台数の15~25%を2025年までに電動車に変更する。米国でもTESLAをはじめ、GM、FORDがPHEV、EVを2020年までに10~13モデル投入すると公表。電動車の世界的増加の潮流が広がろうとしている。



電池容量増加:コスト増加と充電時間の増加をもたらす「いたちごっこ」

(Nissan ホームページより:急速充電30分)
(Nissan ホームページより:急速充電30分)

 電動車の世界的増加傾向の中、バッテリーサプライヤーはリチウムイオン電池の増産と性能向上に凌ぎを削っている。
電動車(xEVs)とリチウムイオン電池の動向 その1その2

 電池の性能を向上させることは、コストの増加と、チャージ時間の増加を招く。現状日産リーフ(30KWhのリチウムイオン電池搭載)で、急速充電を行うと、 80%充電までの時間は30分かかる。日産自動車は急速充電装置の電圧を50KW→150KWに上げると発表したが、それでも20分かかり、ガソリン車との利便性の差となっており、電気自動車が大量に普及した時の課題となっている。





電気自動車の課題

車種 排気クリーン度 低炭素特性 航続距離 チャージ時間 コスト 将来ポテンシャルと課題
従来ガソリン車

普及効果大
50%のエンジン高効率化?

ハイブリッド車 自立的普及段階
コモディティ化・低コスト化
電気自動車 電池の高性能・低コスト化
電源の低炭素化
プラグインハイブリッド車 車両全体の低コスト化
電源の低コスト化
燃料電池自動車 水素製造の低炭素化
水素供給インフラの整備
クリーンディーゼル車 一層の排気浄化
ハイブリッド化
天然ガス車 天然ガス供給インフラの整備
低コスト化・燃費向上
(◎  〇  □  △  ▲)
良い←       →悪い

(出典:将来自動車動力システム委員会)



全固体セラミック電池の研究:エネルギー密度、出力密度共にリチウムイオン電池をしのぐ

 現在主流となっているLIB(Lithium Ion Battery:リチウムイオン電池)は1981年にその研究が開始され、原型が完成し商品化するまで10年かかっている。その後1995年にWindows95が発売されIT社会の始まりと共にLIBの市場は一気に拡大した。その後、電気自動車の波が現在起こっており、中大型のLIBの市場が拡大しようとしている。しかしながら、現状ではまだ課題がいくつかあり、更なる性能向上を求めた研究開発が続けられている。

 全固体セラミック電池は、電池の電解液部を液体から固体に変更したもので、古くは1970年代から研究されてきた。2016年に入り東京工業大学物質理工学院の菅野了次教授、トヨタ自動車の加藤祐樹博士らの研究グループが新しい固体電解質を発見し、電流密度が高い、有望な固体セラミック電池の開発に成功した。(Nature Energy 2016年4月号)

 エネルギー密度、出力密度、急速充電特性が電気自動車用としては理想的な特性をもった電池とのことである。菅野教授はバッテリージャパンの講演の中で全固体セラミック電池を半導体チップに喩えられた。現在のリチウムイオン電池はいわば真空管で、液体の電解質を使っているが、全固体セラミック電池はセラミック固体を電解質として積層したものである。

(菅野教授講演資料から) (菅野教授講演資料から)
(菅野教授講演資料からMarkLines作成)
【現在のリチウムイオン電池】 【全固体セラミック電池】
(SNE research資料) (SNE research資料) (SNE research資料)
(謂わば真空管) (謂わば積層半導体チップ)
(東京工業大学資料からMarkLines作成)



 全固体セラミック電池の特徴は

  • エネルギー密度、出力密度共、現在のリチウムイオン電池より優れた特性を示す。
  • 小型化が可能。
  • 電解質が高いイオン導電率を持つため、電池の内部抵抗が低い。(急速充電などに適する)
  • 化学的に安定(電解液がない)しており、耐久性・信頼性・安全性に優れる。

など、電気自動車用の用途に優れる。

【全固体電池の出力密度とエネルギー密度】
(出典:将来自動車動力システム委員会)
(Nature Energy 2016年4月号資料から)


全固体セラミック電池の製品化はいつか?!:死の谷とダーウィンの海を乗り越えて

(菅野教授講演資料から)
(菅野教授講演資料から)

 2011年~2016年に菅野了次教授らが発見したLGPSファミリー(リチウム・ゲルマニウム・リン・イオウ族)とよばれる超イオン伝導体は、在来型リチウムイオン電池の液体系電解質以上の伝導率を固体電解質で発揮できるという。



全固体電池開発の歴史

(菅野教授講演資料及び旭化成資料よりMarkLines 作成)
注記)悪魔の川:基礎研究から応用研究までの間の難関・障壁
死の谷:応用研究から製品化までの間の難関・障壁
ダーウィンの海:ニュービジネスあるいは、製品化から、事業化までの間の難関・障壁

 全固体セラミック電池は1970年から研究され40年以上かかり有望な固体伝導体が発見されたことになる。この後、研究フェーズから製品開発フェーズに入り、製品化されることになる。今のリチウムイオン電池が1981年に研究が開始され、死の谷、ダーウィンの海を乗り越えて市場が拡大するまで14年かかっている。2030年から2040年頃には電気自動車市場は全固体セラミック電池の独壇場となっているのか期待が高まっている。

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キーワード
全固体セラミック電池、xEVs、電動車、急速充電、リチウムイオン電池、VW、Daimler、BMW、テスラ

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